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【在学生インタビューシリーズ】第29回 高橋 百佳さん(大学院修士課程音楽文化研究専攻(多文化音楽) 2年)

高橋 百佳さん
 

大学院修士課程音楽文化研究専攻(多文化音楽) 2年
器楽専攻弦楽器(ヴァイオリン)2025年大学卒業

 

クラシックの確かな基礎を土台に、J-POPを新たな形で届ける音楽プロジェクト「J-POP CLASSIC CLUB TOKYO」。そのリーダーとして、企画から演奏、運営までを担ってきたのが高橋百佳さんです。東京音楽大学付属高等学校から同大学へと進学し、現在は大学院で研究を続けながら、同グループのコンサート、テレビ、ラジオ、新聞などのメディア出演や、取材の対応、また演奏家個人としては、スタジオレコーディングやプロミュージシャンとの舞台演奏など、活動の幅を着実に広げています。東京音大での学びや人との出会いは、いまの音楽活動にどのようにつながっているのか、お話をおうかがいしました。
 
 

― 東京音楽大学在学・卒業生がメンバーとして活動する「J-POP CLASSIC CLUB TOKYO」は、どのようにしてはじまったプロジェクトなのでしょうか?

 

きっかけは、2022年6月、私が大学2年生のときに学内の芸術祭で上演したミュージカル『マンマ・ミーア!』です。ちょうど高校から大学へ進学するタイミングがコロナ禍と重なった1年生の時は、芸術祭も中止となり、人前で演奏する機会がほとんどない時期が続いていました。せっかく音楽大学に進学したのに、舞台に立つ経験がなかなかできない状況が、正直すごくもどかしかったですね。
 
そんな中で、久しぶりに実現できたのが、この『マンマ・ミーア!』の公演でした。お客さまの前で音楽を届けられたこと自体が本当にうれしくて、終演後に「また観たい」「すごくよかった」と声をかけていただいた時に、あらためて音楽を「届ける」ことの意味を実感しました。
 
その流れで数カ月後にYouTubeで発信をはじめ、「J-POP CLASSIC CLUB TOKYO」として本格的に活動をスタートさせました。グループ名には、「東京」音楽大学で学んできた「クラシック」の素養と、「J-POP」という身近な音楽を結びつけたいという思いを込めています。
バッハやモーツァルトも、当時の人々に親しまれていた音楽が、時代を超えて、後世の人々に演奏され続けることでクラシックになったのだと考えると、今のJ-POPも、演奏し続けていけば、クラシックのように後世に残っていく音楽になるのではないか、という思いも「J-POP CLASSIC CLUB TOKYO」という名称に込めました。
 
最初は『マンマ・ミーア!』を公演した際のメンバーに声をかけてはじめた小規模の活動でしたが、現在は、弦楽器やピアノ、打楽器、コーラスなど、約30人の大編成になりました。コンサートも今までに6回、開催することができ、たくさんのお客様に演奏を聞いていただけるようになりました。おかげさまで、コンサートのチケットは毎回完売になっています。
「楽しそうに演奏している姿が印象的」とお客様に言っていただくことが多いのですが、私たち自身が楽しみながら音楽に本気で向き合っていることが、自然と伝わっているのかなと感じています。

 


▲2025年7月、はじめて横浜でコンサートを行ったときの写真

 
 

― 高校から大学へ進学する大切な時期に、そのような経験があったのですね。一貫して東京音楽大学で学ばれてきた中で、その経験は、今の活動にどのようにつながっていると感じますか?

