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【卒業生インタビューシリーズ~TCMの先輩たちの今】第12回 池田理代子さん

池田 理代子さん
  
漫画家・声楽家
『ベルサイユのばら』『オルフェウスの窓』など
 
声楽専攻 1999年大学卒業
都立白鷗高等学校卒業

  

『ベルサイユのばら』の著者、池田理代子さんは47歳で東京音大の声楽専攻に入学。音大に入りたいという幼いころからもち続けた夢を叶え、今も現役で舞台に立つ。

 
 
― すごく遡りますが…小さい頃は何にご興味をもたれていましたか。
 

文学、音楽など、芸術関係に興味がありました。漫画は趣味で描いていて、趣味が仕事になりました。

 

― 小さい頃から漫画を描いていたのですか?
 

漫画というより、いたずら書きのようなものをしていました。6歳からピアノをはじめましたので、漫画よりもピアノの方が先です。幼少期から音楽が好きで、高校はブラスバンドでトランペットを吹いていましたし、音大に行こうと思い勉強をしたこともあります。でも、自分に才能はないと思い、東京教育大学(現:筑波大学)へ進学し哲学を学びました。
漫画を本格的に描きはじめたのもこのころで、当時、学生運動の時代です。通っていた大学も封鎖され、中に入れない状態だったので時間だけはたくさんありました。学生運動をしながら親のすねをかじるのはと思い、家出をして、生活のためにいろんな仕事をしていました。人前に出るのはあまり好きではなく、結局閉じこもって漫画を描いているのが一番性に合っており、それで漫画家になりました。

 

- 漫画を描いているときが一番満たされるのですか?
 

そんなことはありません(笑)。音大にすごく行きたかったです。

 

― 音大に進もうと決心したきっかけはなんだったのでしょう。

 

漫画家になった頃はもうピアノはやめていましたが、音楽が好きという気持ちは消えず、“死ぬまでに音大に入りたい”という夢はずっともち続けていました。もちろん、『ベルサイユのばら』を描いているときも音楽からは離れられませんでした。45歳の頃、これ以上はもう間に合わなくなると思い、受験を決心しました。仕事と両立しながらの受験だったので焦りはありましたが、2年間勉強をし、47歳で入学しました。

 

― 念願の音大だったのですね。学生時代の思い出を教えてください。

 

たくさんありますが、ひたすら音楽に浸っていられることがとても幸せでした。趣味ではなく、“音大生として勉強している”という思いはすごくうれしいものがありました。周りのみんなも年齢の差を感じさせないで、普通に接してくれたのがうれしかったですね。いろいろな友人ができ、授業や合唱などを一緒に学びました。

 

― 現在も音楽活動を積極的に行っていますよね。

 

今月で75歳になりますが(2022年12月時点)、オペラ歌手としての現役をやめようかなと考える歳なんです。ですが、オペラは無理だけれど、きちんと何年も続けていれば、歌は歌い続けられると思います。人間の声帯は、それを支える筋肉の鍛錬だと思うので、大きな声は出ないかもしれないけれど、正しい発声はいくつになっても追求できると思います。先輩に、そろそろ辞めようと思うと話すと、その年齢なりの合っている歌は必ずあるから、と言ってくれます。プラシド・ドミンゴ氏(スペインのオペラ歌手・指揮者・芸劇監督)と対談したときも、「あなたは遅くはじめたから遅くまで続けられる」と言ってくださり、その言葉が今も励みになっています。

 

▲長いアリアを歌い終えて

 

― ぜひ若い人たちへメッセージをお願いします。

 

若い頃からスマホに馴染んでいる世代と、スマホが全く無かった世代とでは、断絶があると思いますので、とても何か言えたことではないけれど、一度、スマホから目を離して本物の現実を見てほしい。心に触れて、心を揺さぶるものがアートになると私は思います。そういうものを、日々見つけないといけない。そのためにも生の音を聴いて、直接見に行ったほうがよいと思います。
今、もし目指している夢があるのなら、叶えられるときに叶えること。時間やお金などいろいろな意味で、夢を叶えられるチャンスというのは人生そうありません。結果音楽家になれなくても、決して後悔はしませんから。

 

 

(広報課)