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【在学生インタビューシリーズ】第3回 荒木匠登さん

荒木匠登さん

(チェロ4年 渋谷教育学園幕張高等学校卒業)

第56回芸術祭有志企画「導かれし管弦楽団」発起人

 

第56回芸術祭の数ある有志企画の中で、特大教室からお客さまがあふれ出てしまうほどのプログラムがありました。『ドラゴンクエストⅣ』のゲーム音楽11曲をフルオーケストラで演奏するというもの。会場が熱気に包まれる中、1時間半のプログラムがあっという間に終了。この企画の発起人は、チェロ4年の荒木匠登さん。「大好きなゲーム音楽をいつかオーケストラで演奏したい」。『夢物語』に思えたことが大学最後の芸術祭で現実となりました。

 

■『夢物語』を実現するためのハードルを乗り越えて

 

指揮専攻で学ぶ栗原翼さんと1年生の時に「指揮合同レッスン」で知り合ってから、学食で会うといろんな話をするように。2人ともドラゴンクエストが大好きだとわかり、ゲーム音楽をオーケストラでいつかやりたいね、と夢物語のように語っていました。ゲーム音楽は著作権の関係で公の場で上演するのが難しい面もあって、やるなら4年生の今年の芸術祭しかない!と決心しました。でも、実際はじめるとなると大変な困難が伴いました。
まずは楽譜の準備。ゲーム音楽でオーケストラを想定して作られたのはドラゴンクエストくらいだと思いますが、市販されているスコアがひとつあるくらいでパート譜がないんです。まず楽譜問題を解決しないといけません。作曲「映画・放送音楽コース」の友人にお願いして、11曲約30パートある楽譜を打ち込んでもらいました。
それから奏者集め。公式企画のプレミアムオーケストラとメンバーが多数重なっていたため、演奏時間が重ならないようにするのが開催するための絶対条件でした。僕は1、2年次に芸術祭でコンサート部署の実行委員をやっていて、今年の芸術祭実行委員会コンサート部署プレミアムオーケストラ代表の坂本悠靖さんは、その時の後輩でした。そのつながりがあって、実行委員のみなさんと話し合って、時間調整に協力してもらいました。奏者集めは、主に管楽器は栗原さん、弦楽器は僕とコンサートミストレスの松川葉月さんがそれぞれ知り合いに声をかけていきました。機会さえあればオーケストラで演奏したい人ばかりなので、あまり苦労せずに65名の仲間を集めることができました。
奏者全員分の楽器リスト作りから、実際の楽器の借用申請の手続きや練習室予約なども僕の仕事でした。大変でしたが、実行委員時代のノウハウがあったので無事やり遂げることができました。芸術祭実行委員としての経験と人とのつながりがあったからこそ、みんなで支え合って実現できた企画だったと思います。

 

当日の感想は、楽しかった!の一言。個人的なつながりで声かけやチラシで事前呼び込みをして、「ドラクエ」というネームバリューでお客さまがたくさん来てくれることを予想していましたが、蓋を開けてみると、会場に入り切らないほどのお客さまが来てくれて、本当にうれしかった。指揮の栗原さんは1時間半ぶっ通しで指揮をして、汗だくになって、これまでで一番疲れたと言っていました。メンバーが「ドラクエ好き」なのが奏者同士にあって、雰囲気がとてもよかったです。

 

■ たかがゲーム音楽ではないんです

 

