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2021.07.02

鈴木勝利顧問(前理事長)が、北海道教育大学史学会発行 史流第48号(2021年3月発行)に論文を発表しました

鈴木勝利顧問(前理事長)が、2021年3月発行の、北海道教育大学史学会発行 史流第48号に、『琱生三銘文の総合的研究』についての論文を発表いたしました。

 

論文タイトル
「琱生三銘文の総合的研究」

 

ISSN 0386-9385
北海道教育大学史学会
2021年3月

 

東京音楽大学 中目黒・代官山キャンパス クリエイティブラボにも配架されています。

 

資料ID 03646884

 


 

北海道教育大学 竹内康浩教授より 著者紹介

 

今回、『史流』に投稿された鈴木勝利氏について、簡単ですがご紹介いたします。

 

鈴木勝利氏の本職は弁護士で、現在、名川・岡村法律事務所の所長を務めています。該事務所は一九一七年に創立され、すでに百年以上の伝統を持ち、かつ帝人事件や昭電事件、造船疑獄などの歴史的な事件を担当するなど、斯界において確固たる実績を有し、近年では学校法務でも高い評価を受けております。また、鈴木氏は束京音楽大学の理事長を務め、こちらにつきましても二〇一九年に中目黒・代官山エリアに新キャンパスを開校するなど、大学の発展に多大の貢献をされているとうかがっております。

 

こうした活躍の一方、鈴木氏はかねてより中国古代に興味を持ち、ご自身のお仕事にも関わってでしょうか、古代の裁判について特別な関心を寄せられました。先行研究に目を通していくうちに、西周時代の金文の中に裁判関係の記事を載せた資料があることを知り、自らそれらの金文の解読に取り組もうと志すに至りました。そして関係の金文著録と先行研究の蒐集に着手してその整理・読解に努め、上記のような激務にありながら研究を進めて成稿を得ました。鈴木氏はその原稿を佐川英治氏(現東京大学教授)に示して指導を請うたのですが、実は佐川氏は竹内とは旧知の間柄でありましたので、原稿に目を通して意見をくれないかとの連絡を受けました。畏友佐川氏からのお話でもありますし、原稿には竹内の論文が引用されてもいますので、特に何もできませんがという条件付きで、原稿をお預かりすることといたしました。二〇一三年秋のことです。

 

一読してこれまでの研錯と努力に敬服する一方、中国古代史(まして金文解読という特別分野)の専門研究者ではありませんので、資料引用とその検討の仕方や行論に当該分野になじまないところがあり、また内容的に盛り込み過ぎの感もありましたので、まずはそのあたりの修正から始めました。そしてほぼ七年の時間をかけて何度も修正や意見交換を重ね、もうこの辺で世に問うてみてもよいかと判断し、今回、竹内が所属する北海道教育大学の歴史のスタッフが中心となって刊行している『史流』誌への掲載に至ったという次第です。修正の期間中、鈴木氏はわざわざ中国の陝西省西安に足を運んで問題の器を実見もしており、その熱意は並々ならぬものにて、まさに感服するほかありません。

 

この論文が成るにあたり竹内は意見などを出しはしましたが、中心となる琱生関係諸器銘文の解釈も含め、ここに示されたさまざまな見解は全て鈴木氏の独自のものです。何しろかねてより難解をもって知られる銘文群ですので、先行研究も諸説分かれ、個別の文字の判読や解釈はもとより、全体のストーリーの理解も一致を見ない状況ですが、それら先行研究をもれなく集めて比較検討し、後世の文献資料の援用をせず、もっぱら金文資料の中において解読を試みた研究として、貴重な成果と言えるかと思います。文字や語句の解釈にはあるいは異論もありましょうけれども、それは今後議論によって深めてゆくべきであり、琱生関係諸器に関する現在最も意欲的な論考として世に問うものであります。