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【卒業生インタビューシリーズ~TCMの先輩たちの今】第17回 戸田 絵美さん(国家公務員(内閣府)を掲載しました

 

戸田 絵美さん

 

国家公務員(内閣府)
2003年音楽教育専攻卒業


内閣府は、日本政府の中枢機関の一部であり、国の基本的な政策や施策を立案・調整するなど、国家全体の運営に関わる重要な役割を果たしています。一見、音楽の道からは遠い世界のようにも思える道ですが、東京音楽大学で学んだ知識や情熱を生かし活躍している戸田絵美さんにお話をお聞きしました。

 
 

― まずは、自己紹介をお願いいたします。

 

2003年に音楽教育専攻(*現在は音楽文化教育専攻)を卒業し、現在は国家公務員として内閣府で働いています。国の政策でもある『骨太の方針』や『予算編成の基本方針』、『就職・採用活動に関する要請』を取りまとめるのが現在の私の主な仕事です。これらは議員の方々へ説明に出向いたり、他省庁などと連携して作っていくもの。よって、対人スキルやスピード感をもった行動力、資料作成、検索力、報道の把握など、多岐に渡り常にアンテナを張っておくことが求められます。
 

― 高度な事務処理能力とバイタリティを必要とするお仕事ですね!戸田さんは、就職氷河期世代を対象とした採用試験に見事通過し、今のお仕事に就いたとお聞きしています。本当に優秀ですね。本学を卒業してから今までの経緯をもう少し詳しく教えてください。

 

元々教育分野を目指していたのですが、実は現役の時は就活に乗り遅れてしまい、気がついたら就職せずにチャペルで演奏しつつ他のアルバイトも掛け持ちする、いわゆるフリーターのような生活を1年弱していました。このままではまずいと思い、JR東日本のグループ会社に派遣社員として入社。3ヶ月経った時に正社員になってみないかとお声がけを頂いたので、そこから正社員として約15年間勤めました。
その間に男子を3人産み、産休もとり働きやすい環境の中で過ごしていたのですが、それも落ち着いた頃、次に向けて思い切ってステップアップしようとなりました。ちょうど内閣府が他の省庁に先駆けて初めて就職氷河期世代を対象とした国家公務員の採用試験を行うことを知り、応募してみたところ、数百人の中から選抜メンバーの5人に入ることができました。
 

 

- 次のステップアップとして国家公務員を目指した理由はなんだったのでしょうか?

 

いちばんのきっかけは、当時、保育園の数が足りず、共働きでも子どもが保育園に入れなかったことですね。こうした問題を解決し、社会を変えていくには、国家公務員として政策を動かしていけるところに行こうと。試験対策のために公務員試験専門塾に通った際、内閣府のOGの話を聞く機会があり、その方がイキイキと自分の仕事を語っている姿に大変刺激を受け、私も内閣府を目指そうと思いました。内閣府は、複数の省庁にまたがる業務を取りまとめる役割も担っているので、さまざまな方向の政策を通して国民が幸せになるような仕事ができると思いました。

 

- お話をお聴きしていて非常に前向きなバイタリティを感じます。ひたむきな情熱は学生の頃からでしょうか?

 

東京音楽大学と出会ったことが私の人生を変えたんだと思います。というのも、東京音楽大学付属高校受験の際に、人生で初めての挫折を経験したことから始まります。
音楽の教師になりたくて高校は音大の付属を目指そうと、中3の時に東京音楽大学の夏期講習会に参加。そこで出会ったピアノの岡藤由希子先生にたいへん感銘を受け、そこから本格的に東京音楽大学を目指したのですが、準備期間が短く専門的な音楽知識の準備不足が原因で、結果は不合格。もうとにかく悔しくて。でも挫折していてもなにもならないので、大学は絶対に東京音楽大学に入るんだ!ととにかく前向きに思考を変えて、東京音大を目指すことだけを考えて高校3年間を過ごしました。それで、東京音楽大学に晴れて合格できたわけです。

 

― 挫折、そして東京音大に入りたい一心が戸田さんを強くしたんですね?

