

演奏や創作のスタイルが日々激しく変化している現在、音楽学は音楽に関わるすべての学生にとって、きわめて重要な役割を担うものとなっています。音楽大学が単なるレッスンの場ではなく、総合的に音楽を学ぶべき「大学」であるためには、音楽学科目の充実が求められ、このような状況をふまえて、近年、本学では音楽学カリキュラムの改革を急速に進めてきました。本学においては、音楽学の根幹をなす「音楽史」ひとつをとっても、中世から現代にいたる西洋音楽史概論に加え、歌曲、オペラ、ピアノ、管弦楽といったジャンルごとの音楽史や、特定の時代についての専門的な考察を行う西洋音楽史特講など、幅広い視点から講義を提供して学生のニーズに応えています。また、音楽学特講では、実作品を対象にした楽曲分析や音楽学の基礎を学び、さらに民族音楽学、日本音楽史、音楽美学、音声学等の講義を通して多面的な音楽研究への道を開いています。

本学では、本来の専攻と並行して、より音楽学の知識を深めたいという学生のために「音楽学課程」を設置しています。この「課程」は、少人数のゼミナール形式を採用して、大教室では不可能なきめ細かい指導を行うものであり、専攻を問わず3年次より履修が可能です。3〜4年次に各分野のゼミナール参加を通して各自の興味の的をしぼっていき、4年次にはこの課程の必修である「論文作成」で個人指導を受けることとなります。
音楽的基礎能力の充実とともに楽曲への全体的なアプローチの方法を学習する科目であり、音楽の総合的理解力、把握力を高め、音楽性の向上を図ることを目標としています。1・2年次対象のソルフェージュI・IIは、多くの専攻において必修科目として課されています。各学生の習熟度によってグレード別にクラスを編成し、無理なく学習が進められるよう意図しています。共通教材として用いられる「名曲視唱曲集I・II」および「リズム・スタディ」は、ルネサンスから現代にいたるまでの名曲を編曲、編集した教材ですが、単に視唱やリズム練習の教材としてではなく、多様な楽曲への興味や関心を促し、それぞれの時代の記譜法、音楽様式、作曲家の音楽的特徴等を総合的に学びます。また、他専攻の楽曲の読譜やスコアリーディングの基礎能力を養うため、1年次はアルト、テノール、2年次ではそれに加えてソプラノ譜表の読譜の習得につとめます。そのほかに、1、2年次とも、聴音(2声、4声体和声〈和声分析を含む〉、各楽器専攻生の演奏による楽器聴音)、視奏等を行います。2年次上級クラスにおいてはさらに高度で総合的読譜能力の習得を目的とした「アンサンブルと初見」「現代音楽」「ピアノ・コードワークとスコア・リーディング」「アナリーゼ」「総合」等のクラスが開講されます。
ソルフェージュIII、IV(3、4年次対象、半期選択)では、基礎力充実を図るクラスからより高度な読譜力の習得を目指すコースまで、希望する学生の多様な要望に沿ったクラスが開講されています。
また大学院ソルフェージュ研究領域への進学希望者に対応するクラスも開講されています。
本学では全専攻に外国語として英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ロシア語、ラテン語の講座を設けています。希望者は、必修単位のほかに、自由選択として単位が取得できます。
国際化が急速に進むなか、西洋音楽を志す者は、外国語を必ず習得しておくべきでしょう。本学は海外の著名な音楽大学と提携した留学制度があり、海外での演奏会・研修も実施しています。また外国からの優れた音楽家による公開レッスン、講演、演奏会なども行われており、実際に外国語を使う機会が多くなります。ヨーロッパ音楽を幅広く文学、歴史的側面から把握するための外国語教育の試みも行われています。この観点から、本学では外国語教育に特に力を入れ、外国人教員を含めた優秀な教授陣のもとで、理想的な少人数クラスを編成し、実際に役立つ「読む、書く、聞く、話す」力を身につけさせ、将来の留学や国際化に対応できるよう全教員が一致協力して教育に当たっています。
本学では、専攻分野における技能と知識探求と同時に、社会に出ていくための実践的なキャリア教育の機会も提供しています。実際に社会で音楽に関わる仕事をする際に必要な文書作成・交渉・問題解決能力、そしてコンピュータースキルを身につけるための場、それが「アクト・プロジェクト」です。
このプロジェクトでは在学中に音楽に関わる社会・実務体験を積み、卒業後の進路と適性について自ら模索し、自分の力で実社会にアプローチする力のある人材の養成を目的としています。毎年、全専攻の学部学生から希望者を募り、書類・面接を経て、参加学生は数名のチームでコンサート企画・制作、ホームページを通しての情報発信等の活動に取り組みます。さまざまな専攻の教員と職員による複層的な指導体制の下に、社会人との関わりや共同作業の経験を通して、教室の授業では実現できない柔軟かつ総合的なキャリア教育を実践しています。アクト・プロジェクトへの参加は選択科目「音楽キャリア実習T・U」の単位として認定されます。
アクト・プロジェクトが演奏を支える側の業務を中心としているのに加えて、新しい取り組み「3大学連携 : 音楽教育イノベーション」(平成21年度戦略的大学連携支援プログラム選定)が始まりました。これは、音楽の力を社会に伝えるスキルを磨き、より柔軟な思考とコミュニケーション能力で演奏者・教育者・音楽業界人・社会人として仕事の幅を広げていくことを目指すプロジェクトです。選択科目「ミュージック・コミュニケーション講座T・U」として単位取得が可能で、講師として、音楽の「伝える力」を強めていくために国内・海外で先進的な活動を行っている多様な人材が指導にあたります。講座はインターネットビデオで3大学(神戸女学院大学・昭和音楽大学・東京音楽大学)に同時中継され、音楽の多様性と方向性について、音楽の壁を越えて共に論じ学び合う場を実現します。
社会全体の多様化・国際化が急速に進む現在、音楽を学ぶ学生もそれに対応して今までよりさらに広い視野を備えた人間形成を目指さなければなりません。本学では、専門教育と並行して、21世紀の社会活動の基礎として重要な教養教育に力を入れています。
一般教育の目的の一つは、学問の専門化によって起こり得る知識および視野の狭搾化を防ぎ、社会人として必要な広い教養、柔軟な思索を身につけさせることにあります。加えて、人間の創造的・知的領域の一つである音楽の世界を、他の様々な視点から、様々な手法によって見つめ直し、その意義について考察することで、専門的知識・技術を一層高めさせるのもその目的の一つです。このような認識に立ち、本学では自然・社会・人文の各領域において多様な科目を設置し、特に、音楽への理解に資すると思われる諸芸術分野、将来の社会において益々必要と思われる論理的思考力へのアプローチの機会を、学生諸君のために用意しています。

