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東京音楽大学吹奏楽アカデミー専攻生と講師による秋学期修了演奏会 レポート

交響曲もポップスも

 

東京音楽大学吹奏楽アカデミー専攻生と講師による 
秋学期修了演奏会

 

2021年12月15日 100周年記念ホール

 

毎年、各学期の終わりに修了演奏会を行っている吹奏楽アカデミー専攻だが、今回の演奏会は一味違った。例年はクラシックを中心にプログラミングするのだが、今回は重厚なクラシックとポップスステージ。

 

第一部のJ.バーンズ『交響曲第3番』は吹奏楽オリジナル曲の大曲だ。第二部のポップスステージでは学生が全曲の指揮を担当。入れ替わり立ち代わりで初のアドリブソロも披露し、会場を大いに盛り上げた。

 

講師陣が学生たちと一緒に演奏するスタイルが本専攻の特長のひとつだが、今回は特別ゲストに世界的なジャズドラマーの阿野次男氏を招聘した。学生たちは普段に増して貴重な学びを得たことだろう。

 
 


 

■出演した学生たちの“激アツ”な感想を紹介します!

サクソフォーン3年/塚田 日南子さん
(指揮とアドリブソロを担当)

 

『なんだこの激アツプログラムは!』
第一部ではバーンズの『交響曲第3番』全楽章、第二部ではゲストの阿野次男さんを迎えての6つのポップス曲。演奏会の曲目を発表された時、私は開いた口が塞がりませんでした。
今回の演奏会は、吹奏楽アカデミー専攻ならではの授業で得た知識を発揮できるものでした。
バーンズの『交響曲第3番』。以前、指揮者の先生方によるZoomでの作品解説の授業でこの曲を学びました。どんな音楽なのか、どんな音で表現すべきなのかをみんなで考えながらできました。
『スウィングしなけりゃ意味がない』のソロでは、星出先生の「ポップス概論」で得たコードやアドリブの知識、天野先生の「吹奏楽作編曲演習」で得た作曲の知識を生かし、自分で考えたソロを吹くことに挑戦しました。
なかなか納得のいくものができず、家のピアノの前で頭を抱える日々でしたが、本番ではしっくりくるものを吹けたと思っています。
『私のお気に入り』では指揮をさせていただきました。下野先生、小林先生、横山先生の「指揮法演習」でいただいたアドヴァイスをもとに、この曲を勉強しました。実際にバンドを目の前にすると思うようにいかないことだらけで、ギリギリまで試行錯誤しました。本番ではうまくいって本当によかったです。
また、吹奏楽アカデミー専攻には演奏会係というものがあり、私もそのメンバーのうちのひとりです。楽器室の方々や先生方と連携し、舞台配置図を作成し実際に舞台設営の監督をしたり、楽器の借用手続きを行ったりなど、演奏会の裏方の仕事をします。
出演者としても裏方としてもがんばった今回の演奏会。私の中でとても思い出深いものとなりました。
来年度からは、4学年そろっての演奏会になります。今より豪華なサウンドになるバンドに、次はどのような激アツプログラムが舞い降りてくるのか。今からとても楽しみです!

フルート2年/伊藤玲央さん
(指揮とアドリブソロを担当)
(写真は伊藤さん提供:ゲストの阿野先生と)

 

東京音楽大学吹奏楽アカデミー専攻『秋学期修了演奏会』おかげさまで楽しく終えることができました。開催のためにご尽力してくださった皆さま、会場にお越しくださいました方々、この場をお借りして御礼申し上げます。
2年生の僕にとって3回目となる演奏会でしたが、前半は交響曲、後半はポップス、という面くらったようなプログラムでした。Drumsの巨匠、阿野先生をお招きしたポップスステージでは『スペイン』(真島俊夫編曲)の指揮に挑戦しました。練習の時から阿野先生・天野先生・星出先生のお三方にもご指導いただき、本物のポップスの音を体験することができました。
『ファンキー・ヘンズ』(星出尚志編曲)ではアドリブのソロも担当させていただきました。こちらも初挑戦でしたので星出先生にアドヴァイスをいただき、本番では初々しさはありましたが、なんとか楽しむことができました。
演奏会までの期間、プロの先生方と演奏したり、指揮の先生方にご指導していただいたり、いろいろな先生方に聴いていただけたり、吹奏楽アカデミーでしか味わえないとても濃い体験ばかりでした。卒業まであと2年しかありません!一つひとつのことを大事に楽しみます!!
ありがとうございました!!

