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【新卒業生から新1年生へ ~熱いぜ、ザ・東京音大生~】第2回 野崎由佳さん

野崎由佳さん(クラリネット)

新卒業生から新1年生諸君へ

 

~熱いぜ、ザ・東京音大生~

 
新1年生のみなさんをはじめ、この企画を楽しみにしてくださっているみなさん、こんにちは!広報課だより編集部です。熱い反響(ありがとうございます)にお応えして、さっそく第2回です。ここで突然ですが、先輩たちの話を聞いていると、かの国民的歌手・西城秀樹さんの「ヤングマン Y.M.C.A」が頭のなかで鳴り響くようになってきました。歌詞の『すばらしい Y.M.C.A♪』を『すばらしい 東.京.音.大♪』(または『すばらしい T.C.M♪』)に置き替えて歌ってみると、本学のために作詞されたのではないかとさえ思えてきます。みなさんもよかったら東京音大に想いを馳せながら、ぜひ聴いてみてください。

 

さて、前置きはこれくらいにして、先輩メッセージへまいりましょう。今回は、クラリネット奏者の野崎由佳さんです。西翔さんからのご推薦とお伝えしたところ、「なにかの間違いではありませんか?」と最初謙遜していた野崎さんですが、余すことなく語ってもらいましょう。では、野崎さん、よろしくお願いします。

 

 

第2回 野崎由佳さん(クラリネット)

【卒業後の進路】

クラリネット奏者(フリーランス)

「コハーン・メソッド」音楽教育プログラム運営・指導

【出身高校】

千葉市立稲毛高等学校

 

― 野崎さんはクラリネットの専攻ですが、演奏会の司会も務めるなど、いろんなことに意欲的だったと聞いています。4年間の学校生活のなかでがんばったこと、チャレンジしたことをいろいろ教えてください。 

 

ブラス授業*のサブインスペクター、学生自治会のクラブ連盟と卒業記念事業対策実行委員、芸術祭の模擬店店長など、授業やレッスンのほかにも本当に多くの経験をさせていただきました。思えばいつも目の前にあることに必死でした。

(*ブラス授業とは、Bブラス(1・2年生)とAブラス(3・4年生)のことで、それぞれで数名がインスペクターやサブインスペクターに選ばれます。毎年行われるシンフォニック ウインド アンサンブル定期演奏会はブラス授業の集大成を披露する迫力満点な演奏会です)

 

「学生主体で学校を盛り上げる」というのが東京音大の魅力のひとつですが、いろいろなイベントに関わる仕事をしているうちに、どのようにすれば皆さんに楽しんでいただけるかを日頃から考えるようになりました。
たとえば、各楽器で行う学外演奏会では、専攻楽器の魅力をより深く知ることはもちろんのこと、コンサートのコンセプト決めから、選曲、フライヤーの作成など、演奏会全体の運営も学生が行います。このように演奏会の企画・運営をとおして、社会に出た時にも役立つ、さまざまな知識と能力が身についたと思います。

 

 

演奏会以外にも、1年生の時にクラリネット科の同期と出場した芸術祭の仮装大会で踊り狂った記憶もいまだに鮮明です。優勝を逃した悔しさが今でも胸に残っているくらい楽しくて一所懸命でした。
この先の人生で二度と経験することがないであろうことに夢中になり、そこで殻を破ることができたから今の私がいるのだと思います。

 

― 早くも燃えてきました。殻を破ることが大事なんですね。苦労して学んだことはありますか?

 

「練習と授業の両立」には苦労しました。
1・2年生の時は特に座学の授業も多く、(クラリネットパートは)1年生からBブラスとAブラスの両方に乗らせていただていたこともあって、レッスンの曲や授業で取り組む曲、コンサートで演奏する曲など、毎日譜読みと練習にひたすら追われていた記憶があります。周りのレベルも高く、ついていくことに必死でした。
3・4年生になってから授業数は減りましたが、就職活動や教育実習など、また違う面で忙しく、両立の難しさを感じていました。手を抜こうと思えばいくらでもラクすることができましたが、もっと良い音楽をつくりたい、もっと上手になりたいという欲が常に出てきて…「音大生の性(さが)」かなと思います。中途半端にしたくないゆえの忙しさと苦労、毎日充実していました。

 

