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【2020年度卒業生へ】野島学長式辞を掲載しました

卒業生の皆さん、本日は卒業おめでとうございます。
心よりお祝い申し上げます。
  
この一年あまり、皆さんの大学生活は、全世界を襲った新型コロナウイルスによる危機的状況、依然として続いている異常な状態、皆さんの学びに及ぼすマイナス面を少しでも軽減しようと、このような状況の中で私たち教員、そして職員すべては、全力で取り組んでまいりました。
  
そのような中でも、皆さんにとっては、孤独感、疎外感、そういったものを、ひしひしと感じながらの一年あまりだったと推察します。
しかしながら、皆さんは、目標をしっかりと見据え、自分を見失うことなく、根気よく努力され、本日、この卒業式に臨まれています。
ここに改めて皆さんの晴れの卒業をよろこび、今日までひたむきに努力され、健闘してこられたことを学長として誠にうれしく思い、心からの拍手をお送りします。
 
おそらくは、長い間記憶に残るであろうこの卒業式、この日から皆さんはそれぞれ、自分の道を歩んでいきます。
どのような道を歩むにしろ、皆さんがこれまで音楽の学びをとおして獲得したもの、積み上げてきたもの、これら全てを大事にするということを忘れないでください。
皆さんの心の中に蓄積された大切なものは、人生のさまざまな経験とともに少しずつ変化していきます。そして、この経験こそが皆さんの成長の糧として役立つことと確信しています。
 
私自身のことで恐縮ですが、ずいぶん長い間、音楽と共に生きてきました。
その時間の経過やさまざまな経験を経ることによって、自分の演奏、自分の音楽はもちろんのこと、他者の音楽や演奏に触れた時、それぞれに際立つ個性をよりよく味わい、より深く理解する、といったことが少しずつできるようになってきたと感じています。
これから皆さんが歩む人生はさまざまですが、常に音楽と共にあり続けることを強く望んでいます。そのことは、音楽に限らず、人として生きていく上で、これから出会うであろうさまざまな人々、それぞれの人間性、これらを尊重しつつ理解を深めることに確実につながると信じています。  
皆さんが常に音楽とともにありつづけ、皆さんの中の音楽に耳を澄ませつつ、時間が経過し、人生を経験する。そのことによって、少しずつ変化していく自分の中の音楽によく耳を傾け、より深く味わいながら、それぞれの道を歩んでいただきたいと願っております。
 
皆さんが進まれるこれからの新しい道において、多くのよろこびと感動が色鮮やかで豊かでありますよう心から願いつつ、本日卒業される皆様へのお祝いの言葉といたします。
 
本日は卒業、おめでとうございました。
 
 令和3年3月12日 東京音楽大学 学長 野島 稔