トランペット1年/三瓶亮太さん

 

まず、吹奏楽アカデミー秋学期修了演奏会に来ていただいた皆さま、本当にありがとうございました。今回、私は『スウィングしなけりゃ意味がない』の指揮をやらせていただきました。
バンドを指揮するということははじめてで、練習のときはかなり苦戦しました。本番前もかなり緊張していたのですが、アカデミーの講師の先生や下野先生、同級生や先輩からアドヴァイスや励ましの言葉をいただき、本番はとてもいい演奏ができたのではないかと思います。
このような経験は吹奏楽アカデミーならではのことだと思うので、今後この経験を強みにしていきたいと思います。

打楽器1年/林太一さん

 

今回の終了演奏会をとおして、さまざまなことを体験し学ぶことができました。まず、前半で演奏したバーンズです。私にとってはじめてのバラード曲でしたが、その形式や曲に込められた想いをしっかりと理解して演奏するよう心掛けました。打楽器パートでは久保昌一先生、坂本雄希先生、平子ひさえ先生が一緒に演奏してくださり、毎回の合奏でも大変勉強になりました。
後半のポップスステージではゲストにプロドラマーの阿野次男さんと共演することができ、ポップス曲の乗り方やその面白さを学びました。演奏もとても迫力がありその隣で演奏ができたことは大変貴重なものになりました。
これからもさらに学んでいけるように精進したいです。

 
 


 

■特別ゲスト・阿野次男先生にインタビューしました。

 

― 本専攻の雰囲気はいかがですか?
吹奏楽アカデミー専攻の学生さんは、ふだんクラシックを勉強されていますよね。今回私がゲストで叩くプログラムは、皆さんが今まで勉強してきたクラシックとはまったく違う性質のものですから、最初の合奏では皆さんの戸惑いをよく感じました。まだまだの部分はありますが、呑み込みも早く、がんばって演奏してくれています。

 

― 今回はじめて演奏会にポップスステージが設けられました。クラシックとの違いは?
ポップスやジャズは譜面どおり演奏すればよいというものではなく、それを知らずに譜面の解釈も吹き方も、クラシックと同じ感覚でやってはいけません。一番重要なものはグルーヴです。しかし、それを出すための吹き方を知らないとビートが、グルーヴが出てこない。ここが一番のポイントですね。

 

― 学生たちにアドヴァイスをお願いします。
皆さんは楽器のプレーヤーのみならずさまざまな進路に進まれると思いますが、「また聴きたいな」と思われるようなプレーヤーになってほしいと思います。我われの世界は、演奏が上手いというだけでは通用しません。音楽に限ったことではありませんが、この人はちょっと違うな、という個性はとても大事です。プロとしてやっていきたいなら、ぜひほかの人にはないものを見つけてください。

 
 


 

■作編曲家であり、本専攻でも教鞭を執られている天野先生と星出先生から演奏会の感想を頂戴しました。

 

天野正道客員教授(作曲)

 

