活動報告

2021年度

3月19日(土)「日本とアジアの伝統音楽・芸能の地域における展開に向けた事例調査報告および、3か年の活動報告会」をオンラインにて開催いたしました。

日時 2022年3月19日(土) 10:00~12:00 Zoom
報告者 福田裕美 加藤富美子 小日向英俊(以上本学教員)
ゲストコメンテーター

坂田雄平様
宮古市民文化会館館長補佐・プロデューサー、三陸国際芸術祭プログラムディレクター

大井優子様
公益社団法人日本芸能実演家団体協議会 実演芸術振興部
第一部 1. 挨拶・報告者とコメンテーターの紹介
2. 3年間の振り返り
3. 公立文化施設案メーと報告
4. コメント・ディスカッションなど
第二部 5. ハンドブック制作報告
6. ポータルサイト制作報告
7. コメント・ディスカッションなど

Ⅰ 日本とアジアの伝統音楽・芸能の地域における展開に向けた事例調査と発信・共有

今年度はまだまだコロナの影響もあり、現地での事例調査など難しい面もありましたが、その中で全国の文化施設(※)へアンケートを実施しました。
(※全国公立文化施設協会会員の施設にご協力いただきました。ありがとうございました。)

事業の内容(公演/ワークショップ/講座/展示)、事業タイプ(買取/制作)、コロナ対策、企画・実施・運営についての課題点、改善点などを調査しました。

調査の詳細は、「全国公立文化施設自主事業データベース」としてポータルサイト【TCM-JAM】に掲載しています。また、分析等もあわせ、3月にオンライン公開報告会を開催します。

【TCM-JAM】>>「きほん」
「全国公立文化施設自主事業データベース」

11月2日 (火)~5日(金)に、高知県立美術館へ視察に行ってまいりました。

高知県立美術館は、美術品展示だけでなく、立派なホールと能舞台も併設されており、国内外の様々なアーティストさんたちの公演やワークショップを長期に渡って企画開催してきた歴史があります。
日本の古典芸能や高知県の民俗芸能はもちろん、アジアと日本の融合、トランスフィールドな先駆的な企画も数多くあり、スタッフの方々から企画事業をどのように運営してきたか、などのお話しを伺ってきました。

調査中に開催された《声明の会・千年の聲 聲明コンサート「祈りの聲」》では、公演当日のみならずリハーサル の現場や公演に向けた舞台作りのプロセスも観察させていただきました。

声明公演そのものが四国遍路の地である高知という土地と非常に親和性があるからか、公演に来場されたお客さんは熱心な方が多くとても感動されており、その”親和性”こそが「地域に根ざす文化」という側面を考えるうえで大切な要素となるのではないか、などと、改めて「地域に根ざす文化」とはなにかを考えるきっかけにもなりました。

6月22日(火)~24日(木)茨城県笠間市に、民俗芸能やその活動についての調査に行ってきました。

笠間稲荷囃子、石岡囃子い組の練習をみせていただきました。そしてお囃子の成り立ちや普段の活動のほか、運営や保存会について、後継者の育成、情報発信、自治体との結びつきなど、様々な観点からインタビューを行いました。

また、かさま歴史交流館井筒屋、地域交流センターともべ「Tomoa」などの文化施設にもご協力いただき、各施設の公演の特徴、教育普及、ワークショップなど地域の人たちとの関わりについて伺ってきました。

コロナ禍で活動が制限されるなかでも息づく民俗芸能の力強さを間近で見せていただき、伝承者の皆さんへのインタビューからは、後継者の育成などの課題を抱えつつもしっかりと芸能の「幹」を守っていきたいという信念が伝わってきました。

また、そうした地元の芸能を教育という面で後押しできるような事業の展開が地域文化施設でもなされており、地域の中で芸能が定着している様子を垣間見ることができました。

Ⅱ 東京音大日本とアジアの伝統音楽・芸能のためのアートマネジメントプラットフォームの制作

伝統音楽・芸能に関する基礎的な情報、公演やアートマネジメントに係る情報の「蓄積」と「発信」、多様な閲覧者同士の「交流」を軸とした総合サイト【TCM-JAM】を制作しました。

【TCM-JAM】ティーシーエムジャムと読みます。東京音楽大学(Tokyo College of Music)、日本(Japan)、アジア(Asia)、伝統音楽・芸能(Traditional Music & performing arts)、アートマネジメント(Arts Management)を表す愛称です。

日本とアジアの伝統音楽・芸能を「みせる」、「おしえる」、「あつめる」、「しる」、「いかす」ためのさまざまな情報を共有するための場所(ポータルサイト)です。
伝統音楽・芸能の演者とその関係者、アートマネジメント関係者、研究者、教員、愛好家などが情報をここに集めることで、これらの音楽・芸能への興味をひろげていくことを目的としています。

「きほん」セクションでは、2020年度の基礎講座を再公開しています(※)。
「伝統×現代」を軸にした各種講義により、日本とアジアの音楽・芸能について伝統の枠を超えた現代的な「公演」形態、多様な運営体制、現代的な創作・演奏例について学べます。
(※著作権等により非公開の講座もあります。ご了承ください)

また、「全国公立文化施設自主事業データベース」として、今年度実施した地域の事例調査の詳細を公開しています。

 

Ⅲ「日本とアジアの伝統音楽・芸能のためのアートマネジメントハンドブック」の制作

「ハンドブック編集委員会」を立ち上げました。1年目の「伝統×伝統」、2年目の「伝統×現代」における基礎講座・実践セミナー・企画制作研修のプログラム内容に新たな項目を追加し、「日本とアジアの伝統音楽・芸能のためのアートマネジメントハンドブック」を制作しました。

