こんにちは!早くも第3回、広報課だより編集部です。東京都の緊急事態宣言が解除されました。まだ通常どおりのキャンパスライフとはいきませんが、少しずつ活動範囲が広がり、大学で学生の皆さんのキラキラした笑顔に出会える日を楽しみにしています。
先日、野島稔学長から在学生の皆さんへのビデオメッセージをお届けしたところ、「ぐっときた」、「学長やわ~」などの心温まるコメントを多数いただきました。配信で名演奏家たちの演奏を聴いた野島先生は、「優れた演奏はどんなツールを介しても人の心に到達するものをもっている」と痛感されたそうです。求心力や好奇心など音楽を学ぶ上で大切なことを語られています。まだの方はぜひ聴いてみてください。
さて、3人目の先輩は、卒業まもなく作編曲家の新星として業界内で注目を集めはじめている和田佳丈さんです。シリーズタイトル「熱いぜ、ザ・東京音大生」からやや隔世の感を禁じ得ないまばゆさを纏う。クールが熱いとも、熱くてクールとも、およそぬるさの対極にあるとでも表現すればいいのか、とにかくかっこいい!、で伝わりますか?一昨年、第55回芸術祭公式テーマソング「BELIEVE」を作詞作曲。『道なき道を歩いてゆこう 心叫ぶ方へ ずっと』と歌ったこの曲は、多くの東京音大生の心に刺さるなにかが到達しました。では、和田さん、よろしくお願いします。
― 大学4年間を振り返って、一番がんばったことを教えてください。
在学中はとにかく誰よりも多く曲を作りました。数だけで言えば間違いなく一番だと自信をもって言えます。出された課題に加えて、日課として一日のできごとを必ず曲に起こしていたので、短い曲を合わせれば年間500~600曲程度作曲していました。
また、バンドやオーケストラを用いた企画を立案したこと、芸術祭のテーマソングの作曲、芸術祭公式ブラスの吹奏楽編曲を担当させてもらったことが特に印象に残っています。今一緒に仕事をしている演奏家の皆さんもそこからのご縁という方が多いです。
▲CROSSOVER CLASSICAL初公演後にて。前列右から3人目が和田さん
― 年間500~600曲!努力の賜物ですね。卒業後、今手がけている仕事を教えてください。
在学中にはじめた歌手やアイドルのサウンドプロデュース業をはじめ、最近では卒業生の方から劇伴やオーケストラ関係のお仕事をいただきながら、個人事業主として音楽に関する事業を営んでいます。私自身、アウトプットするだけではなく、これから身につけたい技術もあるので、なるべく自分からプロの現場をお手伝いさせていただくようにしています。
演奏活動としては、大学の諸活動で学んだ「映像×物語×音楽」の可能性をテーマに、著名なゲストの方とコラボレーションしたオーケストラコンサートを池袋の音楽ホールで7月24日に開催する予定です。
― 在学中にはじめたことを仕事として継続、さらに技術の向上も怠らずに新しい試みも。自ら道を切り拓いているのですね。
自分の限界を決めず、とにかく人と関わることが大切だと思っています。仕事があればいつでもなんでもやる。飲み会に誘われれば多少無理してでも参加して知識や情報を得る。幸いにもチャンスをたくさんいただけた要因は、行動力に尽きると思っています。
― 行動力、これは過去2回に登場した西翔さんと野崎由佳さんも触れていました。大事ですね。壁にぶつかった経験は?
どちらかというと音楽以外のことですね。自分の青写真を形にするためには何をどうすればいいのか試行錯誤しました。
たとえば演奏会を開催するにしても、いろいろな方にきちんと筋をとおす必要があります。演奏会の関係者へもそうですが、協力してくださる先生や場所を貸してくださる職員の方へのお願いなど。そういう経験から交渉術といいますか、「上手くまとめる」という点で少し大人になったと思います。
― なるほど。それも大事ですね。和田さんの心の支えとなる言葉ってなんですか?
「どうでもいいことは流行に従え。重大なことは道徳に従え。芸術のことは自分に従え。」
映画監督・小津安二郎氏の言葉を指揮のレッスン打ち合わせの際に、広上淳一先生からいただき、以降ずっと大切にしています。
音楽を教えていただく先生からこの言葉をいただいたことで、自分の創る音楽に大きな責任を感じました。「よい音楽を創れば誰かがなんとかしてくれる」という考えはなくなり、自分の人生は自分の音楽で切り拓くしかないのだと自覚する契機になった言葉です。
― ぐっときました。ところで、東京音大の強みはなんだと思います?
少し手前味噌になりますが、商業音楽を研究するコースが設立されていることですね。
映画やドラマの音楽、J-Popの世界でもクラシックの楽器奏者の方と関わることが日常茶飯事の時代なので、商業音楽とクラシックのジャンルの垣根を越えてお互いに関係性を築ける環境が整っている部分は非常に魅力的だと感じています。そこが、もっとも秀でている要素のひとつではないでしょうか。
― 「だから君たちは東京音大に来るべきなんだ」と呼びかける指揮・広上淳一先生の言葉が聞こえてきそうです。新1年生のみなさんへメッセージをお願いします!
「音楽家たる前に社会人たれ」〜故・野村克也さんも理念にされていた、”打撃の神様”故・川上哲治氏のお言葉を音楽に置き換えたものですが、まったくそのとおりだと実感しています。
よい音楽を創る能力があるにも関わらず発信する能力に欠け、なかなか注目されない音楽家が溢れていることを危惧しています。「社会に立ち向かうことができる人間力」を総合的に養うことがもっとも重要だと思います。
大学は、普段の生活では本来接点をもたないような環境の人たちと、「学生」という名のもとでつながりをもてる貴重な場所です。なんでもないようなことだと感じる方もいらっしゃると思いますが、これに限らずお金で計ることができない価値がたくさん転がっています。早くそれに気づくことが一流の音楽家に近づく最善の方法だと思います。
― すばらしいメッセージをありがとうございました。しびれました。7月24日の演奏会が楽しみですね。
当日見に来ていただけるだけでももちろんうれしいですが、コンサートのテーマに共感していただければさらにうれしいです。それを機に今後共演させていただける関係性が築けた際には、音楽の新しい可能性を一緒に考えていければ幸いです。
― 希望のカケラ 拾い集めて 進め
I believe♪~「BELIEVE」の歌詞を口ずさみながら、本日はここまで。次回はどの先輩が登場するのでしょうか?どうぞお楽しみに。
(広報課)
* 2020/6/5に内容の一部を修正しました。