2019年4月に誕生した吹奏楽アカデミー専攻、初年度は学生諸君8名のみでしたが、あれから2年8カ月後、今回の秋学期修了演奏会でJ・バーンズの『交響曲第3番』がプログラミングされるとは感無量です。このコロナ禍の最中、ほぼ2年間思うように授業や合奏ができませんでしたが、マエストロ下野をはじめとする吹奏楽アカデミー講師陣の的確な指導の賜物でしょう、今まで聴いたこの作品の演奏の中で、「音楽」がストレートに伝わってくるもっとも感銘度の高い演奏のひとつでした。マエストロ下野のみならず小林恵子、横山奏、両講師による的確なアナリーゼによる指導も演奏クオリティを高めた大きな要因となっているのは間違いありません。
第二部はポップスステージですが、吹奏楽アカデミーのポップスステージです。いわゆるそんじょそこらのナンチャッテJazz・Popsにするわけにはいきません。リズムセクション、特にセットドラムとエレキベースはJazz・Popsの要です。エレキベースは本アカデミー講師の藤井先生がプロとしてクラシックのコントラバスのみならず、Jazz・Popsのエレキベースにも精通しているので大丈夫ですが、セットドラムはやはりプロ中のプロをゲストとしてお招きするのが、学生諸君にとって一番の勉強になるであろう、という結論に達しました。
そこで星出先生や私も常日頃ご一緒している世界的ジャズドラマーの阿野次男氏を招聘。初回レッスン時はこの先大丈夫だろうか、とかなり心配しましたが、レッスンを重ねるごとに学生諸君は「ツボ」を見出しはじめたのでしょう、本番はJazz・Pops系のプロオーケストラにひけをとらない、見事な「シンフォニック・ジャズ&ポップス」がホール一杯に響いていました。
もうひとつ大事なJazz・Popsの要素であるアドリブソロにチャレンジし、見事に演奏した学生も数名いましたが、これは星出先生が担当する「吹奏楽ポップス概論」授業の成果でしょう。また、学生諸君の指揮も的確であり、本アカデミー指揮講師陣および各パート講師陣の指導が見事に花咲いた演奏会だったと痛感した次第です。

星出尚志客員教授(作曲/ポップス)

 

日本の吹奏楽では、クラシックやオリジナル曲とともにポップス曲も多く演奏されるわけですが、ポップスにはポップスの不文律があるにも関わらず、それを学ぶシステムが確立されていないため、演奏会などでも「なんちゃってポップス」と揶揄される、おざなりな演奏がよく見かけられる状況です。東京音大吹奏楽アカデミーでは、そういった部分も体系的に学ぶことができ、今回の演奏会ははじめてその成果をお披露目する機会となりました。
とはいえ、ポップス固有の不文律はフィーリングとして体で覚えるしかないことも多く、特にバンドのほぼ半数を占める1年生は、そのあたりのレクチャーをほとんど受けていない状態からいきなり楽譜を渡されての練習だったので、さぞかし面食らったと思います。
一方、今回の演奏会では、日本を代表するドラマーで、かつ数々のバンドとの共演をされてこられた阿野次男氏をゲストに迎えることで、バンドの未熟な部分を大いにフォローしていただきました。学生にとってもその道のプロと共演できたことは貴重な学びとなったはずです。こうした経験を積み重ねることで、さらにポップスの魅力を引き出せる演奏を心がけたいものです。

 
 


 

■開演前に指揮の下野先生と主任教授の小串先生からコメントをいただきました。

 

下野竜也特任教授(指揮)

 

最初はたった8名でスタートした吹奏楽アカデミー専攻ですが、早いもので3年目となりました。感慨深いものがありますね。
今回の演奏会はアカデミーがはじめて交響曲に、しかも吹奏楽オリジナル曲の大作に挑戦します。後半はポップスステージですが、ポップスというと軽く考えられがちですけど、実はすごく難しいんですね。この先学生たちが指導者となってさまざまな学校に行ったとき、ポップスという分野は必ず演奏されることになります。星出尚志先生、天野正道先生というポップスの大家がいらっしゃるのが本専攻の強み。ぜひ早めに取り上げておきたいと考えていました。
「吹奏楽アカデミー専攻でしか学べないことを具現化していく」ということが私たちの目標です。今回のプログラムは振り幅が広く、学生たちにとってチャレンジングだと思いますが、これをきっかけに、彼らのさらなるステップアップを楽しみに期待しています。

小串俊寿教授

 

このコロナ禍にあって、まずは無事に演奏会を開催することができて本当によかったです。学生たちも心折れることなくがんばりました。練習は裏切りません。地道な練習の積み重ねと、マエストロ・下野竜也先生のお導きがありここまで来ることができました。皆楽しく元気に学んでくれていて、いい雰囲気、いい形になってきています。
本日は来場者の皆さまに、吹奏楽アカデミー専攻らしいプログラムをお楽しみいただければと思います。

 

 
 

(広報課)