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【新入生の皆さまへ】野島稔学長からの動画メッセージ

 
〈メッセージ全文〉
 
新入生の皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。東京音楽大学学長の野島稔です。本来であれば、入学式で皆さんのお顔を見ながら直接お祝いを述べるべきだと思います。しかし、今年はこの新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、私たちは皆さんの健康を第一に考えました。大学といたしましても非常に残念でありますけれども、ご理解いただきたいと思います。

 

さて、あらためまして、皆さんの入学を心から歓迎し、東京音楽大学を代表してお祝いのメッセージを届けたいと思います。

 

音楽を志すという点において、まさに私の後輩にあたる皆さまに常に申し上げていること、それは、どんな気持ちで、心構えでこれからの学生生活を送っていただきたいか、この点であります。皆さんも、いよいよこれから人生における大事なあたらしい第一歩を踏み出します。音楽という深く、うつくしい、そして、海のような広大な世界に皆さんはこれから船出をいたします。順調な航海ばかりではないかもしれません。時には悪天候に出会ったりするかもしれない。しかし、たゆまず努力を続けて、粘り強く誠実に追求を続ければ、その過程の中ですでに皆さんは実に多くのものを自分は獲得している、これが実感できると思います。

 

では、皆さんがこれから音楽を学ぶうえで、少し記憶にとどめていただきたいこと、考えてみていただきたいこと、これを述べてみます。よく、「心技体」 ということが言われます。「心」というのは、皆さんの「こころ」、「内面」です。「技」というのは「わざ」、「技術」です。そして「体」というのは、皆さんの「からだ」のことです。私はこの「心技体」という言葉は、音楽芸術というものに非常に当てはまるぴったりした言葉だと思っております。「心」「技」「体」 これのどれかひとつ欠けても十分な音楽の表現には至らない、こういうことが言えると思います。

 

皆さんは今、知性、感性、身体能力、そしてこれをとおしての学習能力、吸収能力、こういったものがまさにピークを迎える時にあります。すぐれた音楽表現というのに欠かせないこれらの要素を一体化して音にする、これを体得するのにまさに最良の時にあります。あえて重ねて申しますけれども、こういう時というのは今をおいて二度はきません。

 

もちろん、人間の精神力、知力、洞察力、こういうものは、本人が非常に多くの努力を重ねて、また人生のさまざまな経験を踏まえて、ほとんど際限なく伸びでいきます。しかし、音楽においては今このことを自覚して体で覚える、自分の体に染み込ませる、そういうことをしておかないと、枝や葉っぱはすくすくと伸びます、しかし実は結ばない、花が咲かない、こういうことにもなりかねません。ですから私は、皆さんのこれからの学生生活が、貪欲に、エネルギッシュに、粘り強く、自分の心そして体に響く音楽、これを自分の体に染み込ませて音にする、そしてそれを人に伝えることができるように技術も磨く「技術の錬磨」、これも忘れずにがんばっていただきたい。

 

繰り返しますが、自分の心と体の両方に響く音楽、これによく耳をすませて、よく自分のことを反芻しながら階段を昇るように一歩一歩、ゆっくりでいいんです。しかし、たゆむことなく、これをよく感じながらこれからの音楽の学びに邁進していただきたい。これを強く願っております。

 

最後になりますが、新入生の皆さんは、今日にでも大学のレッスンや授業を受講したい気持ちでいっぱいであろうと思います。この新型コロナウイルスの感染拡大の情勢につきましては余談を許しませんが、教職員一同、皆さんをキャンパスにお迎えすべく全力を尽くしております。
皆さんの東京音楽大学での生活が生き生きとして、感動やよろこびで鮮やかに彩られていきますことを心より祈っております。

 

東京音楽大学学長 野島 稔