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NEW!【在学生インタビューシリーズ】第27回 五十嵐 健太さん(大学院修士課程器楽専攻(サクソフォーン)特別特待奨学生 2年)を掲載しました

五十嵐 健太さん
 

大学院修士課程器楽専攻管打楽器研究領域(サクソフォーン)特別特待奨学生 2年

 

ウクライナでサクソフォーンを学んでいた五十嵐健太さんは、戦争を逃れ日本へ避難。東京音楽大学で新たな音楽の道を歩み始めました。第36回日本管打楽器コンクール第1位、そしてアドルフ・サックス国際コンクール第5位という輝かしい実績を重ね、在学中でありながら東京佼成ウインドオーケストラへ入団。活躍の場を広げる五十嵐さんに、本学での学びと成長を伺いました。
 
 

― 東京音楽大学に入学して、まず印象に残っていることを教えてください。

 

日本へ来たのは戦禍の影響があったからですが、もともと日本で学びたいという思いは強くありました。そして東京音楽大学へ入学し、最初に驚いたのは学生の人数と楽器の多さです。サクソフォーンだけでも多くの仲間がいて、オーケストラや吹奏楽も学生だけで編成できる規模。これまでに経験したことのない環境です。さまざまな楽器の響きを聴きながら、自分の音がどう響くかを考える。そうした日常が、自然と耳を鍛えてくれたと思います。
また、英語で受けられる授業もあり、学内には国際的な雰囲気があってお互いの文化を尊重しながら音楽を語り合える。その空気がとても心地よく、安心して学べる場所だと感じました。

 

― 本学での学び、特に波多江史朗先生のレッスンは、五十嵐さんにとってどのようなものでしたか?

 

ウクライナの音楽教育は、自由で個々の判断に任される部分が大きいものでした。先生が教室にいる間に学生が順番に訪れてアドヴァイスを受ける、細かい指導というよりは方向性を示していただく、そんなスタイルです。一方、日本では一音一音を丁寧に積み上げる教育があり、音の長さやブレスの位置、フレーズの流れまで細やかなアドヴァイスがある。その“基礎の深さ”に驚かされました。
特に、波多江先生との出会いは、私にとって本当に大きなものでした。それまでの私は、いかに速く正確に吹くかという技術面に意識が向いていましたが、先生のレッスンでは“なぜその音を出すのか”、“何を表現したいのか”、という本質を問われました。一つひとつの音に意味をもたせ、音楽全体を構築していく。その考え方は、驚きに満ちたものでした。波多江先生はいつも明るくスペシャル・ポジティブで(笑)、レッスンのたびに私自身も元気をもらっています。クールに見えて実はとても情熱的で、決して答えを押し付けることなく、「もっとこうしてみたら?」と促してくださる。その言葉の一つひとつが、自分自身の音と深く向き合うきっかけになりました。また、先生がフランス留学で学ばれた背景から、作品の成り立ちや作曲家の性格、時代の空気まで教えてくださり、音の背後にあるストーリーを知ることで、表現の深さが変わるという気づきも得られました。

 


▲波多江先生と

 

― 大学での学びは、国内外のコンクールでの快挙にどうつながっていったのでしょうか。

 

日本に来て間もない頃、波多江先生から「挑戦してみたら?」と勧められたのが日本管打楽器コンクールでした。先生と学んだ“一つひとつの音を大切にし、丁寧に音楽を創る”というアプローチが、高く評価していただけたと感じています。当時は、私のことを知っている人はほとんどいませんでしたが、この受賞をきっかけに多くの方に名前を覚えていただく大きな転機になりました。
続いて挑戦したアドルフ・サックス国際コンクールでは、課題曲や選択曲を組み合わせ、技術や丁寧さに加え、自分自身の音楽性、パッションを前面に出すことを意識。日本で学んだ丁寧な表現力が、国際舞台でも確かに生きたと感じています。どちらのコンクールも、東京音楽大学での学びがなければ、決して良い結果にはつながらなかったでしょう。

 


▲アドルフ・サックス国際コンクールの本選にて

 

― 知名度が上がったこともあり、レッスン依頼のお問い合わせも来るようになったとか。

 

そうなんです。SNSのDMで「レッスンしてほしい」とメッセージをいただくようになり、高校生や中学生、アマチュアの方にも個人レッスンをしています。Instagram経由で知り合って、オンラインや対面で指導することもあります。自分が教えることで、改めて“どうすれば伝わるか”を考えるようになりました。東京音楽大学で先生方がどのような言葉で導いてくれたかを思い出しながら、私なりの言葉で説明する。演奏だけでなく、教育者という面でも成長できている実感があります。

 

― 現在は東京佼成ウインドオーケストラでご活躍です。プロの現場で、本学での経験が生きていると感じることはありますか?

 

日々、実感しています。ウクライナではほとんどソロが中心だったので、東京音楽大学に入学して吹奏楽の授業を受けられたことはとても新鮮でした。多様な楽器の奏者と音を重ね、一つの音楽を創るプロセスは刺激的で、そこから吹奏楽への興味がどんどん膨らんでいきました。その経験が、現在の東京佼成ウインドオーケストラでの活動にも確実につながっているのだと思います。周りの音を聴き、その中でサクソフォーンが果たすべき役割は何かを考える。ソリストとはまったく違う視点を得ることができました。東京音楽大学の授業で、自分の音だけでなく、全体の響きを意識する訓練を積めたことは、本当に大きな財産です。

 

― 今、そしてこれから目指す“音”について教えてください。

 

東京音楽大学で学ぶ中で、“言葉が音に影響を与える”ということを強く感じました。たとえばフランス語は語尾がやわらかく消えていくため、フレーズも自然に小さくまとまる。一方で日本語は語尾をしっかり言い切るから、音の終わりまでエネルギーが残る。そうした言語の特性が、そのまま音楽の表情にも表れていることを知り、世界各地の音楽がもつ“響きの個性”をより深く理解できるようになりました。
そして今、目指しているのは、自分の中にずっと鳴っている“理想の音”を形にすることです。子どもの頃から頭の奥で響いている、まだ誰の演奏にも似ていない音。その音を現実のものにできたらと思っています。クラシックの中でも自然に息づくサクソフォーンの音色。聴いた人の心に残るような、美しく、静かな説得力をもつ音を追いかけ続けたいです。

 

― 最後に、本学入学を希望する生徒の皆さんへメッセージをお願いします。

 

東京音楽大学は、常に新しい風が吹いている大学だと思います。外国人の先生や留学生も多く、キャンパスも整備されている。そして、東京音楽大学には、素晴らしい先生方、そして同じ志をもつ仲間たちと、純粋に音楽に打ち込める最高の環境があります。みんなフレンドリーであたたかいし、国も言葉も違うけれど、音楽を通してすぐにつながれる。技術を磨くことはもちろんですが、それ以上に“音楽とは何か”を深く考える時間を与えてくれる場所です。この恵まれた環境の中で、ぜひ自分だけの音楽を見つけてほしいと願っています。

 
 
(総務広報課)

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