 

高校に進学するタイミングで東京音大を選んだのは、付属高校の文化祭を見学しに行った時の雰囲気がとても自由で、「ここ、なんだか楽しそうだな」と直感的に思ったのが大きかったのです。音楽の話を、先生と自然にできる距離感がとても心地よかったです。
 
大学に入ってからは、「ポップスもやりたい」「こういう活動をしてみたい」という自分の中にある興味を、高校1年生からレッスンを見ていただいていた篠崎功子先生に相談するようになりました。すると、「それ、いいと思うよ!」「きちんと続けてみなさい」と、とても自然に背中を押してくださいました。
 
大学3年生から師事している荒井英治先生は、私たちのYouTubeチャンネルも登録してくださって、新しい動画をアップするたびに、感想をLINEで送ってくださるんです。お世話になっているチェロの山本裕康先生は、グッズのTシャツまで買ってくださいました。
荒井先生と山本先生は、私たちの代が大学を卒業した2025年3月の「J-POP CLASSIC CLUB TOKYO卒業コンサート」にもご出演いただきました。心から尊敬している先生方と共演させていただく大変貴重な機会をいただき、本当に嬉しくありがたかったです。
 
「J-POP CLASSIC CLUB TOKYO」の活動は、こうしたあたたかい応援にいつも支えられています。大学の皆さまが「ちゃんと見てくれているんだな」と感じられることが、励みになります。最近では、活動を重ねる中で、「この音楽をどう届けるか」を考えるようになりました。高校生の頃は、ただ「うまくなりたい」という気持ちが強かったのですが、演奏技術だけでなく、音楽との向き合い方そのものが少しずつ変わってきたと感じています。

 


▲2025年3月、日本青年館ホールで行われた私たちの代の卒業コンサート

 


▲2025年3月の卒業コンサート。コンサートでは歌って弾いてMCをします!

 
 

― 大学卒業後は器楽専攻弦楽器研究領域ではなく、音楽文化研究専攻多文化音楽研究領域の道に進まれました。どのような生活を送っているのでしょうか。大学院での研究についても教えてください。

 

学部の4年間は、器楽専攻(ヴァイオリン)としてクラシック音楽を学びながら、J-POPの練習を週に2〜3回続ける毎日でした。そんな中で大学院進学を考えたとき、演奏をさらに突き詰める道も、と迷いました。ただ、現場に立つほど、「うまく弾くこと」だけでは語りきれない音楽の力に惹かれるようになり、音楽を学問として学びたい、音楽はどんな文化の中で生まれ、どう受け継がれ、人々の生き方とどう結びついてきたのか。そこをもっと深く知りたい、考えたいという気持ちが強くなっていきました。そうした思いから、大学院では多文化音楽研究領域に進みました。
 
同期は海外から来た学生が多く、日常的に異なる文化背景をもつ人たちと話す環境です。西洋音楽を軸に学んできた自分にとって、世界には実に多様な音楽の在り方があるのだと、視界が一気に広がりました。
 
現在興味をもっているのは、「ロマ」いわゆるジプシーの人々のヴァイオリン演奏や、その教育方法です。研究をしながら演奏も続ける日々ですが、「音楽そのものの可能性を、もっと広い場所で試してみたい」という気持ちも高まっています。考えて、迷って、それでも前に進みたい。次から次へとやりたいことが増えていきますね(笑)。

 

― 独自の音楽を追究する中で、そうした思いを抱き「やりたい!」と声に出してきたことが、大きな現場への参加にもつながったそうですね。

 

はい、これは本当にそうです。「やりたいです」「行けます」「参加したいです」と、とにかく声を大にしてきました。大きな転機になったのが、伝説のロックバンド、元スコーピオンズのギタリスト、ウリ・ジョン・ロートさんの日本ツアーに帯同した経験です。ウリさんが、YouTubeで広上淳一先生指揮による東京音楽大学 学内「第九」演奏会を観てくださり、「この大学と一緒にやりたい」と思ってくださったことがすべてのはじまりです。東京音大と世界的アーティストのコラボレーションに加われることになったと聞いたときは、信じられなかったですね。
 
2025年8月、他の予定はすべて埋まっていたのですが、幸運にもウリさんのツアーがある1週間だけ、ちょうどスケジュールが空いていて、1stヴァイオリンとコーラスの両方で帯同しました。ウリさんは事前に「J-POP CLASSIC CLUB TOKYO」の動画も観てくださっていて、「歌えるならぜひ歌も歌って!」とコーラスのお声がけまでいただきました。本来、ウリさんのバックで演奏するはずが、なんとウリさんの隣のフロントに! 
 
