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【卒業生インタビューシリーズ~TCMの先輩たちの今】第14回 甘粕 宏和さん

甘粕 宏和さん

 

指揮者・バンドディレクター

 

器楽専攻管打楽器(フルート)2000年大学卒業
東京音楽大学指揮研修講座 研修生

 

「ワルシャワ国際吹奏楽指揮コンクール2021」第1位ならびにオーケストラ特別賞受賞
「第32回 日本管打・吹奏楽アカデミー賞(特別部門)」受賞

 

~音楽のよろこびを共有する伝道師となれるよう励みます~

 

器楽専攻フルートを卒業後、全国各地の学校や市民バンドで吹奏楽の指揮者・バンドディレクターとして活動している甘粕さん。指揮の道に進んだきっかけは、吹奏楽の合奏指導を通じて指揮の重要性を感じたからだそう。現在は東京音楽大学指揮研修講座の研修生としても研鑽を続け、2021年に「ワルシャワ国際吹奏楽指揮コンクール」で第1位を、2023年には「第32回 日本管打・吹奏楽アカデミー賞(特別部門)」受賞しました。
活動を通じて、「子どもたちの”音楽がすき!”を増やし、音楽のよろこびを共有する伝道師となれるよう励みたい」と語ってくれました。

 
 
 

― まずは現在の活動内容を教えてください。

 

バンドディレクターとして北海道から九州まで全国各地の小・中高・大学や市民バンドなどへお邪魔しての活動のほか、日本吹奏楽指導者クリニックなどでクリニシャンを務めたり、音楽仲間たちと立ち上げた「やまももシンフォニックバンド」の指揮者をしています。また、「#コロナ下の音楽文化を前に進めるプロジェクト」発起人メンバーとして感染症専門医、感染管理認定看護師らと協力して活動していました。

 

― 吹奏楽の指揮者として日本各地で活動されているんですね。本学を器楽専攻フルートで卒業後、指揮の道に進まれたのはなぜですか?

 

お声かけいただき各地で吹奏楽の合奏指導をしているうちに、言葉だけではなく「指揮」で伝えることの重要性をあらためて認識し、もっと勉強したい!と思ったことがきっかけです。新型コロナウイルス感染症の猛威によりほぼすべての活動が停止したタイミングに、母校である本学の指揮科研修生になることができたのも大きな学びの機会となりました。
 

― 甘粕さんは2021年12月にポーランドで開催された「ワルシャワ国際吹奏楽指揮コンクール2021」で第1位ならびにオーケストラ特別賞を受賞されています。おめでとうございます!このコンクールはどのようなコンクールなのでしょうか?

 

ポーランドの首都ワルシャワで行われる、ヨーロッパでは2番目となる国際吹奏楽指揮コンテストで、国籍や年齢を問わない世界各国の指揮者にチャンスがあります。コロナ禍を鑑みて行われたステージⅠはオンラインによるビデオ審査、選ばれた20名がポーランド国立ショパン音楽大学にて行われたステージⅡ(2台ピアノ)、Ⅲ(室内楽)に臨みます。ファイナルでは同作曲コンクールで選ばれた新作が課題となり、ポーランド陸軍軍楽隊を指揮。リハーサルを含む演奏審査となります。
コンクールはワルシャワ吹奏楽協会によってオーガナイズされていて、事前のメールなどのやりとりも含め、とてもしっかりした組織の印象でした。

 

― 本番を迎えるまでを教えてください。

 

現地での審査が、はじめに2台ピアノ、次が室内楽、ファイナルが吹奏楽団とだんだん編成や人数が多くなることを踏まえ、言葉や手の動きの伝わり方を意識しながら準備しました。審査はアルファベット順に行われたので、常にプログラム1番。嫌だなぁと思っていたのですが、審査員の方々に新鮮な気持ちで聴いていただけるからいいか!とポジティブに気持ちを切り替えられたのもよかったと思います。

 


▲ 滞在中唯一話せるようになったポーランド語「私はポーランド語が話せません」を披露しオーケストラメンバーにウケる
 

はじめて行くポーランドでしたので審査がはじまる数日前にワルシャワに入り、各ラウンドが行われる会場への経路確認や下見と称して簡単な市内散策をしました。到着翌日にその呑気な報告を三原明人先生にしたところ、「観光はコンクールが終わってからにして今は課題に集中してがんばって!」とメールをいただき、慌ててホテルの部屋に戻り、そのメールのおかげで気を引き締めて本選までコンクールに集中してがんばることができました。

 

― 先生からいただいたメールにカツを入れられましたね!受賞に際し、どのようなことを感じましたか?

 

社会に出てもうすぐ四半世紀。大きな賞をいただくことで育てていただいた皆さまへ感謝の気持ちが伝えられ、吹奏楽、さらには音楽への恩返しができるよう微力ながらますますの精進を、と思いました。また、自分より若い方たち、後輩たちに学び続けることの大切さや楽しさをますます伝えていきたいと思いました。

 


▲ クロージングセレモニーでオーケストラ特別賞もいただいてよろこんでいる表情(ここは英語で発表でしたのでリアルタイムで理解できました)

 

▲ 1位を分け合った元アメリカ海兵隊バンド・アシスタントコンダクターのMichelle Rakersさんと楽屋に戻り笑顔で

 

―大きなコンクールでの受賞が、今後の活動にますます意気込みの入る大きな節目となったのですね。コンクール受賞後、新しくできた目標を教えてください。

 

少子化のみならずさまざまな要因で楽器(音楽)をはじめる子どもたちが減ってしまっている現実があります。音楽が好き!を増やすことは音楽文化を育てること。そして音楽は人と人とを繋げることができるすばらしいもの。音楽のよろこびを共有する伝道師となれるよう励みます。難しいことをやさしく、やさしいことを深く、深いことをおもしろく!を実現するために自分自身がさらに学んでまいります。

 

― ありがとうございます。話は変わって、現在受講されている、指揮研修講座についても教えてください。先生とのレッスンの様子など、どのような環境でしょうか?

 

三原明人先生にご指導いただき3年。先生のレッスンはいつも「問いかけ」で、こちらが能動的に「考えること」を促してくださいます。自分自身のさまざまな無知を恥じながらも、学ぶチャンスをくださり心から感謝申し上げます。そしてマスタークラス(指揮合同レッスン)の指揮科の学生の皆さん、オーケストラの皆さん、そして最強布陣の先生方との真剣勝負の場は宝の山で常に刺激と学びにあふれていて最高です!

 

― 在学生から社会人まで幅広い年齢層の方が参加する指揮合同レッスンは、本学の特色あるレッスンのひとつですね。振り返って、学生時代から指揮研修生の今まで、東京音大での学びはいかがでしたか?

 

フルートの学生時代は、風通しのいい先生方のレッスン環境でたくさんのアドヴァイスをいただくことができました。中野真理先生には今でもお世話になっていますが、生涯の師、生き方のお手本です。ちょうどコロナ禍となり、することがほとんどなくなってしまったタイミングに指揮研修生となることができ、広上淳一先生をはじめ、すばらしい先生方のもとであらためて指揮について集中的に学ことができ本当に幸せです。
 

― 最後に東京音大の後輩たちへメッセージをお願いします!

 

たくさん友人を作って、練習以外のことにも全力投球で!新しい本館も中目黒・代官山キャンパスもできて、あの頃よりもさらにすばらしい環境ですから、一日一日を愛しみながら存分に青春してください!そして、卒業しても「学び」はずーっと続きます。視野を広く一つひとつの出会いを大切に、あらゆることに興味を持って学び続けてほしいと思います。

 
 
 

(広報課)