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【授業紹介シリーズ「合唱」】 第1回 阿部純准教授

阿部純准教授

 

東京音楽大学の授業の特色と魅力を解き明かす「授業紹介シリーズ」。今回は合唱授業の魅力に迫ります。
本学では、合唱授業が複数開講されていますが、今回は「プロフェッショナルのオーケストラとの合唱共演」が魅力の「パート別合唱」です。阿部純准教授にお話を伺いました。

 

 私は1987年、ジュゼッペ・シノーポリ氏の指揮で英国フィルハーモニア管弦楽団と東京音楽大学がサントリーホールで合唱共演をした頃から、本学での合唱指導に携わっています。
東京音楽大学の合唱の魅力は一言では語りつくせません。が、やはりそのハイライトは「パート別合唱」授業の集大成でもある、「プロフェッショナルのオーケストラとの共演」だと思います。学生たちは毎年冬にプロフェッショナルのオーケストラとベートーヴェンの「第九」を共演します。音楽大学の定期的なオーケストラとの共演は現在本学にしかないものです。1979年から続いている日本フィルハーモニー交響楽団との合唱共演は恒例となっていて、ありがたいことにチケットが完売するほどの人気となっています。

 

「パート別合唱」は声楽専攻1~4年男子、3・4年女子と教職課程を履修する他専攻の男子(1~4年)の必修授業となっていますが、オーディションを受けて合格すればそれ以外の学生も履修することが可能です。
ですので授業では、歌の経験があまりない学生たちのために、ドイツ語の発音や楽譜のなかでの子音の位置、腹式呼吸のことなど基本的なことから教えています。なかにはまだ、ドイツリートを歌ったことのない声楽の学生もいますので、そういった学生たちにとって個人のレパートリーやレッスンの下支えになっていると思います。器楽の学生には卒業後、オーケストラの現場で再会することもありますが、歌を勉強していると拍の前で二重子音を発音する声楽特有のことがわかるので、プロになっても役立っていると言われます。

 

 

その他の必修授業としては、声楽専攻の1・2年生と音楽教育専攻1・2年生の女声合唱があります。これらの授業はいわば「パート別合唱」に至るための準備期間と言えます。「パート別合唱」で外国語を歌う際に戸惑うことがないように、2年間の授業の中で必ず一度は外国語のミサ曲等を学びます。
今年は東京フィルハーモニー交響楽団とゲーム音楽の合唱作品で共演し(2019年12月31日にNHK BSプレミアムにて放映)、日本フィルハーモニー交響楽団とのベートーヴェン「第九」の他にヘンデルの「メサイア」を授業で行い、学内演奏会ではピアノと電子チェンバロで「メサイア」を演奏しました。
「メサイア」も日本においては合唱の重要なレパートリーのひとつです。とくにソロ曲はプロフェッショナルとなる道で必ず触れることが多いです。演奏会では抜粋でしたが、授業では内容も含めてほとんど全曲を勉強しました。英語はポップスなど幅広いジャンルで大切な言語なので、とりわけ発音を細かく指導しました。英語の歌を勉強する機会にもなってよかったと思います。

 

「パート別合唱」を学外で演奏する時は「東京音楽大学合唱団」として演奏するわけですが、本学合唱団は、1970年代初期頃からベートーヴェンの「第九」をプロフェッショナルのオーケストラと毎年のように共演してきました。かつて日本でベートーヴェンの「第九」といえば、プロフェッショナルの合唱団が基準となっていました。しかし今はそうした常設のグループがなくなってしまいました。ので、学生たちには「ほかの合唱団に参照されるようなレヴェルになりましょう」と言って日々指導しています。
近頃の学生はポップスに慣れ親しんでいるのでリズム感が優れており、その結果昔よりアンサンブルのスキルは上がっていると思います。そして外部の演奏家やお客様に最も感心されるのは学生たちの「熱量」です。「第九」は、とりわけ熱量が必要な演目です。本学の「第九」の基礎は小林研一郎先生が作ってくださいました。学生たちは「第九」の中身をわかって歌ってます。
 

(「パート別合唱」授業風景)

 

これまでも本学の合唱団は、池袋の東京芸術劇場のこけら落とし公演を筆頭に、エポックメイキングな演奏会に多く携わって来ました。
近年では、2016年にピエタリ・インキネン氏と日本フィルハーモニー交響楽団でホルストの惑星をした際、観客席からは見えない位置で歌いましたが、お客様から「録音だと思った」との最高の誉め言葉をいただきました。昨年2018年にサンクト・ペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団と「イワン雷帝」を共演した際は、ロシアの共演者の方に「おめでとう」と言われて、指導者として誇らしかったです。語りを担当したニコライ・ブロフ氏は「涙が出てきた」とおっしゃっていました。まだNHK交響楽団就任前のパーヴォ・ヤルヴィ氏とは2013年ベートーヴェンの「フィデリオ」で共演しましたが、その時もカンマーフィルハーモニー管弦楽団の奏者たちは合唱団を絶賛してくださいました。
近年本学の合唱のレヴェルはどんどん上がっています。今後も先輩たちが築きあげてきた伝統を受け継ぎながら、毎年顔ぶれが変わり、新しいハーモニーが生まれるこの「パート別合唱」を、基礎的な部分からしっかりと指導していきたいと思います。

 


(2019/11/30「合唱合同演奏会」パート別合唱)

 
 

(広報課)

 


▼ 過去の授業紹介シリーズ「合唱」の記事はこちら

 

・第2回 杉野正隆講師

・第3回 伊達英二准教授

・第4回 菅野宏昭講師