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2023.10.27

「野島賞」第1回授与式(受賞者:藤田真央さん)が10月26日に行われました

「野島賞」第1回授与式(受賞者:藤田真央さん)が10月26日に行われました

 
 

 東京音楽大学前学長・故野島稔先生の名前を冠した「野島賞」の第1回授与式が10月26日に中目黒•代官山キャンパスTCMホールにて行われました。「野島賞」は、付属高校から大学院に至る本学在学生および卒業生または修了生で35歳以下の者のうち、国内外の学術研究または演奏活動において顕著な業績を挙げ、本学の名誉を高めた方の功績を讃えるもので、第1回の受賞者は、藤田真央さん(2020年3月卒業)。
 付属高校時代から野島先生に師事し、在学中に浜松国際ピアノアカデミー・コンクール優勝(2016年)、クララ・ハスキル国際ピアノ・コンクール優勝(2017年)を経て、2019年にチャイコフスキー国際コンクール ピアノ部門で第2位入賞を果たし、世界的な高評価を得たこと、在学中よりヨーロッパの主要音楽祭に招かれ、著名指揮者との共演、CD録音等活躍の場を拡げ、多数のメディアにも取り上げられるなど、本学在校・在学生の模範となり、卒業生として本学の誉となったことが受賞の理由となりました。
 

■ 野平一郎学長ごあいさつ
「藤田さんの現在の国際的なご活躍を見れば、当然のことでありますけれども、今年3月の受賞者を決める選考会議では、満場一致で藤田さんに決定しました。私は昨年、藤田さんが録音された『モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集』を拝聴する機会がございました。モーツァルトという特別な天才の創作に、また一つ現代の自由な解釈が加わったなと思い非常に感銘を受けました。モーツァルトは野島先生も得意にしていらっしゃったレパートリーの一つで、それにまた、現代という時代の自由な主張というものを感じさせるすばらしい演奏だったと思います。藤田さんには、これからも音楽家としてさらに進化・深化していっていただきたいと思います。また、藤田さんの活動が、東京音楽大学のこれからの学生、藤田さんに続く若いピアニストたちの刺激となり、音楽の道にさらに邁進していただくことを願っています。それがこの『野島賞』を創設した重要な意義の一つでもあると思っております」

 

藤田真央さん謝辞

この度は私にとって非常に名誉で、野島先生の名前を冠する賞の、第1回目の賞ということで、この上なく喜ばしい思いでいっぱいでございます。
高校3年生、2016年頃から、野島先生に教えを乞うことになったわけですけれども、今でも忘れられないのが第1回目のレッスンで、プロコフィエフのピアノソナタ第7番を弾いた時。まず第一声が、「君なんかがめちゃくちゃに弾いていい曲なんかじゃないんだよ」という非常に厳しいお言葉を仰ったんですね。
この曲は非常に歴史的な裏付けのある曲で、ソ連時代だったということも一つありますね。家族が収容所に入れられながら、自分の思いというものを曲に託したという。国が芸術を支配していたわけですが、その曲の中にすごいメッセージが隠されていて、作曲家は、一音一音に未来を託して書いてつないでいるんですね。
私が思うに、当時、時をときめくすばらしいピアニストたちは、暴れ馬のように自分の技術を見せつけようという人が結構多くて、私もそれに魅せられてしまい、なんの意味もなく強い音を出して、速く弾いて。そんな尖った私に、まず第一声が「君なんかがめちゃくちゃに弾いていい曲なんかじゃないんだよ」と。そこから野島先生の教えがスタートしたんですけれども、その野島先生の教えというのが、「すべての瞬間がとても大切なんだ。無駄な音なんて作曲家は書かないよ」ということ。それが根底にあって、それから、どういう響きを生み出すか、美しい音色でハーモニーを構成するかという技術的なものだったり。
私の今の活動は、すべて野島先生が教えてくださったことが礎になっているんです。本当に、野島先生の教えは尊い。些細な一言もレッスン中は聞き逃さずにしていました。現代曲もロシアの曲も、すべての作曲家に適した音作りを見出して、それを私に説いてくれて。それで今の私があると思っております。
野島先生が亡くなられた時は、私はすでにベルリンに拠点を移していたので、会えなかったんですけれども、先生が倒れられる直前に、たまたまお電話で話をしていて、いつも用件だけで終わる内容が1時間以上話してですね、それが最後の会話だったんですけれども、最後は、「君のリサイタルを聴きたいな」ということで終わったんですが、その言葉を今も思い続けています。そこからたくさんの公演を重ねて、いろんな舞台に立つことができて、そこで野島先生に教わったものを発揮できるのは、この上ない喜びであります。
ちなみに野島先生が亡くなられてから、先生の姪御さんにこの衣装をいただいて、今日私が着ている衣装はすべて野島先生のコーディネートで、スーツから中のセーターまで全部野島先生(笑顔)。とても崇拝しているので、私のまわりが野島先生に囲まれて、包まれている。そういう思いで今この壇上に立っているので、本当にうれしい限りでございます。

 
 


丸山恵一郎理事長から副賞授与
 
 


受賞謝辞
 


東京音楽大学付属オーケストラ・アカデミーによる
祝賀演奏


 
 

(広報課)