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【音楽学のススメ】第7回 坂崎則子教授「リュート音楽との出会い~その2」

第7回 坂崎則子教授

「リュート音楽との出会い~その2」

 

さまざまな観点から音楽を考察する「音楽学」。新シリーズ「音楽学のススメ」では4名の専任教員に執筆を依頼しました。皆さんの音楽学習に役立つおもしろい「ネタ」を発信していただけることでしょう。  
 

 リュートは、西洋では16、17世紀頃に栄えた楽器です。もともとは中近東の楽器で、7、8世紀頃、イランのあたりからこの楽器の祖先が東西に伝播していきました。西のヨーロッパ方面に伝わったのがリュートで、東の方、シルクロードをとおって中国、そして日本に伝えられたのが琵琶です。西洋の楽器とばかり思っていたリュート、そして日本の楽器だと思っていた琵琶はルーツが同じなのです。地球規模で眺めた時に、私の中の「西洋音楽」の枠組みは大きく変化し、自分が知っていた音楽は、世界という視点から見るとずいぶん様変わりしていきました。慣れ親しんでいた西洋音楽が「ヨーロッパという地方の音楽」として聴こえてきたのです。西洋音楽は今でも以前と変わらず好きですが、視野が広がって、さまざまな民族の音楽も西洋音楽も同列に見たり聞いたりできるようになりました。
 

 今は、いいことも好ましくないことも、地球規模でいろいろなことを考えていかなければならない時代に入ってきました。この時代に音楽をどのように勉強していくのか、私たちは常に考えていかなければなりません。東京音楽大学では、西洋音楽、日本音楽、世界音楽の講義があります。さらに、大学の付属機関として民族音楽研究所があり、多種多様な「民族の音楽」が研究対象になっています。日本の邦楽、アイヌの音楽、インドの音楽、インドネシアのガムラン等々と並んで、西洋の古楽器であるリュートもこの研究所で扱っています。
 

 知らない音楽に出会っても、今はパソコンや携帯ですぐに検索することができます。ただ、示されるものは「録音と映像」なので、実物の質感、本当の音の響きとはやはり違います。どうか、できるだけ実際の楽器の姿、響きをぜひ見たり聞いたりしてください。先日、池袋キャンパスA館100周年記念ホールで民族音楽研究所主催のモンゴルの音楽を聴きました。馬頭琴の深い響き、そしてホーミーという独特な発声の歌を聴きました。以前テレビで見聞きしたことはあったのですが、実際に実物を見て聴いたのははじめてでした。そしてその迫力に驚きました。大学のホールなどでこうした世界音楽に関する演奏会がよく開かれていますので、機会をとらえて聴いてみてください。授業で学んだ西洋音楽、日本音楽、世界音楽、そうした知識が、実際の演奏を聴くと、強力な実体験となって学生さんの視野を大きく広げてくれることでしょう。
 

【坂崎則子教授プロフィール】
東京藝術大学音楽学部楽理科卒業。東京藝術大学大学院音楽研究科音楽学修了。西洋音楽史、美術史、ドイツリート、リュート音楽などを研究しています。本学副学長、付属図書館長などを歴任。