― 「音大生の性」! なんでも突き詰めていく姿勢が新たな可能性を拓く、そんな気がします。野崎さんは在学中にアナウンススクールにも通って、4年生の時には中目黒・代官山キャンパス開校を祝う特別演奏会で司会を務めましたね。卒業後は司会の仕事に就くという話もあったとか。

 

はい、卒業直前まで就職をする予定でした。入学後に経験したコンサートでの司会がきっかけで、司会業に大きな魅力を感じ、2年生の冬からアナウンススクールに通って準備をしていました。司会業ができる会社から内定もいただいていたのですが、悩み抜いた末、音楽活動を続ける今の道に進むことにしました。
心境の変化があったのは、「人前で演奏をする最後のステージだ」と意を決して臨んだ12月の卒業試験を終えた時。一度終わりを覚悟して演奏をすると自分の本当の気持ちが見えてきて、「もっと音楽を追求していきたい」という思いが沸き上がってきたんです。
就職はせずに、フリーランスのクラリネット奏者としての道を選びました。
演奏活動をしながら、師匠のコハーン イシュトヴァーン先生と「コハーン・メソッド」という音楽教育プロジェクトを立ち上げて、YouTube等での配信、レッスンを行っています。4月からはじめて、まだまだこれからです。

 

 

― 「コハーン・メソッド」ですか。興味をそそられます。コハーン先生からどんな指導を受けていましたか?

 

「自分自身が音楽を楽しみ、お客様にそれを感じ取ってもらうことを大切にしなさい」と先生に4年間言われてきました。とてもシンプルに聞こえますが、実際にはとても難しいことだと感じています。ステージに立つといつも以上にがんばりすぎたり、自分をよく見せようとしたり、余計なことを考えてしまいがちです。でもそれって自分のエゴでしかなくて…。
作曲者の意図を汲み取り、楽曲のもつ本来の美しさを感じ取って、その美しさを表現できるように技術を磨く。見えないところで努力を重ねて、最終的には純粋な心で音楽がもつものを楽しみ、聴いてくださる方と心でそれを共有する。コハーン先生は、音楽を心から「楽しむ」に至るまでに、不断の努力をされている方なので、よりずっしりと胸にささります。何か迷いがある時は、いつもこの言葉の意味を振り返るようにしています。

 

― 深いですね。東京音大の魅力はなんだと思いますか?

 

アットホームな空気感があって、「人とのつながり」を大切にしていることではないでしょうか。人数が多いわけではないので、学生同士はもちろんのこと、教職員の方々、卒業生、地域の方々まで、どのつながりを切り取ってみても温かく、いい関係を築けていたように感じます。
「毎日通いたい!」と思わせてくれる大学でした。音大生って、けっして楽しいことだけではない練習を乗り越えなくてはいけなかったり、日々いろいろなプレッシャーを抱えて人一倍悩む場面が多いと思うんです。そのような時、温かい人とのつながりや支えを感じられるこの大学なら、仲間と切磋琢磨しながら目標に向かってより一層努力を重ねられるのではないかと思います。

 

― 母校愛を感じますね。胸が熱くなってきました。新1年生のみなさんへメッセージをお願いします。

 

・音楽でつながった人脈を大切にすること
・恵まれた環境を活かしてたくさん練習すること
・学生のうちにしかできないこともいっぱい楽しむこと
・目の前にあることを、損得ではなく、まず全力でやってみること
・視野を広げ、音楽の世界だけではなく社会全体にも目を向けること

 

これは、あくまでも私自身が心がけてきたことです。悩むことも、逃げ出したくなるようなこともたくさん待っていると思いますが、そんな時は周りにいる人に助けてもらいながら、ぜひ毎日を充実したものにしてほしいと思います。
私自身の経験からですが、新入生の皆さんにお伝えしたいのは、紆余曲折することは決して悪いことではないということです。迷いに迷ってください!音楽大学だからといって、全員がプロの音楽家になるわけではありません。自分が少しでも興味をもったことにはどんどん挑戦して、追求していけば、自分らしく輝けるものがきっと見つかると思います。
4年間はあっという間に過ぎてしまうので、時間を無駄にせず行動あるのみです!

 

 

― 溢れんばかりの熱いメッセージをありがとうございました。「若いうちはやりたいこと何でもできるさ、ヤングマン♪」ですね。

 

次回は野崎さん推薦のあの先輩です。どうぞお楽しみに。

 

(広報課)