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【コンクール受賞者インタビューシリーズ】第2回 嘉屋翔太さん

嘉屋翔太さん

(ピアノ演奏家コース・エクセレンス1年、開成高等学校卒業)

第43回ピティナ・ピアノコンペティションPre特級 金賞

 

第43回ピティナ・ピアノコンペティションPre特級が今年から新設されました。特級に次ぐ級で初の金賞を受賞したのは本学ピアノ演奏家コース・エクセレンス1年に在籍の嘉屋翔太さん。お話を伺いました。

 
 
― 壁に向かってお辞儀をしたはじめてのコンクール
 
PTNAのコンペティションにはじめてチャレンジしたのは4歳の時。当時は鍵盤に対して180度逆の方向にお辞儀するものと思い込んでいたので、壁に向かっていることに違和感をもちながらも、壁に向かってお辞儀したのが僕のコンクールのはじまりです。それ以降はいくつかの級に数回挑戦しましたが、中学まではあまり好ましい結果を出せませんでした。
武田真理先生に習いはじめてから演奏スキルがだんだん向上してきて、2017年、高校2年の時にG級で銀賞をいただきました。今回は、先生のアドヴァイスもあって新設されたPre特級に挑みました。

 
 
― ぴったり3週間しかなかった練習期間
 
予選突破できると正直思っていなかったのと、8月1日の東京文化会館で行われた大学主催のピアノ演奏会の練習に没頭していたので、気づけば練習時間は本番までぴったり3週間しかありませんでした。
譜読みは得意なほうですが、3週間はさすがにきつくて、大慌てで課題曲のプロコフィエフの8番ソナタに取り掛かかりました。武田真理先生、石井克典先生には集中的にご指導をいただきました。
本番で止まらずに最後まで弾けて安堵して、武田先生に無事演奏できたことを報告したところ、「驚異的ね」と言われました。

 


▲表彰式 写真提供 全日本ピアノ指導者協会

 


▲表彰式 写真提供 全日本ピアノ指導者協会

 
 
― 武田真理先生に習いはじめてから、音楽観が大きく変わった
 
武田先生に習い始めたのは中学2年の時で、自我が芽生えはじめた頃でした。武田先生にご指導いただいて、僕の中の音楽観は大きく変わりました。僕自身がもっている曲のイメージを尊重しながら、「こうしなさい」ではなくて「あなたがこう弾きたいならこういう風にアプローチしたらどう?」という指導。それもひととおりではなく、なんとおりもの解釈、可能性があることを教示してくださるのです。
あらためて音楽が楽しいと心から感じられるようになりました。
 
先生が譜面に書きこむコメントに否定的な言葉がないんです。譜読みで立ち上がった僕のイメージを核にして、変なところは直してもらい、もっと効果的に表現できるところは効果的に肉付けしていくことを繰り返していきます。
押さえつけられることがないので、心の中から湧き出る意欲や気づきがどんどん引き出されていったのだと思います。

 
 
― コンクールがあることによって自分の演奏を高められることに、大きな意味を感じています
 
今年7月、ベートーヴェンを弾いていた時にそれまであまり気にしていなかった、一音一音の重みを見出せるようになりました。譜読みで大概の音階が弾けて運指が見えるのですが、指が回って簡単に弾けてしまうことに問題を感じたのです。質が下がる演奏になってしまう怖さというのでしょうか。それから演奏に対する意識が変わりました。
今回の課題曲では、一音一音に込められた作曲家の意思を考えながら取り組むようにしました。時間があまりなかったので、なるべく通し練習をしないで弾けていない部分を中心に練習しました。ちょっとでも頭で想像できないことは体が動いてくれないので、ピアノがない環境下でも常に頭の中で運指をイメージして自分を試しつづけました。
本学講師の古屋晋一先生の脳科学の本を読んで、本番前はポジティブシンキングの考え方も取り入れました。それでもまだ、課題曲のプロコフィエフはもっと突き詰めたい部分がありました。賞をいただきましたがその感触は変わっていません。

 

コンクールの結果は運にも左右されるのですが、本番を意識して練習できることや周りから見られている認識をもつことで自分の演奏を高められることに大きな意味を感じています。来年はピティナ特級、2、3年の内に国際コンクールにも挑戦したいと考えています。

 
 
― ハイレベルな世界を目指すため、一音一音、一日一日を大切にしていきたい
 
東京音楽大学に入って半年経ちますが、これまで以上に楽しい日々を送っています。先生方と密にコンタクトが取れる安心感、気軽に音楽の会話ができる環境、プロフェッショナルな他専攻の学生とも活発な意見交換ができることに加えて、校舎もきれいでとても満足しています。
今年はレパートリー拡充の年と考えています。ベートーヴェン、ショパン、プロコフィエフ、ベルクなど、試験曲以外にも気になる曲はなんでも積極的に取り組むようにしています。

 

藤田真央さんが先輩として身近にいることは大変刺激になります。僕は指揮や作曲にも随分意識が向いていて、自分なりのアプローチの仕方があると考えています。すばらしいピアニストたちを見て、自分の中でどれくらい同じ要素をもっているのかも気になります。
自分にできる多面的な視点をもってハイレベルな世界を目指して探求していきたい。そのためには、一音一音、一日一日をよりよく大切にしていきたいと思います。

 
(広報課)