 

挫折というと暗いイメージですが、決して悪いことではありません。自分の伸びしろだと思うと、むしろチャンスとも言える。悩んでいてもなにも変わらないので、発想を転換して次に進む勇気が必要なんだと思います。マイナスな感情は、考え方を変えるだけでプラス思考にもなります。この発想の転換は人生を楽しく生きていくためのスキルになると思っています。
さらに大学入学後は、東京音大で身についた忍耐力、集中力、粘り強さ、メンタルの強さのおかげで、仕事や子育てで行き詰まることがあってもこれまですべてを乗り越えることができました。

 

― 東京音楽大学でさまざまなことを学ばれましたね。

 

今振り返ってもこれまでの人生の中で一番楽しい4年間でした!付属高校の受験に落ちたことでなおさら行きたい気持ちが膨らみ、大学に少しでも長く滞在しようと、勉強できるものはなんでもやりたくて、ほとんどの選択履修科目をとって時間割をびっしりにしていましたね(笑)。レッスンも、厳しい時もありましたが、先生に怒られる分だけやる気が湧いてきて、悔しいから次はもっと上達させようといつも思っていました。レッスンで怒られた翌日は、練習室を確保するために早朝6時台から並んで予約表に名前を書いていました。(注:現在は、アプリによる練習室予約のため、早朝に並ぶ必要はありません)
また、芸祭実行委員をやっていたので、他専攻の人とも仲よくなれて横のつながりができました。パンフレットのスポンサー集めを担当する渉外係として、外部の方に交渉しに行くという体験を通して、楽しみつつ社会勉強にもつながるよい機会となりました。
 

 

― まさに夢を叶えて大学生活を謳歌した4年間でしたね!
ところで、戸田さんはこれまでに、人事や、経済分析、企画、予算編成など広範にわたる仕事を任されてきたと伺っています。分野の異なる仕事はどのようにしてこなせるようになるのか、教えていただけますか?

 

国家公務員は異動する機会が多く、特に幅広い業務を持っている内閣府では、異動の度にそれぞれの現場で新たなことを一から覚えなければなりません。実は、そんな時に、東京音楽大学で学んだことを思い出すんです。
実技レッスンでは、新しい曲の楽譜を見た時はいつもよくわからない状態。しかし、一つひとつを見ていくと点が線となってつながっていきます。仕事も同じなんです。慣れない仕事で困難を極めるものでも、新しく楽譜を見るときと同じで、レッスンの時と同じようにコツコツとあきらめずに目の前のことに集中して仕上げていくのです。
集中力や折れない心は、音大生時代に養われました。これは音楽だけではなく、社会生活全般において通用します。経済や法律などを専門にしてきた職員が多数いる中、未経験の私は異動するたびに常に壁にぶつかってしまいます。しかし、逆に壁しかないので、乗り越えるしか道はない。つまり、何をやっても伸びしろしかない!(笑)というわけで、日々新しい経験を積み重ね、いくつになっても成長し続けられることへの喜びを感じながら仕事をしています。

 

― すばらしい‼今後取り組みたいことはありますか?

 

日本は諸外国と比べて国民の幸福感が低いと言われています。子どもも大人もみんなが生きていて幸せだと感じ、豊かな心を持てる社会になるためになにかできたらいいなと思っています。そのために必要なのは、教育や音楽の力だと考えています。楽器を弾いたり、音楽を聴くことによって、ストレスが発散されたり気持ちに余裕ができます。私も、何か行き詰まった時にはとにかくピアノを弾くことで気分転換をしています。
内閣府に入府してまだ3年目。多種多様な業務があるので、分野を絞らずに異動を通してさまざまな経験を積み上げて、幅広く政策を把握しながら、少しでも社会に貢献していきたいと思っています。

 

― 頼もしいですね!最後に、後輩たちにアドヴァイスをお願いいたします。

 

3点あります。
1点目は東京音大にはすばらしい先生方と学生、恵まれた施設があるので、これらをフル活用してください!
2点目は、厳しいレッスンなどを乗り越えてきたからこそ培われた粘り強さや集中力は「音大生の強み」です。たとえ卒業して音楽の道に進まなかったとしても、その強みは社会に大いに通用する魅力ですので、自信をもって東京音大ライフを楽しんでください!
3点目は私の経験からですが、今はIT化によってウェブコミュニケーションが進む時代ですが、ウェブだけでなく実際に顔をあわせてつながりを作っていく機会をもつことは、相手との人間関係を円滑に築くうえで非常に重要だと感じています。これから社会に出ていくことを考える上でも、ぜひ人とつながれる機会、そして横のつながりを大切にしてください!

 

― 貴重なお話をありがとうございました。応援しております。

 
 

(広報課)