2021.03.29
本学では、全専攻の学生を対象に邦楽器(三味線・箏・尺八・琵琶)を初歩から学べる機会を広く提供しています。
長唄三味線・生田流箏・琴古流尺八・薩摩琵琶のいずれかの一楽器を選択できます。伝統古典音楽について理解を深めることにより、西洋音楽の枠に囚われない幅広い視野を獲得します。
また、将来教育現場で必要な邦楽の知識と技術を身に付けることが可能です。
毎年度末に邦楽演奏会が開催されます。邦楽実技を学び、学部と大学院を卒業・修了する学生たちが日頃の成果を披露します。
学生の希望に応じて、日本の伝統楽器である邦楽器(箏、三味線、尺八、琵琶)を個人レッスンで学ぶことができます。
「邦楽演奏会」(2020/2/28)に出演した学生に、受講した感想を聞きました。教員を目指す人もいれば、作曲の研究のため、伝統文化への興味など受講理由はさまざま。西洋音楽と異なる演奏技術と感性が必要となる邦楽の履修をとおして、各々の音楽観にどんな変化がもたらされたのでしょうか。
※学年はすべて取材当時のもの。
琵琶『敦盛』を唄・演奏した赤澤凜太朗さん
(作曲「芸術音楽コース」4年)
コントラバスを10年間、付属高校ではクラシックギターを専攻していて弦楽器の演奏には慣れていますが、琵琶はまったく違う弾き方が要求されます。押さえる指の角度ひとつで音程が変わってしまうほど大変デリケートで難しい。僕は作曲「芸術音楽コース」に所属しているので、知らない楽器を知るということ自体が研究になります。
楽譜に先生からの指示をたくさん書き込んで練習していますし、YouTubeでも琵琶の演奏を聴きます。西洋音楽と比較して、奏者のセンスというか個性が強く現れるような気がします。
筝『黒髪』を唄・演奏した鈴木吏音さん
(大学院・声楽専攻独唱研究領域2年)
学部時代の『アジア音楽の理論と奏法』の授業で筝に興味をもち、大学院で2年間、個人レッスンを続けてきました。楽譜が漢数字で書かれていたり、唄う時の発声の仕方も西洋の歌と全然違うので、難しかったです。
付属高校時代から大学院までの9年間、クラシック音楽に打ち込んできました。もともとブラックミュージックやジャズなどにもすごく興味があるので、卒業後はアメリカに渡って、本場でクラシック音楽以外の音楽を勉強したいと思っています。アメリカに行ったら、日本の伝統音楽のことを聞かれることもあるかなと思って、そんな時に日本の音楽をすこしでも説明できるようにしたいというのも受講理由のひとつでした。
三味線『越後獅子』を唄・演奏した田川寿美礼さん
(作曲「ソングライティングコース」4年)
弾けるようになるにつれて、好きではなかった練習もだんだん楽しくなってきました。着物や和楽器など日本文化をもっと知りたいという理由で、入学当初から三味線に興味をもっていました。2年生から3年間履修して、専科のソングライティングに生かせる部分がたくさんあると感じています。今度、和楽器テイストのポップスも作曲してみようかな。これからも練習を続けていきたいです。
邦楽器による音楽指導が義務づけられているなか、教員を目指す学生にとって邦楽の学びは必要不可欠です。レッスンを受講した学生の声をご紹介します。
※学年はすべて取材当時のもの。
野口亜華音さん
(大学院音楽教育(音楽学)1年)
◇他大学教育学部卒業後、長野県の中学校で6年間音楽教員として教鞭を執る。
中学では授業のなかで邦楽を教える機会がありましたが、弾くことはできても自分の中で不足している部分を感じていました。2年の休職をいただいて、大学院で音楽をさらに学ぶ決心をしました。音楽学を専攻しながら、実習で邦楽と器楽の授業も受講できるという点が本学への入学の決め手です。レッスンでは箏だけでなく、邦楽の考え方や最後の余韻のイメージまでを感じ取るという学びがあり、音楽を勉強する上でとても意味のあるものだと思います。復職後は、この考え方を生徒に教えられるよう、しっかり学んでいきたいと思います。
中濱佑唯さん
(ピアノ4年)
◇東京音楽大学附属高等学校卒業。教職課程履修中。東京都教員採用試験に合格。
私は高校の時から教員を目指し、大学で同じく教職課程を履修していた先輩から、教育現場で邦楽は絶対に必要と聞いて、この授業を受講するようになりました。実際の教育現場でも、ボランティアで行った中学校で、箏が弾ける先生の授業を見学し、邦楽器の重要性を実感しました。レッスンでは邦楽器ならではの音の繊細さや奥深さなど、自分が専攻するピアノとの違いを実感しています。自分が教壇に立った時に、その価値観を持っていることで深みのある授業ができると思っています。