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【コンクール受賞者インタビューシリーズ】第24回 前田妃奈さん

前田 妃奈さん 

(器楽専攻弦楽器(ヴァイオリン)2年 東京音楽大学付属高等学校卒業)

 

第16回ヘンリク・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクール 第1位
ヴィエニャフスキ コンチェルト賞・カプリス賞・ソナタ賞・ベートーヴェン、ブラームス作品賞受賞

 
~東京音大でなかったら今のようになっていなかったと思います~


 


by Leszek Zadoń (Fresh Frame)

 
 

― 優勝おめでとうございます!今の心境を教えてください。

 

ありがとうございます!正直な感想でいうと、“大変なことになったな”と。行く直前まで本当に忙しくて練習もぜんっぜんできておらず、全然弾けていなかったんです。もうやめようかと思ったくらい…。なので、本当にビックリしました。いきなり降りかかってきた20カ国・60地域のコンサートツアーと受賞にともなう責任と…。“大変なことになったな”、と。

 

― 現地での様子を教えてください。

 

コンクールとしては人生で一番緊張しました。特に、ファイナル。もはや生きているか死んでいるかわからない中で弾いていました。正直、そこまでの状態にいくとよくわからないんですよ。先輩の周防亮介さんの演奏とかをYouTubeで見ていたコンクールだったので、“本当に今からここで、動画と同じように弾くんだ…”と、今でも信じられないです。手もどんどん冷えていき、足も本当に震えました。周りからはそんな風には見えないとよく言われますが、とても緊張しました。

 

― 本番前、自分になんと声がけしましたか?

 

なんだろう…。何も考えていなかったと思います。コンクールの結果よりも、そこで弾くことを第一に考えるしかないと。それ以上考えると絶対にうまく弾けないです。

 

― 受賞して、現地での反応はどうでしたか?

 

今回のコンクールは、テレビでどのチャンネルをつけても私が映っているほど、非常に多くのメディアが集まっていて、“お祭り”のように国中がコンクールで盛り上がっていました。インタビューもたくさん受けました。私は、ポーランド語も英語も話せないのですが、「あなたが英語を話せなくても、何もできなくても、あなたはすばらしいし、みんなあなたのことが大好きなのよ」と、たくさんの方が言ってくれて、その言葉に何回も救われました。

 

― 一気に有名人ですね。

 

はい、日本より有名人です(笑)。街を歩いていると、よく「ヒナマエダ?」と声を掛けられたり。
ポーランドは人がとてもあたたかくて、本当にいい国です。将来はポーランドに住みたいです。

 

― これからの目標は?

 

ひとまず、来年末までの受賞者コンサートをやり切りたいと思います。20カ国・60地域もあるので大変です。音楽は好き、ヴァイオリンも好きなので、この先もずっと続けていきたいと思っていますが、「世界中を飛び回るソリストになりたい!」とかは特になく、それよりも人間としてあたたかい人。私と出会えてよかったとか、私がいたら少しでも笑顔になれるよね、とか、そういう風に思ってもらえる人になりたいです。あとは、お嫁さんになってお母さんになりたいです(笑)。

 

― 前田さんと話していると、こちらまで笑顔になれます!ところで、東京音楽大学についても聞かせてください。

 

大学にはいろいろな面で日頃からお世話になっていて、大好きです!東京音大でなかったら今のようになっていなかったと思います。本当にありがとうございますと伝えたいです。

 

― 東京音楽大学のどういうところが好きですか?

 

いろんな人がいるところです。音楽大学だからといってプロを目指さなければいけない必要はまったくなくて、私の周りにはそれぞれが好きなことを見つけて、それを極めている人が本当に多いです。小説を書いている人もいれば、ゲーム実況している人もいたり、YouTuberをしている人や、作曲や編曲をしていたり。自分の好きなことを好きなようにやっています。もし、みんながソリストを目指しているような環境だったら、ギスギスしていたのではないかと思います。でも、そんな環境ではないので、すごく仲がいいです。ある意味“雑種”ですね(笑)。
あと、授業も本当におもしろいんです。

 

― どの授業が一番好きですか?

 

『スタジオエレクトロニクス』という授業で、ヴァイオリンだけをやっていたら知ることができない、機材についてなどの専門的なことを学べます。理数系や機材に強いわけではないので、100パーセント理解ができていないかもしれませんが、「レコーディングの時はこういう機材を使っているんだ」とか、「こういうマイクの仕様だから、こういう風に音を出せばいいんだ」とか、新しい世界に触れることができて楽しいです。

 

― 授業も楽しく、のびのびとキャンパスライフを楽しんでいますね。

 

東京音大はみんなが好きなことをやっているからこそ、“人間と人間の友だち”が築けていると思います。もちろん、時にぶつかることもありますが、本当にいい友だちに恵まれました。
出国する時も、「結果はなんでもいいからとにかく無事で帰ってきて」とみんなが言ってくれて。出国前にお菓子やおにぎりを渡してくれたり、夜中まで演奏を聴いてくれたり、そうやって送り出してくれる友だちばっかりなので、「なんて幸せなんだ」と思いました。

 

― 先生に対して伝えたいことはありますか?

 

先生方にはいい時も悪い時も支えていただいて…。先生と生徒ではなく、人間と人間として支えていただいていて、感謝しかないです。プライベートのことも音楽でもお世話になっています。帰国してすぐに原田幸一郎先生のご自宅でお食事をごちそうになりましたし、神尾真由子先生には「将来どうしていくかのために今どうしなければならないのか」と、将来のキャリアのことをよく考えてくださいます。小栗まち絵先生は本当にお母さんみたいな存在。この大学でなければ、このようなすばらしい先生方に出会えてなかったので、本当に感謝しかありません。

 

― 最後に、もっと皆さんに伝えたいことはありますか?

 

ポーランドは本当にいいところです。いろいろな歴史を背負っていて、愛国心がとても強いんです。人もやさしくてみんなすぐに友だちになれるし、道を渡ろうとするとほぼ100パーセントの確率で車が止まってくれるんです。人がやさしいと雰囲気がよくなり、国全体もよくなるのだと思います。私は「将来ポーランド人の旦那さんを見つける!!」と心に決めて帰ってきました(笑)。

 
 


by Leszek Zadoń (Fresh Frame)

 

 
 
(広報課)