あなたがピアノを学ぶ理由はなんですか?演奏家として世界で活躍したい。指導者として教えたい。ピアノのすばらしさを多くの人と分かち合いたい。東京音楽大学のピアノは、そんな一人ひとりの個性に合わせて学ぶことができます。演奏はもちろん、創作コースでは作曲の基礎に触れることも可能。ピアノを通して自分を表現する、そんな4年間が待っています。
すべてのコースにおいて基礎能力の向上と、自身の特性と得意領域を発見できるプログラム。共通するポリシーは「作品の意思を聴く人に伝えるため、演奏を学生各自の極限まで磨くこと」「人間の湧き上がる感情と意思が作品にどう投影されているかを冷静に判断する知見をもつこと」です。この演奏芸術の要となる2つを軸に、フィジカルな演奏鍛錬のみならず、作品の分析力や創作力の向上と、「学生各自がもつ作者への親和性」を最大限に引き出しながら学修します。
2024年度 主なカリキュラム表
核となる実技レッスンでは、演奏経験豊富な教員からきめ細かな実践的演奏技術を学ぶことに加え、学生の個性と進度によって細かく変化する学習法、レパートリーの選択と展開の仕方なども教員とマンツーマンで考えていきます。また学術的、国際的な知見からのアドヴァイスも学生一人ひとりに合わせて細かく行われます。
近年は、海外招聘教授によるレッスンや海外短期留学の機会もコースの垣根を超えて増えており、国内外のコンクールや演奏会などにおける学生の活躍が注目されています。
実技科目と並行して行われるピアノ科開設の授業も充実した内容となっています。音楽家や指導者として自立して活動する力、社会との関わりを構築する力を育成していきます。2年生以上のすべてのピアノの学生が選択できる授業として、「ピアノ作品解釈とキャリア研究」があります。
ピアノの学生にとって大きな軸となるこの授業は、本学の教員に加えて、国内外の演奏家、学者、指導者、作曲家、調律師、コンサートホールのプロデューサー、音楽療法士、演奏に関わる整形外科医、精神神経科医等、ときには他分野の専門家を招き、リサイタル、公開マスタークラスは勿論のこと、ユニークな講義やワークショップによって多角的な学びを実現しています。この授業は専門分野をより深く学ぶのと同時に、卒業後のキャリア作りのヒントにもなる毎年ユニークなラインナップで皆さんを待っています。
また、1年生以上のすべてのピアノの学生が選択できる授業「身体表現と音楽」では、身体や脳科学の観点から実技上達へのアプローチを学びます。
音楽大学というさまざまな学生が交わり切磋琢磨できる環境のなかで、ピアノは弦楽器や管楽器、声楽などほぼすべての音楽に含まれる楽器であり、授業においても学内外のコンサートにおいても、アンサンブルを学ぶ機会があります。アンサンブルを通してさまざまな楽器や歌について学び、コラボレーションの悦びと難しさを体感することは、ピアノ演奏の音色やテクニックの可能性を拡大させるだけでなく、音楽上の「協調性」「交渉力」「リーダーシップ」を育む機会ともなります。卒業後もアンサンブルの需要は多く、活動の場をより広げていくことができるでしょう。
器楽専攻ピアノの学習理念を基礎として、さらにレパートリーを広げ、異なる作曲家、作品による演奏時間の長いプログラムを構築し、それぞれの楽曲を弾き分ける様式感と演奏技術、持久力の修得を目指します。さらに、読譜力の速さと緻密さを養い、長時間の演奏プログラム、作品の様式感を徹底的に学修します。
また、「ピアノ」と共通の授業に加えて、全員が参加する3年時の学内コンサートなど、演奏の機会も豊富。演奏家として活躍するための表現力や演奏技術を磨き、実践の場を通してさまざまな作曲家・作品を組み合わせた、長時間の演奏プログラムを弾き分ける力を身につけていきます。
定期実技試験の成績優秀者は、学外で開催される「東京音楽大学ピアノ演奏会 ~ピアノ演奏家コース成績優秀者による~」に出演します。
ピアノという楽器自体の歴史的変化を再認識して、ピアノの歴史と各時代で作られた楽曲の様式を学び、異なる時代と異なる需要で創られた楽曲の様式感をつかんでいきます。基礎からステージでの演奏、コンクールでの演奏、さらには実際の演奏活動までを個人レッスンを中心に体得します。また、現代の楽器で異なる様式の楽曲を弾き分ける解釈力と演奏技術の修得を目指します。