さらに現場では、即興演奏にもはじめて挑戦しました。クラシックではほとんど経験のないインプロヴィゼーションで、怖さもありましたが、ここで引いたら終わるな、と。
終演後に「度胸あるね!共演はとても楽しかったよ」と言っていただき、「ああ、飛び込んでよかった!」と心から思いました。
 
ジャンルも世代も国も違う音楽家たちと、音楽だけで一気につながる感覚。ステージの上で、「音楽って、こんなに自由でいいんだ」と、身体で理解した気がします。考えて、声に出して、動いてみる。その繰り返しが、確実に次の景色へ連れて行ってくれている。この経験は、今の自分の原動力そのものですね。

 


▲2025年8月、EX THEATER ROPPONGI公演

 


▲Uli Jon Roth Japan Tour 2025より。ツアーではウリさんの横で弾かせていただきました。

 
 

― 「J-POP CLASSIC CLUB TOKYO」にご自身、これからどのような音楽活動を描いていますか?

 

「J-POP CLASSIC CLUB TOKYO」は、私にとって「今の活動の核」であり、同時に「未来につなげたい場所」です。ありがたいことに最近は、コンサートを観てくださったファンの方から声をかけていただいたり、企業のパーティーなどでの演奏依頼をいただいたりと、少しずつ活動の場が広がってきています。個人的にも、アーティストのレコーディングにストリングスメンバーとして参加させていただくなどのお声がけもいただくようになりました。
 
学生の活動としてはじめたことが、学外の現場につながっていく感覚はとても励みになりますし、「音楽の道を拓いていく」と実感できる瞬間でもあリます。そしてそれ以上に、このグループが、「東京音楽大学で挑戦が生まれる場所」として残っていくことに大きな意味があると思っています。
 
ここにいれば、声を出せる。やりたいと言えば、誰かがちゃんと受け止めてくれる。ポップスを学べる場所として、残していきたい。そんな空気ごと、次の世代につないでいきたいですね。これからは少しずつプロデューサーのような立場でも関わりながら、いずれは後輩たちに引き継いでいけたらと考えています。
 
個人としては、まずは、音楽で生計を立てていくこと。そのために、演奏の現場に立ち続けたいと思っています。ヴァイオリニストではありますが、歌も大好きなので、YouTubeやコンサートでもヴァイオリンを弾きながら、歌っています。それを「いいね」と言ってくださる先生方がいらっしゃるのも、東京音大のすばらしいところです。
オリジナル曲も作っているので、シンガーソングライターとしての活動も徐々に増やしていこうと思っています。
 
これからもジャンルや枠にとらわれず、演奏の現場に飛び込み続けたい。国内はもちろん、いずれは海外のステージにも立ち、音楽で人とつながる面白さを、もっと広い場所で確かめていきたいんです。
 
「やりたい!」と声に出して動いてきたからこそ、今があります。その姿勢だけは、これからも変えずにいたいと思っています。演奏者としてステージに立ち、お客さまに直接音楽を届けることを大切にしたい。音楽を通して、誰かが元気になったり、前を向くお役に立てたなら、これ以上うれしいことはありません。

 

 

― 最後に、東京音楽大学を目指している高校生へメッセージをお願いします!

 

東京音楽大学には、自分のやりたいことを応援してくれる先生方が、本当にたくさんいます。伸び伸びとした自由な雰囲気があって、先生と学生の距離もとても近い、あたたかな学校です。
大切なのは、受け身でいるのではなく、「これをやってみたい」「こういう音楽に興味がある」と、自分の言葉で伝えてみてください。やりたいことを口にすると、思いがけないところからチャンスが巡ってくることがあります。
 
もうひとつ大事だと感じているのが、人とのつながりです。技術だけでなく、人柄を大切にして関係を築いていくと、そのつながりが、いずれ一緒に仕事をする仲間や、生涯の友人へとつながっていきます。私自身、今の活動は、そうしたつながりに支えられて広がってきました。
 
音楽の道は、ひとつではありません。自分なりの関わり方を探しながら、音楽と生きていく。そのスタート地点として、東京音楽大学は、とても心強い場所だと思います。

 
 
(総務広報課)

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