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【在学生インタビューシリーズ】第6回 栗原邦夫さん

栗原邦夫さん

(「ガムラン演奏実技」聴講生)

 

ガムランは「電車ごっこ」
人に頼っていい、いや頼らなければやっていけない
人間社会の縮図です

 

~ガムランとの出会い、社会人講座から聴講生へ~

 

■ まず津軽三味線

 

 中学生の時にイエロー・マジック・オーケストラが大ブームとなりました。そのYMOのメンバーが雑誌などで、民族音楽について多く語っていました。その影響を受け、津軽三味線や沖縄の三(さん)線(しん)、ガムラン音楽に興味を持ち、LPレコードを取り寄せ聞いていました。そうした音楽に対する思いを秘めたままウン十年。今から10年以上前のこと、あるきっかけで津軽三味線を習い始めました。実はこの津軽三味線からガムランへ道がつながったのです。

 

■ ガムランへの道

 

 津軽三味線の仲間と、おさらい会の打上げをしている時でした。そのお店の学生アルバイトの方が、座敷に置いてあった楽器ケースを見て「変わってますね、何の楽器ですか」と声をかけてくれました。そこで、YMOからはじまり、津軽三味線、三(さん)線(しん)やガムランのことまで話が進むと「ガムラン?確か私の友人がガムランをやっていて・・・」そのアルバイトの方は東京音楽大学のトロンボーンの学生だったのです。
 2000年にインドネシアに行って体験レッスンを受けたりしましたが、当時まさか日本でガムランが習えるなんて思いもよりません。「お願いだから、先生を紹介して」と頼み込んだところ、その学生が、東京音大にはガムランの社会人講座があることを調べてくれたのです。夏のことで、次年開講の4月まで待てません。そこで11月からはじまる6回の民族楽器入門講座「のどうた(ホーメイ)」を夫婦で受けることにしました。そして年が変わって4月、晴れて社会人講座「ガムラン講座 合奏コース」に入講したのです。約6年前のことです。

 

■ さらに聴講生へ

 

 社会人講座を受講して5年、さらに深くガムランを勉強したくて、聴講生となりました。ガムランには、年に何回か学生が演奏する機会があるのですが、学生ではない社会人受講生はその舞台に乗ることはできません。それならば聴講生になってしまおうというのも理由のひとつでした。音楽の知識や技術は中学高校生レベルの私が「音楽大学の聴講生」などというのは、夢のまた夢、思ってもみないことでした。
 実は社会人講座も続けながらの聴講生です。毎週木曜日の2時から3時半が社会人講座、続けて3時50分から5時20分まで大学の授業を受けています。今年度から「ガムラン実習」が選択科目として単位認定されたこと、また2年生からは中目黒・代官山キャンパスがメインになるため、池袋キャンパスの1年生の受講生は増えたようです。しかし聴講生は私1人、しかもガムランでは初めての聴講生だそうです。

 

■ ガムランの魅力

 

 本来ガムランには楽譜がないのですが、ここ数十年で楽譜化する動きが広まったそうです。東京音大では、楽器の鍵盤にあたる部分に数字のシールが貼られていて、楽譜にはたとえば「5 2 5 3」などと記されているので、その順にたたけばいいのです。
初級者もこの基本が分かっていれば、どんな日本のトッププロの演奏家ともアンサンブルをすることができます。逆に私が、まったくガムラン演奏をしたことのない友人たちを呼んできても、その人が数字さえ読めれば、ちょっと教えて一緒に演奏することもできます。
 ガムランのおもしろいところは、オーケストラなどではちょっと考えられないかもしれませんが、曲や、その日によって、演奏する楽器を交代すること。これまでに10個くらいの楽器を経験しました。
楽器の練習も民族音楽研究所でできます。個人でやる場合もあるし、本番前などは学生に声をかけて、手伝ってもらって4~5人でやることもあります。
 ガムランは、たとえば10の楽器を10人のプレイヤーで演奏するときに、ある楽器はほかの楽器を頼りにするということがあります。同じフレーズを何度も繰り返すという特徴があるので、どこにいるのかがわからなくなることもよく起こります。ですがもし自分が分からなくなっても、別の楽器を頼りにすることで、自分は今ここにいるはずだということがわかるのです。先生はそれを「電車ごっこ」とたとえています。演奏者が互いにみんなつかまりあっているわけです。たとえば私は50代、そして学生は20歳前後、そんなみんなが年齢の差を越えて、一緒になって時にはつかまり、時にはつかまられ、誰かを頼りにしてやっていく、これは人間社会の縮図そのものではないかと思ったりもします。そのような場所が、便利な都心、池袋の東京音楽大学の中にある、これはものすごくうれしいし、多くの人にも体験してほしいです。現在日本では精神的に追い詰められている人が少なくないです。おおげさかもしれませんが、そうした人たちがガムランを体験して「自分はひとりなんかではないんだなぁ」と感じてほしいと思います。「頼ってはいけない、ひとりで強く生きていくことが正しい」と考える人もいるかもしれません。でもガムランをやると「人に頼っていい、いや頼らなければやっていけない」ということを実感できます。私なら三回りも年下の学生に頼って、学生から見れば親よりも年上に頼る・・・こういうことが体験できるというのはすごいと思います。

 

■ ガムランの副産物『オンカク』

 

 私が税理士だということが学生たちに知れてくると、ギャラの源泉所得税徴収とか、いろいろな税務相談を受けるようになりました。私は中小企業の経営コンサルもしていますので、経営者に対するメンタル面などのアドヴァイスをすることも多く、社長でも、学生でも、不安・悩みなどは一緒だと感じました。そんなことがきっかけで音大の学生、卒業生向けに税金相談や経営などの不安に対するカウンセリングも兼ねた講習会をはじめました。何回かやっているうちに、評判を聞きつけた出版社の方が講習会に来られ「本にしませんか」と提案してくださりました。そして『音楽家、指導者、フリーランスのための確定申告・税金ガイド オンカク』という本を昨年12月音楽之友社より出版しました。『オンカク』は、もともとガムランの学生たちと一緒に「音大生のための確定申告講座」としてスタートさせた時の略称です。おかげさまで好評で、これもガムランをとおした、学生のみなさんとの交流により生まれた“うれしい副産物”だと思っています。

 

■ さらなるチャレンジ「指揮研修講座」

 

 「ジュンク堂書店池袋本店×東京音楽大学指揮専攻 共同企画」で、ガムランの演奏会をやったことがきっかけで、作曲指揮専攻(指揮)の方々と親しくなりました。そしてそれが縁で、昔からファンでもあった広上淳一先生に『オンカク』の本を贈呈する機会に恵まれました。学食で直接お渡ししたのですが、その時に4月に開講する社会人講座「指揮研修講座」にとお誘いをいただきました。「東京音大は、私のような音楽経験がないに等しい社会人に対して、門戸を広げてくれているところなんだ!」と、もうやる気満々です。これまでやってきたおかげで、これからもやろうとしている世界がさらに広がるのではないかとも思っています。自分自身、ものすごく期待しています。

 


(付属民族音楽研究所での練習風景)

 
 

(広報課)


社会人講座

 

≫ 東京音楽大学付属民族音楽研究所 公式HPはこちら
http://www.minken1975.com/

 


(『ガムラン講座 発表会』(2019/3/2)東京音楽大学 J館スタジオ)