2023.11.14
渡邉さんの作品「Link」(2023/10/13追記)
― アジアンアート・アンサンブルによる企画「International Composers’ Workshop」とは、どのようなプロジェクトだったのでしょうか?
世界中から集まった作曲家たちが、東アジアの伝統楽器と西洋弦楽器の創造の可能性をテーマに競作するプログラムです。参加メンバーはまず、韓国の伝統楽器(Daegeum,Gayageum,Janggu)と日本の伝統楽器(箏)、そして西洋の弦楽器のレクチャーを受けます。そして、それらの楽器を使った編成で作曲をし、その作品をアジアンアート・アンサンブルの皆さんに演奏していただき、コンサートとして作品を発表するという流れです。
― 渡邉さんはどのような曲を作曲しましたか?
私は韓国の笛Daegeumと日本の十三弦箏、西洋弦楽器のヴァイオリン、チェロの編成で作曲をしました。
邦楽演奏実技のレッスンで箏を習っており、その経験がとても役に立ちました。邦楽での拍の感じ方や西洋の拍の取り方、また楽器の本来持っているピッチなどの違いを知った上で作曲に取り組むことができたのは、大きなアドバンテージだったと思います。そのため、普段書いている西洋楽器のみのアンサンブル作品より、やや保守的かもしれませんが、それぞれの楽器の音色を活かし、新しい音色の作品を作ることができたのではないかと自負しています。
▲リハーサルの様子
― これまでにも伝統楽器を使った作曲の経験はありましたか?
今までは西洋の楽器をメインにした作品が多く、昨年作曲した十三弦箏と声楽の作品以外では伝統楽器を用いて作曲する機会はありませんでした。特に今回、韓国の楽器を用いて作曲するというのは初めての経験でした。韓国、日本、西洋の楽器という、異なる歴史を辿ってきた楽器をどのように組み合わせるか。そして、新しいだけでなくそれぞれの伝統をどのように活かすか。それらを考えて作品を創るのに一番苦労しました。
― イメージ通りにできましたか?
はい、イメージ通りにできたと思います。
アジアンアート・アンサンブルの演奏家の方々による第三者目線での解釈を通じ、イメージを超えて本当に良い作品になったと思います。作曲は自分のイメージで独りよがりになってしまう時がしばしあるのですが、演奏家というすばらしい方々を通すことで、作品がより豊かになると思います。
気が付いたこととして、ヨーロッパでの音の響きの違いを感じました。箏の響きは日本で聴くよりとても長く響き、自分で作曲する際に予想していた残響時間より長かったため、今後、作品を創る際に演奏される場所によって残響時間の考慮が必要だと感じました。
また、プロの演奏家の方と一緒に作品を創る経験ができたことはとても有意義で、貴重な経験でした。作品と向き合う集中力にも圧倒されました。
― 貴重な経験を積むことができましたね!
海外での学びの場を提供していただける環境があること、そしてそれを、国際交流センター、また今回はアジアンアート・アンサンブルと交流がある原田敬子先生にも手厚くサポートしていただけて、大学からさまざまな手厚い支援を受けられることが東京音大の大きな魅力だと思います。
今回の作曲では西洋音楽だけでなく、世界の音楽を学べる授業や、邦楽演奏実技を履修していることが大変役に立ちました。また語学の面でも、充実した語学講座があるおかげで、実際コンサートでは作品演奏の前に自作品についての説明をスピーチすることになっていたのですが、東京音大でドイツ語を学んでいたため、比較的スムーズにドイツ語でのスピーチができました。
このようにさまざまな角度から音楽を深く学べることは大変ありがたく、意義のあることだと思います。今後よりよい作品が書けるように学びを続け、精進してまいります。
(広報課)
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