本コースの学生のみが受講できる「ピアノ・プラクティカル・トレーニング」や個人レッスンなどで、将来ピアノ指導者を目指すための知識や技術を豊富に得ることができるのも特長です。全学年対象のオーディションによる学内演奏会、3年次の定期実技試験の成績優秀者による「春のコンサート」があります。
ピアノ演奏とともに作曲٠編曲の両方を幅広く学べるコースです。ピアノの個人レッスンに加え、楽曲創作の学修により読譜力を向上させ、自作発表までを経験できます。作曲は和声法、対位法、管弦楽法を基礎から学び、ピアノソロ曲からオーケストラ曲まで幅広いジャンルや編成の作曲に対応が可能です。専攻必修科目の「創作実技」、「作曲理論基礎」は、作曲「芸術音楽コース」の教授陣による個人レッスンを主体とし、習熟度に合わせた指導が受けられます。
作曲と演奏のどちらに重点を置くかは個人の自由。創作を学ぶことで得たさまざまな知識や能力は、一層豊かな演奏表現を可能にすることでしょう。
17世紀から18世紀中頃に隆盛を極めたバロック音楽を担う楽器です。響きが純粋で、特に和音が美しいことで知られます。その後、ピアノの台頭によって一時期、影を潜めますが、19世紀末頃から徐々に復活を遂げ、20世紀後半以降は古楽器を代表する楽器として定着。現代では作曲家や作品、さらにはその時代背景までも含めてよく理解した上で、作品の特徴や内容、作曲者の意図などを忠実に表現する、つまりは演奏習慣を踏まえた演奏が重要であるという新しい考え方が音楽界全体に浸透しつつあります。その結果、特にオペラの世界ではチェンバロが活躍する機会が増えています。
チェンバロの音楽はほとんどが古楽です。美しく演奏するために、本学では楽器の奏法を学びながら、正統的な演奏法を身につけ、ソロのみならず合奏でも活躍できる演奏家を育成する科目とレッスンが用意されています。ルネッサンスやバロックの音楽の原理的な問題や歴史的な知識、時代ごとの演奏様式などを、「古楽概論」や「古楽合奏」などの必修科目で身につけていきます。また通奏低音に関しては、個人レッスンやクラス授業でしっかりと学んでいきます。
卒業後は、オーケストラよりは室内楽での3〜4人のアンサンブルでの小規模なコンサートでの演奏機会が多く、卒業生の多くはフリーランスのチェンバロ奏者として活躍しています。大学から本格的に学ぶ学生がほとんどなので、今後の努力しだいでプロになれるチャンスが大きく広がる楽器です。
もともとは闘技場や結婚の式典などで演奏され、9世紀頃に修道僧たちの音楽教育のために使われ始めた楽器です。10世紀頃からは教会での礼拝で奏でられるようになりました。楽器の規模は一段鍵盤だけの小さなものから、二段、三段、四段と増えていき、17世紀には今と同様の大型のオルガンができたと言われています。
基本はソロ演奏で、オーケストラで演奏することは稀です。教会やコンサートホールなど設置されている空間はさまざまで、一台一台の規模も違います。その都度求められることが異なるにも関わらず、メロディを弾き、伴奏し、足で低音をつけるなど、与えられている役割も多く、ひとりでオーケストラをやっているかのように演奏できることが“楽器の王様”とも称されるオルガンの醍醐味になります。
本学では、楽器の奏法を学びながら、正統的な演奏法を身につけ、ソロのみならず合奏でも活躍できる演奏家を育成する科目とレッスンが用意されています。例えば、バッハの作品を教材にオルガン奏法の基礎を修得しながら、ロマン派、近現代作品まで順次レパートリーを広げていきます。さらに楽譜の歴史、構造の知識、通奏低音などを学びます。
オルガンは一台一台異なるため、将来、演奏家として現場のオルガンと対峙した時に、作品の時代やスタイルを踏まえながら、そのオルガンでどんな演奏ができるのかを判断できるようになれることが目標です。
卒業後はコンサートホールの専属オルガニストやミッション系大学の教会のオルガニスト、オルガン教室の講師などを目指します。日本では海外に比べてコンサートホールに設置されている場合が多く、近年はプロジェクションマッピングによる演出や、ゲーム音楽の演奏、能楽との共演など、日本ならではのオルガンの楽しみ方が数多く生まれています。