検索

よく検索される項目

新シリーズ【音楽学のススメ】第1回 村田千尋教授「歴史は苦手ですか?~その1」

第1回 村田千尋教授

「歴史は苦手ですか?」

 

さまざまな観点から音楽を考察する「音楽学」。新シリーズ「音楽学のススメ」では4名の専任教員に執筆を依頼しました。皆さんの音楽学習に役立つおもしろい「ネタ」を発信していただけることでしょう。  
 

皆さんは歴史が苦手ですか?実は僕にはこの気持ちがよくわかりません。だって、幼い頃から歴史が大好きだったのですから。でも、聞くところによると、暗記が苦手で、年号やできごとが覚えられないから苦手なのだそうですね。そんなこと、心配する必要はありませんよ。僕は年号の暗記などしません。「歴史=暗記」という発想を変えましょうよ。
 

 幼稚園の頃気に入っていたのが絵本の『うしわかまる』。やがてその興味は源義経から源平合戦全体に膨らみ、鎌倉幕府、元寇、マルコ・ポーロ、ルネサンス初期のイタリアへとどんどん広がっていきました。いろいろな伝記や図鑑、歴史書を読んで楽しんでいましたから、年号もいつの間にか覚えます。楽しみながらだから覚えやすい。必死になって暗記した年号や人名はじきに忘れる。楽しむことが第一です。夢の翼を広げましょう。
 

 もうひとつは日々の生活と関連づけることでしょうね。今年、2020年はベートーヴェンの演奏会がたくさん企画されていました(多くが中止になってしまい、残念です)。ベートーヴェン関連の本もたくさん出版されています。なぜでしょう?今年が彼の生誕250年だからです。つまり彼は1770年生まれ。10年前2010年のCDショップの店先には、ショパンのCDが山積みされていました。彼の生誕200年だから。でも、同い年のシューマンは、出版こそ多かったものの、CDショップではショパンに負けていて…。自分の体験と関連づけることによっても、自然に覚えられるものです。
 

 とにかく、大量の年号だとか、人名、音楽用語を怖がらないでください。暗記などしなくとも、音楽史は楽しめる。楽しめば、いつの間にか覚えられる。さあ、一緒に音楽の世界を巡って時間旅行に出かけましょう。

 

【村田千尋教授プロフィール】
本学音楽学主任教授。東京大学文学部美学科、国立音楽大学大学院音楽学専攻で学び、弘前大学教育学部専任講師、北海道教育大学札幌校教授を経て現職。シューベルト、ライヒャルトを中心に、18・19世紀のドイツ・リートを研究すると共に音楽社会史、環境美学、近代日本音楽教育史などにも関心をもち、さらに、カリキュラムを構築する責任者として、大学における音楽の勉強方法、教育のあり方の研究にも長年携わってきました。