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【2021年度新入生へ】野島学長式辞を掲載しました

新入生の皆さん、本日は入学おめでとうございます。
心よりお祝い申し上げます。
 
今日から、皆さんは、新たに人生における大事な一歩を踏み出します。
音楽という、このとてつもなく深く、美しく、そして広大な海のような世界に、皆さんはこれから船出をします。
順調な航海ばかりではないかもしれません。
時には悪天候に出会って、心がくじけそうになるかもしれません。
しかし、これから起こるたくさんの経験に対し、ひたむきに努力して、誠実に追及を続ければ、その過程で多くのことを獲得する実感が得られるはずです。
 
これから本学で学んでいくうえで、皆さんに考え、記憶に留めていただきたいことがあります。
よく聞いたことがあると思いますが、「心技体」という言葉。
 心(シン)というのは心、皆さんのハート、内面です。
 技(ギ)というのは文字どおり技術のことです。
 体(タイ)というのは皆さん身体のことです。
私は、この心技体という言葉は、音楽にも非常によく当てはまる言葉だと思っています。この心技体のどれかが欠けても、十分な音楽表現にはいたらないということが言えるのではないでしょうか。
皆さんは、今、知性、感性、身体能力、そしてこれらを通した吸収力、学習能力を自身の基礎体力として身につけることができる、そのピークを迎えています。
音楽表現に欠かせないこれらの要素を一体化し、音にし、体得する、まさに最良の時期です。
重ねて言えば、このような時期というのは、今をおいて二度とはやってきません。人間の精神力や知力、あるいは洞察力、こういったものは本人が努力を重ねて、また人生のさまざまな経験を踏まえた上で、ほとんど際限なく進展していくものと思われます。しかし、音楽においては、今それを身体で覚え、染み込ませる、ということをしておかないと、葉っぱは伸びる、枝も伸びるが花は咲かない、実を結ばない、こういうことになりかねません。
ですから、皆さんがこれから毎日、粘り強く、エネルギッシュに、そして貪欲に自分の心と身体全体に音楽を染み込ませ、その感動をひとりでも多くの人に伝えることができるよう技術を錬磨すること、そのことを忘れずにがんばっていただくことを希望します。
繰り返しますが、自分の心、自分の身体に響く音、これによく耳を澄ませ、階段を上がるように一歩一歩ゆっくりと、しかし、たゆむことなく努力を続けていただくことを、心からお願いいたします。
 
最後になりますが、皆さんのこれからの毎日が、生き生きとして、多くの新しい発見やさまざまな感動に包まれていくことを心より祈念し、新入生の皆様への式辞とします。
 
本日は入学、おめでとうございます。
 

令和3年4月1日 東京音楽大学 学長 野島 稔