音楽療法は、音楽の新しい応用分野で、音楽を医療や障害児教育の中で病気の治療や障害の克服のために、効果的に利用することを目的とした、実践と応用の科学です。音楽の恩恵を医療や福祉のために役立てられないかを社会福祉的視点に立って考えていきます。 本講では、音楽療法の歴史、理論と実践について、総論・各論的に解説。また日本において音楽療法は、精神病院、老人ホーム、養護施設などで実践されてはいるが、十分な職業的基礎が確立されていない現状にもふれ、現場で音楽療法がどんな形で行われているかを解説します。
最近は、シンセサイザーをはじめとして電子楽器の普及にもめざましいものがあります。そして、それらには必ずといってよいほど電気音響工学の技術が使われています。 本講では、この電気音響工学と音楽との関連や、テレビ、ラジオ、CD、DVD、映画、劇場など新しい音楽活動のメディアの仕組みなどを解説。また、今後音楽家としてどのようにこれらに対応すべきかについても考察します。 また、音楽ホール、スタジオ、講堂等我々がしばしば接する室内空間で、その使用目的にかなった音響学的工夫に関する研究を解説。室内の音響特性がどのようなものであり、どうあるべきかを把握することを目的とします。
音響学は、応用物理の一部に位置づけられている学問ですが、本講では人間と音との関連に重点をおき、日常生活における身近な音響現象をとり上げて音波の持つ興味深い側面をとらえ、簡単な実験、録音などをまじえながら音について学ぶことにします。内容は次のとおり。