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【卒業生インタビューシリーズ第3回】吉田良さん

吉田良さん

宮城県名取市議会議員

(2000年声楽専攻卒業 宮城県仙台南高等学校卒業)

 

本学は、音楽界のみならずさまざまな分野で活躍する人材を輩出しています。今回ご紹介するのは、宮城県名取市(人口約7万9千人)で市議会議員を2期務めている吉田良さん。大学在学中に教育職員免許状を取得して、卒業後に地元に戻り中学・高校の音楽教員として活躍。教員として働く傍ら、いくつかの合唱団にも参加し、それらの活動をとおしてたくさんの方とご縁ができたという。音大卒業という経歴をもつ議員は全国でも珍しい。名取市民合唱祭をはじめて開催するなど、暮らしを豊かにする音楽の力を信じ、積極的に取り組むその活動に注目です。

 

―市議会議員とはどのようなお仕事ですか?

 

宮城県名取市で市議会議員の2期目を務めております。地方議員の一番の仕事は、条例の制定や改廃、予算・決算、財産の取得や処分、特別な人事など、自治体の長による提案に対して質疑を行い、賛否を示します。賛成者が多数とならなければ、その提案は認められないので、非常に大きな権限をもっていると言えます。
また、住民からさまざまな相談を受け、地域課題について調査・研究を行い、執行部に対して課題解消のための具体的な提案を行ったりします。そのほか、積極的に諸団体の活動に参加し、地域の活性化や安全の向上、環境美化などにも取り組むこともあります。任期は4年です。

 

―吉田さんの活動内容を教えてください。

 

音大卒業という経歴をもつ議員は全国でも珍しい存在だと言われます。異色な経歴に対する期待を受けて議席を預かる以上、音楽の演奏を続けているという立場を生かした取組を行いたいと考えております。
平成30年に、市制施行60周年を記念する事業の提案が募集されたのをきっかけに、市内で活動する合唱団やサークルの方たちと力を合わせ、はじめてとなる「名取市民合唱祭」を開催することができました。約270名による合同合唱は、大都市でも滅多に経験できない規模だと思います。あくる令和元年に第2回を開催し、定期的な開催が軌道に乗ったところでしたが、今年は新型コロナウイルス感染症の終息が見通せないため、残念ながら開催を見送ることが決まりました。

 

▲「名取市民合唱祭」で指揮をつとめる吉田さん
 

―音楽と行政を結びつける活動をしようと思ったのはどうしてですか?

 

今の日本の行政の対応は、事務的で冷たいとしばしば批判されます。法律や条例は、従来の取組みとの整合性や費用対効果、利権などばかりが優先され、住民の「幸せ」という肝心な部分があまり顧みられることがなかったのが理由のひとつだと思います。人々に「幸せ」を与えることができる音楽や芸術活動に携わる人材が、政治や行政においてもますます必要とされるのではないかと考えています。ヨーロッパでは、政治家の多くが芸術の知識や経験をもっています。日本でも、そのような議員がひとりでも増えることを期待しています。

 

―音大から議員へ。どのような道のりでしたか?

 

東京音大では声楽を学びつつ、中高の音楽教諭の教員免許を取得しました。卒業後は地元宮城県に戻り、公立や私立の学校で音楽を教えていました。その傍らで、合唱(特に宗教音楽やア・カペラの作品)が好きだったため、いくつかの合唱団の演奏会に歌い手として参加し、ソリストや指揮者としての仕事をいただいておりました。これらの仕事を続けているうちに、たくさんの方とつながることができました。

 
 
―音楽をとおしたご縁が議員という仕事に結びついたのですね。ところで東京音大に入学した理由はなんですか?

 

高校在学中にオープンキャンパスに参加し、個人レッスンなどを受けて、この大学で学びたいという気持ちになりました。当時の池袋は、手に入らないCDや本はないと言われていたほど音楽ショップと書店がたくさんありました。いつでもそのような場所に行けるキャンパスの立地のよさも大きな魅力でした。

 

―大学生活はどうでしたか?

 

大学ではサークルに所属せず、レッスンや授業にまじめに取り組みつつ、より力を入れたのは学外での合唱団の活動でした。バロック音楽を歌う合唱団に参加し、大バッハの「カンタータ」や「ロ短調ミサ」などを演奏しました。バロックの作品を歌う合唱団は地元にはほとんどなかったので、東京に住んでいる間にできる限り演奏の経験をしておきたいと考えていました。
大学の合唱は参加人数が多く、迫力を重視する方針に戸惑いながらも、4年生で最後に「第九」を歌った時には感極まって涙が出てしまいましたね。
また、在学中に心から好きになった女性にアタックしたことも忘れられない思い出です。私の気遣いが足りなかったため振られてしまいましたが(苦笑)

 

―大変充実した大学生活が伺われます。苦労して学んだことはなんですか?

 

どちらかというと内向的な性格だったため、役作りの演技をしなければならないオペラの授業は正直なところ苦手でした。しかし、身体を使っての表現力を身につけることは、その後の人生のさまざまな場面で役に立っていますし、自信の源にもなっていると感じることがしばしばあります。
音楽以外にも、たとえば日本文学や哲学などの授業で得た教養は、その後の進路に直接プラスになることこそないものの、人生を楽しむための糧になっています。

 

―東京音大の魅力はなんだと思いますか?

 

日本の私立音大の中で、もっとも長い歴史をもっていることだと思います。
世界中でたくさんの卒業生が活躍していること、個性豊かな仲間と切磋琢磨できる環境があること、また、多くの実績をもつ指導者に出会えることにかけても、東京音大はトップレベルだと思います。

 

―最後に後輩たちにメッセージをお願いします。

 

SNSなどの発達によって、昔と比べて人間関係が広がりやすくなっていると思います。音楽を鑑賞するにしても発表するにしても、インターネットを使えば無料で世界中とつながることができる。本当にいい時代になったと思います。SNSを使いこなして、人脈をどんどん広げている若者の姿を見るととても立派なものだと感心しています。皆さんも壁を乗り越えて、ご自身の可能性を広げていってくださいね。

 

―お忙しい中貴重なお話をありがとうございました。ご活躍を期待しています。

 

(広報課)