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【授業紹介シリーズ「合唱」】 第4回 菅野宏昭講師

 

東京音楽大学の合唱の特色と魅力を解き明かすシリーズ。
第4回は声楽専攻1年生の合唱授業を指導されている菅野宏昭講師に話を伺いました。「音楽大学でより深い合唱芸術を感じとってほしい」先生の熱い思いを聞きました。

 

現在、声楽専攻1年生の合唱授業を担当しています。私の授業では「音楽大学での合唱」というところに重点を置いて指導しています。私の知っている高校までの部活などで行う合唱は、声のトーンやお互いの音量をそろえたり、全体に合わせるというように、平均化するのが大きな目標のように感じます。しかし音楽大学の合唱はこの点が一番異なると考えています。というのは私自身がかつて長年合唱をしていて、周囲とそろえる声で歌っていたことで、声楽家を目指して音楽大学に入るためには勉強をし直さなければならず、苦労したという経験があるからです。

 

音楽大学の合唱の本質は、一人ひとりがソリストとして確固とした声を出し歌うことだと思っています。そうすると個々が違った声を持っていて、そろわないのではないかと思うでしょう。実際はそのような合唱こそが真のアンサンブルなのです。アンサンブルという言葉自体が、フランス語で「異なるものが集まって一体となる様子や調和」を表します。例えば「悲しい」という歌詞に対して、それぞれが別の表現で歌っても不思議と一体となって聴こえる。こういった勉強をする場所が音楽大学なんです。

 

(2019/11/30「合唱合同演奏会」)
 

もちろんひとつの合唱として仕上げるために、共通のことは教えます。喉を開けたり、マスケラと呼ばれる部分に響かせたり、声楽に必要なお腹の支えを鍛えたり、そのような共通事項のもとにそれぞれの豊かな声で自由に響かせてほしいと思っています。

 

授業ではもうひとつ大切なこととして、これから声楽家としてやっていく上での心構えを教えています。私自身授業をしていて感心しますが、東京音楽大学に入って来た学生たちは高い目標をもって入学してきています。そんなエネルギーあふれる学生たちに少しでも役立つことを教えようと常に思っています。

 

私はイタリアで生活をしていましたが、イタリアでは日本との大きな違いを感じました。発声のことやアンサンブルなどの音楽的な相違はもちろん、生活をしていく上での苦労など、教えられることは全部教えたい。学生の中にはアルバイトをしながら懸命に学んでいる学生も少なくありません。それはかつてイタリアで苦労した自分の姿と重なります。私の経験を話すことで、学生たちが必要だと思った知識を自分のものにしてくれることが、教員としての使命だと思っています。

 

そうは言っても合唱授業を一番楽しみにしているのは実は私かもしれません。歌をやりたくて入って来た学生たちの雰囲気は毎年ものすごく楽しいです。ただ楽しむだけではなくて、学生たちは毎回ちゃんと予習をして音をとり、授業後はみんなで歌いながら帰ります。

 

 現在は「合唱合同演奏会」で歌った曲は終わり、学生たちにやりたい曲を提案してもらって、それを練習しています。演奏会でソプラノだった人はアルト、メゾだった人はソプラノ……といったように、パートも変えています。普段とは違うパートを歌うことで、アンサンブルへの理解をもっと深めることが狙いです。

 

高校までの合唱はそろった声で歌いコンクールで入賞するなどの目標があるかもしれませんが、本学の合唱はあくまで個人のキャラクターを削ることなく積極的に歌い感じて、ひとつのものを作り上げていきます。ここでは音楽をめざす人たちが充実して深く学び、楽しい時間が過ごせると思います。みなさんもぜひ一緒に、東京音楽大学で本当の合唱の醍醐味を味わい、一緒に音楽をやりましょう。

 
 
(広報課)


▼ 過去の授業紹介シリーズ「合唱」の記事はこちら

 

・第1回 阿部純准教授

・第2回 杉野正隆講師

・第3回 伊達英二准教授