ゲーム音楽というのは、ドラゴンクエストの作曲者、すぎやまこういちさんによれば、ゲームをやっていたその頃の自分を思い出させる「タイムマシーン」のようなものだそうです。ドラゴンクエストは30年くらいの歴史があって、子どもの頃にやっていたゲームを自分の子どもと一緒に当時の音楽でプレイするわけなので、世代を超えて愛される曲。たかがゲーム音楽ではないんです。
僕は、音大で4年間学んできて、若い人にはもっとクラシック音楽を聴いてほしいし、年配の方々にも若者が聴いている曲を聴いてほしい、垣根をなくしたいというのが一番強く思っていることです。ドラゴンクエストのオーケストラをやることによって、聴きに来てくれた人たちがそれをきっかけに、クラシック音楽も聴いてくれたらいいなと考えていました。実際に聴きに来てくれた友人が、オーケストラの生演奏を今回初めて聴いて興味をもち、お勧めのクラシック音楽を教えてほしいと連絡をくれて、ドラゴンクエストの曲と似ているところがあるチャイコフスキーとショスタコーヴィチを勧めました。
チャイコフスキー、ドヴォルザーク、ハイドン…クラシック音楽も当時の人からしてみれば一番新しい音楽、今を生きる私たちにとっての現代音楽のようなもの。世代、ジャンルを越えて、いろんな音楽があることに興味をもってもらえるよう、いろんなメディアをとおして発信していきたいなと思います。
ドラゴンクエストというゲームは、最初に設定された目標があって、はじめは自分だけでは絶対に達成できないレベルなのですが、道具や仲間を手に入れて強くなっていき、最終的にその目標を達成していくストーリー。夢物語に思えたものが、仲間が集まって形作られていく。誰でも主人公になれるんです。なんだか今回のオーケストラと重なりませんか(笑)。奏者のみなさんには、「またやろう!」と伝えたいです。映画音楽、ゲーム音楽、クラシック音楽をひとつのステージで演奏する企画なども今後考えていきたいなと思っています。

 

■ 音楽大学への進学を選んだ僕の選択は間違いではなかった

 

僕の両親は教師で、二人とも趣味で打楽器を演奏します。その影響を受けて、兄も僕も幼少の頃からチェロを弾いています。中高一貫の進学校に進学して、いろいろやりたいこともあったのですが、明確な答えを出せずにいました。中学2年で受けた日本クラシックコンクールでの受賞がきっかけで、5歳から続けてきたチェロをもっと究めたいと思うように。高校2年の時に音大受験を決意して、そこからピアノとソルフェージュを習いはじめました。
東京音楽大学には作曲「映画・放送音楽コース」があって、クラシック音楽のみならずポップス系も専門的に習える大学というところに惹かれました。受験講習会で受けた苅田雅治先生のレッスンもおもしろくて、先生につきたいと思ったのも進学を決めた理由のひとつでした。
東京音楽大学の学生は、みんなやりたいことがはっきりしています。バッハのような古典を究めたい人、現代音楽を究めたい人、僕みたいにゲーム音楽とクラシック音楽を結び付けたい人。みんな自分なりの視点をもっている人ばかり。やりたい気持ちがあれば、「じゃ、みんなでやっちゃおう」みたいな雰囲気がある。一生できないかもしれないと思った企画が実現できたこと、一生続くだろう友人と出会えたことがなによりうれしいです。やりたいこともより明確になってきました。この大学に決めたあの時の僕の選択は間違いではなかったと思います。

 

大学4年間は思う以上にあっという間です。受験して入学したらゴールと思う人も多いと思いますが、決してそうではありません。大学時代は今まで以上にアンテナを高くして、音楽をはじめ、芸術やスポーツ、読書などからさまざまなことを吸収していく時間です。音楽を起点にして音楽以外のやりたいことが見つかるかもしれない。これからの入学を考えているみなさんには、なんでもかんでもどん欲に吸収していく4年間を送ってほしいと思います。
 

(指揮棒の代わりに使用したドラクエの剣はお母さまの所持品。お父さま からのプレゼントでゲームセンターでの戦利品だとか)

 

(「導かれし管弦楽団」の奏者のみなさん。芸術祭での演奏を終えて)
 
 

<広報課のつぶやき>
時々奏者とアイコンタクトでニコッとするコンサートミストレスの松川さんの笑顔が印象的でした。みんなにそれぞれドラゴンクエストの音楽の中に好きな曲とか強い思い入れ、いわゆる「ツボ」のような箇所があるのでしょう。奏者たちの笑顔からそれが伝わってきて、見ているほうも笑顔になるすばらしいコンサートだったと思います。
「とにかくやりたかった!」という荒木くん。今まさに夢を叶えようとしている学生のみなさんも、やりたいことにどんどん挑んでみてほしいと思います。