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2021.10.28

東京音楽大学博士課程について

ながらく音楽の世界では、多くの場合、作曲家、演奏家、音楽学者、音楽 評論 家、音楽プロデューサー etc.はそれぞれの専門のなかで活動していたと言えるでしょう。作曲家兼演奏家、音楽学者兼評論家は少なくありませんでしたが、それでも作曲家や演奏家は音楽を発信 することを第一義として、音楽について語ることは個人的な見解として語ることが大半である一方音楽学者や音楽評論家が音楽を発信することは稀でした。
 
しかし、現在、多くの分野で、領域の融合や溶解が生じています。音楽においても、おもにヨーロッパの音楽系の博士課程で「Study based on practice 実践にもとづく研究)」がひとつの潮流となっているように、音楽 を行うことを出発点として研究や調査を行う、逆に、研究や調査にもとづいて新しい音楽のあり方を試みることが行われるようになりました。
 
東京音楽大学ではこのような状況をふまえ、「 専門が優秀であるだけでなく、それを現代 の流動的な社会で活用できる人材」を育てることを目的として、2014 年に博士課程をスタートさせました。
 
幸いなことに、東京音楽大学は教員数がきわめて多く、演奏、研究、実践の各分野にレベルの高い教員を多く擁しています。この環境を最大限に活かして、東京音大の博士課程のカリキュラムは「専門の力をさらに高める」こと、そして「 専門を越えた総合的な知見、さらには社会的・実践的な能力を獲得する」ように組まれています。特に「共同研究」という科目では、さまざまな専門の学生と教員が協働して、コンサート開催や論文集作成などのプロジェクトに取り組み、本学の大きな特色となっていま
す。
 
こうした学びとをとおして、実践と研究の力をともに身につけ、「他分野の人とも協働することができ、自分が行っていることを社会に向けて発信し、自分の活動の場を創っていく人材」を養成することを、東京音大の博士課程は目的としています。例えば、演奏家や作曲家として音楽祭に招待されるだけでなく、他分野の使途と一緒に音楽祭を創っていけるような力、国や分野を超えるネットワークを活用して創造的な研究活動や教育活動を切り拓いていけるような力。そうした力がこれからの世界を生き抜いていく人たちには必要であり、また、音楽の世界そのものをより豊かにする原動力ともなるのです。
 
博士後期課程担当教授 岡田敦子