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【授業紹介シリーズ「合唱」】 第3回 伊達英二准教授

伊達英二准教授

 

東京音楽大学の合唱の特色と魅力を解き明かすシリーズ。
第3回は声楽の2年生を指導されている伊達英二准教授のインタビューです。2年生からオーケストラと合唱する体験によって、学生たちに声楽以外の音楽を聴く機会をもち、豊かな感性を培ってほしいと語ります。

 
 

私は声楽専攻2年生の合唱授業を担当しています。授業は秋学期に行われる「合唱合同演奏会」を目指して指導しますが、ここ数年は小編成のオーケストラと歌う取り組みをしています。

 

どうしてそういったことを行っているかというと、現代の学生たちを取り巻く音楽環境が理由にあります。

 

私たちが大学生の頃は今とだいぶ状況が違っていました。例えば勉強中にラジオを流せば、ヨーロッパの民謡やクラシック音楽がたくさん流れていて、自然に西洋的なハーモニーに触れる機会がありました。日本古来の音楽には西洋音楽のような和声の概念はありません。 江戸の「木遣り唄」に代表される、ユニゾンの「うた」が日本古来から存在する音楽です。加えて、現代のJポップはアメリカのラップ系の音楽の流れを汲んでいます。そのように今の日本で聴く音楽は、だいたいが言葉を話すことが中心の音楽となりがちで、朗々といい声を響かせたり、多声的なハーモニーを感じる音楽に触れる機会が少ないのです。そうなるとどうしても、アンサンブルのピアノや器楽の演奏に自分の声を溶け込ませるという発想が生まれにくくなりがちです。
結果的に音程や和声的な広がりが感じられない、非音楽的な歌になってしまいます。そこで学生たちに早いうちから、器楽のアンサンブルと歌う経験を積んでほしい、という狙いから続けています。

 

(2019/11/30「合唱合同演奏会」)

 

声楽専攻は3年生からプロのオーケストラと共演することができる「パート別合唱」という授業を履修しますが、ここに至る前に少しでも器楽とのアンサンブルの中で和声を感じる経験をしたほうがいいと思い、2年生から器楽との合唱を行っています。まだ頭の中では曲に対しての分析や理論が追い付いていないかもしれませんが、心の中で素敵な音楽だな、器楽のハーモニーは声楽とこう違うな、というようなことを感じてもらえればと思っています。

 

ほかにも声楽専攻2年生で外国語のミサ曲をやることにしていますが、それは3年生からの「パート別合唱」で役に立つのです。それで声楽専攻1年生は日本語、2年生は外国語をやるというのが定番となっています。合唱の教員たちが連携して、3年生の「パート別合唱」でしっかり歌えるように準備をします。

 

「合唱合同演奏会」で声楽専攻の歌を聴いて、音楽教育やピアノなど他専攻の学生が自分たちも合唱をきちんと学びたい!と思うきっかけになっているようです。

 
声楽専攻の学生たちにはいつも言っていますが、とにかく声楽だけを聴いて声楽だけを練習する視野の狭い演奏者にはならないこと、そのためにはもっとオーケストラや器楽の曲を聴いて、声楽ではありえないくらいの長いフレージングや、複雑なリズム、楽器の倍音や響きの豊かさを感じてほしい。そうして養われた感性は将来自分がソリストとしてオーケストラや器楽をバックに歌った時に必ず役に立つはずです。

 

東京音楽大学は非常に自由で恵まれています。中目黒・代官山キャンパスも開校し、充実した設備で学び、練習をすることができますし、両キャンパス共に立派なホールがあります。ぜひ本学に進学し、伝統の合唱授業を経験してほしいと思います。