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野島稔先生×藤田真央くん 師弟対談

藤田くん
 中学校は課題の多いインターナショナルスクールに通っていたので、勉強とピアノの両立に苦労しました。高校への進学を考える時期に、ピアニストを目指す人生もいいなと思いました。家の中でいつも誰かがピアノを弾いていて、それがぼくにとっての日常で、ピアノを練習して苦しいと思ったことは一度もありません。大学の講義はおもしろくて、休まずに全部出席しています。毎日忙しくてすごく大変ですが、楽しいです。友達と音楽の話ができるのもうれしいですね。

 

野島先生
 藤田くんのご両親には、コンサートの時にお会いしたことがありますが、藤田くんを尊重して暖かく応援してくださるやさしいご両親ですね。学生時代は確かに大変ですが、決定的な意味をもつ時期と言えます。私も若い頃に失敗したりしましたが、その時はわからないもので、あとから振り返ってはじめて大事な決断として見えてくると言いますか。分岐点に立った時に、易きに流れるのではなく、正しい判断ができるように常日頃、自分は何がしたいのかをじっくり考えてほしい。

 

 

藤田くん
 野島先生はぼくにとって雲の上の先生ですから、初めてレッスン室に入る時は、とにかく緊張しました。ノックの仕方、立ち方にもすごく悩みました。頻繁ではない分、先生から評価してくださった言葉は鮮明に覚えています。僕は絵の鑑賞も大好きで、絵の展示会にはすぐに行きます。そこから得たヒントも取り入れながら音楽を高めていけたらと思います。

 

野島先生
 私は安易に人をほめたりしません。自分に対してもそうです。上には上がいる。藤田くんは、今が伸び盛りで、新しいレパートリーを次から次へとこなしていく能力があります。色々なことを栄養として取り入れつつ、一つひとつの演奏を見つめ直してほしいと思います。人間の中のドラマに無関心ではいい演奏はできません。本を読んだり、興味の触手をすり減らすことなくキープしつつ、外に出すことを意識して大きな目的に向かってほしい。藤田くんは吸収力がすごい分、優先順位をつけて、大事なものを見逃さないように。自分が何を求めているのかという意識を常にもつこと。自分を大切にして強くもっている人の方が印象深い演奏ができるように思います。

 

 音楽の世界は内面の世界でもあるので、内面の変化をつかんで、いかに伸ばしていくかというチャレンジ精神をもつのは大事なことだと思います。演奏会での経験なのか、作曲との出会いなのか、藤田くんにはこの数年の間に、必ず変化が生まれると思います。

 

 
 

入学を目指すみなさんへ……野島先生
 マリア カラスさんが学生の頃、自分のレッスンが終わっても帰らないで他の受講生のレッスンを最後まで聴講していました。理由を尋ねられたところ、どんな学生でも1音譜は自分より上手にできると言うんです。大天才の「貪欲さ」を思う時、いつも尊敬の念を抱かずにはいられません。

 

音楽を勉強しつづける人生以上に幸せなことがあるのだろうか。音楽には、色々なことが全部含まれていると思うのです。音楽の中に自分を見つけ、音楽を通じて自分の資質を追及して開花させる。決してやさしくないけれど、すばらしいことだと思います。夢にあふれています。みなさんも興味があればぜひ一緒に勉強しましょう。