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【コンクール受賞者インタビューシリーズ】第19回 佐川和冴さん

佐川 和冴さん

(大学院修士課程1年 東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒業 東京音楽大学付属高等学校卒業)

第90回日本音楽コンクール ピアノ部門第2位

 

~音楽を心から楽しみながら弾くことができました~


▲ 日本音楽コンクール本選会にて(毎日新聞社提供)

 
― 2位受賞おめでとうございます。日本音楽コンクールはどんなコンクールですか?

 

今回で第90回の歴史あるコンクールで、90回を迎えるコンクールは世界中でも少なく、先生方や日本の演奏家がこのコンクールのステージを経験していることを知っていたので自分もぜひ参加したいと思っていました。 演奏するレパートリーは自分が得意な曲目のみでなく、課題の範囲から選択しなければならず挑戦のしがいがありました。私はまだ若いのでいろいろなスタイルの作品に真剣に取り組み、今自分が不得意と思うものでもプロとしてある程度通用する力をつけたいと考えていました。コンクール自体、解釈や完成度もとても高いものを求められていると実感しました。また、コンクールを受けていて感じたのは、自分であまり好きではない、よく知らず不得意だと思っている作品でも真剣に勉強しているうちに、実は自分にとても合っていて好きになったり、褒められたり、自分の予想しなかった可能性が広がったことがよかったです。
 
― これまでもコンクールに挑戦したことがありますか?

 

大学院生まで参加する学内の東京音楽大学コンクールを、付属高校生の時に受けて長時間のプログラムに初挑戦しました。その時は運よく優勝できたのですが、それ以来いろいろなコンクール、演奏会で経験を積んでいます。日本音楽コンクールも何度か挑戦しましたが、とても独特な緊張感があり、あのようなステージで実力を発揮するにはどうしたらよいかをまず考えさせられました。演奏家はそれが常なわけなので練習はもちろん、体力に基づいたメンタルもとても大切だと感じるようになりました。また自分ですごくうまくいったと思ったのに結果が伴わず考えたことは、譜面の読み方の甘さやそれがどのように伝わっているかというところまで想像が及んでいなかったことです。これは冷静になって演奏を終えてから時間を経てわかるようになりました。このことには今も曲が新しくなる度に毎回奮闘しています。コンクールで経験を積んだことで以前より譜読みの意味や大切さ、伝えることの奥深さをより考えるようになりました。

 
― ファイナルではモーツァルトを選曲。どうしてですか?

 

古典派の曲目は今までにもいろいろ勉強していましたが、それほど得意だと思っていませんでした。2年前に中目黒の新校舎のホールでのオープニング演奏会シリーズのなかに、モーツァルトの協奏曲ソリストオーディションがあり、モーツァルトを必死に勉強してオーディションに受かり協奏曲をオーケストラと演奏する機会がありました。本番まではモーツァルトのむずかしさを弾けば弾くほど実感するばかりでしたが、本番での演奏がはじまってしばらくすると、演奏中なのに音楽の美しさに心から感動し、楽しさが心から込み上げてくる体験をしました。これははじめての経験でそれ以来モーツァルトが好きでたまらなくなりました。コンクールの本選でも結果に関係なく自分の今一番弾きたいものを、と思いモーツァルトを選曲しました。僕は今までにベートーヴェン、リスト、チャイコフスキー、ラフマニノフなどの協奏曲の勉強をしたことがありましたし、だからこそロマン派のヴィルトゥオーゾ的な作品を選曲すべきかとても迷いました。ですが、僕の気持ちと選曲に石井先生は「すばらしい挑戦だね」と賛成してくださったので勇気をもって臨むことができました。

 

▲ 創立111周年記念演奏会シリーズ ピアノ部会 煌めきのモーツァルトピアノ協奏曲集にて
 
― 本選を迎えるまでどうでしたか?

 

本選までは、先生からホールでみっちりレッスンをしていただく時間と、自分でよく考えて、考えをまとめる時間を短期間で交互に何度もローテーションしてもらうことができ、ペースを整えていただきました。
また急きょ、指揮の合同レッスンに呼んでいただき、オーケストラと指揮学生の指揮で実際に協奏曲を演奏する機会を作っていただきました。指揮の広上淳一先生をはじめ、プロオケのプレーヤーの先生から直接アドヴァイスと励ましをいただいたことがとても勉強になり、心から感謝しています。

 
― 結果を振りかえって、どうでしたか?

 

本選は自分にとって今までで一番大きな舞台でしたが、当日は応援に聴きに来てくれた友だち、家族の支えもあり、不思議と緊張することなく音楽を心から楽しみながら弾くことができ幸せでした。2位をいただけたことは本当にこれからの励みになりました。中学2年の時に冬期受験講習会で石井先生に出会い、基礎的なことから教えていただき、今も気づかなかった楽譜の読み方や、さまざまなアイデア、音色についてのアドヴァイスをいただけて心から感謝しています。先生の演奏会からもいつも大きな刺激をもらっています。僕は何度も挫けそうな時がありましたが、先生がいつも励ましてくださいました。またダブルレッスンの仲田みずほ先生にもいつも粘り強く聴いていただき、励ましていただいてとても感謝しています。本選の前に野島稔先生から、「青空に突き抜けるような明るい音でこのモーツァルトのハ長調を弾くように」と音色についてのアドヴァイスをたくさんいただき、本当にありがたかったです。このような音をこれから作っていけるようにがんばります。
 

― これからの目標は?
 
周りには本当にすばらしい友だちがたくさんいて、いつも刺激をもらってとても幸せな環境です。 また学外のすばらしい友だちの演奏からもたくさん刺激を受けていますが、僕は考えたりする時間がたくさん必要なので、自分に必要な時間のペースを保つ努力をしたいです。今までと変わらず一つひとつ丁寧に曲と向き合いたいです。海外に活動の幅を少しずつ増やしていきたいと思っていて、今はいろいろな計画を立てています。
また今回のコンクールがきっかけで、2023年まで東京でのオーケストラとの協奏曲を含め、演奏会の機会をいただいているのでとても楽しみにしています。
単純かもしれませんが、僕の演奏によってまず曲のよさが伝わり、そし聴き手の心に残る音楽家を目指しています。でも僕にはこれが一番難しいです!!
 

 
(広報課)