目次

  • はじめに福田裕美(東京音楽大学)
  • 冒頭インタビュー伝統音楽・芸能のアートマネジメント ーこれまでとこれからお話:徳丸吉彦(お茶の水女子大学)文責:加藤富美子(東京音楽大学)
  • アートマネジメントにおける日本とアジアの伝統音楽・芸能

第1部 伝統音楽・芸能のマネジメントの概要

1政策・法律・制度

  • 文化財政策における伝統音楽・芸能の位置づけ宮田繁幸(東京福祉大学,元・文化庁)
  • 伝統音楽・芸能のマネジメントにおける現状と課題高島知佐子(静岡文化芸術大学)
  • 「舞台公演」と著作権法についてー実演家の権利を中心に君塚陽介((公社)日本芸能実演家団体協議会)

2伝統音楽・芸能の推進と支援

  • 近年の文化政策の動向―文化芸術基本法の成立,文化庁移転・組織再編,文化財保護法改正永井義美(東京音楽大学)
  • 芸術はだれのもの?ー主体性と資金と支援をめぐって金城厚(東京音楽大学)
  • 全日本郷土芸能協会の取り組み小岩秀太郎((公社)全日本郷土芸能協会, 縦糸横糸合同会社)
  • 地域における助成金活用の取り組みー乙女文楽の実践塚田千恵美((公財)現代人形劇センター)

第2部 多様な発信と場の広がり

1劇場・音楽堂からの発信

  • 対談「渋谷能」の制作 ー「渋谷能」の講座よりお話:宇田真理子(セルリアンタワー能楽堂)友枝雄人(シテ方喜多流)・成田達志(小鼓方幸流)
    文責:加藤富美子(東京音楽大学)
  • 伝統を踏まえた邦楽公演の新しい見せ方町田龍一(元・(公財)日本製鉄文化財団 (紀尾井ホール))

2地域に根ざした活動

  • 公立ホールにおける邦楽公演の実例本田恵介((公財)熊本県立劇場)
  • 地域に根ざす劇場の伝統芸能支援—継承と創造木原義博・福間一・山﨑祐子(島根県芸術文化センター「グラントワ」 いわみ芸術劇場)

3あらたな創造

  • 現代音楽と能青木涼子(能声楽家)
  • ジャワガムラン ー創作公演の基本知識と事例紹介樋口文子(なみ)(東京音楽大学)
  • 未来につなげる伝統芸能の創造ー淨るりシアターの試みと「アジア芸能の未来」を通して福田裕美(東京音楽大学)執筆協力:松田正弘(淨るりシアター)

4アウトリーチ・ワークショップの実践

  • 伝統音楽・芸能のアウトリーチ・ワークショップをとらえるために伊志嶺絵里子(東京藝術大学、他)・赤木舞(昭和音楽大学,他)
  • 伝統音楽・芸能のアウトリーチ・ワークショップ実践のための論点整理福田裕美(東京音楽大学)
  • 学校における伝統音楽とアウトリーチ・ワークショップ加藤富美子(東京音楽大学)
  • グランシップ伝統芸能普及プログラム北岡慶子(静岡県コンベンションアーツセンター グランシップ (公財)静岡県文化財団)
  • 地域に向けた民俗舞踊講座宮城整(民俗舞踊家)
  • 楽器を使用したワークショップ直川礼緒(日本口琴協会)
  • モノを通してコトを学ぶー博物館の総合型ワークショップ嶋和彦(元・浜松市楽器博物館)

5映像・動画による発信

  • 国立民族学博物館における芸能の映像記録作成と活用福岡正太(国立民族学博物館)
  • オンラインを生かして伝統音楽を現代につなげる―「箏をめぐる現代~オンラインで魅せる楽器」を通して加藤富美子(東京音楽大学)・伊志嶺絵里子(東京藝術大学、他)

6海外における伝統芸能

  • 女流義太夫の海外公演実施の経験から太田暁子(東京音楽大学)
  • 海外における日本音楽ーブラジルに見られる尺八の国際化について渕上ラファエル広志(東京音楽大学)
  • 伝統音楽・芸能の場の広がりーインドネシアを例に木村佳代(東京音楽大学)

第3部 コーディネーターの役割、ネットワークの構築

  • 民俗芸能のコーディネーターの役割小岩秀太郎((公社)全日本郷土芸能協会, 縦糸横糸合同会社)
  • 国内・海外の地域伝統芸能の招聘公演を支えて 61年目の指針中坪功雄(伝統芸能(株)ナカツボ・アーツ)
  • 創造的な復興と地域フェスティバルの設計図—現代の視点で芸能の魅力を引き出すために坂田雄平(宮古市民文化会館)
  • 対談:アジアの伝統音楽・芸能公演の現在と未来 ー私と公の間からお話:久保田広美((株)マノハラ)・長谷川時夫(NPO法人日印交流を盛り上げる会)
    文責:小日向英俊(東京音楽大学)
  • 日本とアジアの芸能ネットワークづくりーオンライン芸能村小日向英俊(東京音楽大学)執筆協力:神野知恵
  • おわりに福田裕美(東京音楽大学)
  • 事業の記録

2020年度

【TCM-JAM】にて基礎講座を再掲載

※著作権等により非公開の講座もあります。ご了承ください

「実践セミナー」と「企画制作研修」によるプロジェクト

「文化庁 大学における文化芸術推進事業」成果報告

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