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【コンクール受賞者インタビューシリーズ】第3回 尾方凜斗さん

尾方凜斗さん

(大学院作曲指揮専攻作曲研究領域2年 徳島県立城北高等学校卒業)

第12回全日本吹奏楽連盟作曲コンクール 第1位

 

「同じことをずっと「しつこい」ほど懲りずにやり続けてきました」

 

第12回全日本吹奏楽連盟作曲コンクール(全日本吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)で第1位を受賞したのは大学院2年の尾方凜斗さん。受賞作は「吹奏楽のための『幻想曲』-アルノルト・シェーンベルク讃」、来年1月に楽譜が発表される予定。高校、大学、一般楽団などによるさまざまな演奏を聴くのがなにより楽しみだそう。

 
 
― 西洋音楽の流れを捉えるきっかけになれば、という思いで作曲
 
受賞作の「吹奏楽のための『幻想曲』-アルノルト・シェーンベルク讃」は、全日本吹奏楽連盟作曲コンクールで第1位に選ばれて、来年の吹奏楽コンクール課題曲Ⅴとして高校生以上の団体が選択可能です。課題曲Ⅴは吹奏楽曲の開発を目的としたもので、課題曲Ⅰ~Ⅳよりも現代的なスタイル、ハイレベルな演奏技術を要求する作品が選ばれるようです。

 

オーストリアの作曲家アルノルト・シェーンベルクの作品で用いられるモチーフを引用し、それを基に作曲しました。吹奏楽は比較的に歴史が浅く古典的な名曲が少ない。吹奏楽だけをやっているとなかなかこの時代の作曲家に触れることが少ないので、西洋音楽の流れを捉えるきっかけとなればいいなという思いで作曲しました。

 
 
― 中高で打ち込んだ吹奏楽には特別な思い入れが
 
学部在学中のコンクール応募は、吹奏楽連盟作曲コンクールと、それとは別の室内楽作品を対象とした作曲コンクールの2回だけ。作曲コンクールは賞をとらないと演奏してもらえないので、コンクールよりも演奏会のために作曲することが多いです。その都度、演奏を担当する奏者の特性を考えながらいつも書いています。
 

僕は中学と高校で6年間吹奏楽部に所属してテューバを吹いていました。多感な時期に打ち込んだ吹奏楽には特別な思い入れがあります。コンクール課題曲を中心に演奏される吹奏楽の世界で、自分が作曲した吹奏楽曲を演奏してほしくて、今年このコンクールに2度目の挑戦をしました。

 
 
― 修士論文の研究で得た知識も生かして
 
今年3月、徳島に帰省して修士論文の研究も兼ねて、7~8校のスクールバンドを実際聴きに行ったことでさらにモチベーションがアップ。アイディアもあったので、研究で得られた知識を生かせれば本選に残る作品を書けるのではないかと思いました。高校生が演奏することを念頭において3週間ほどかけて仕上げ、曲が完成した段階で、自分でもいいところまでいくのではないかと手ごたえを感じていました。

 

予選を通過した2作品が本選に選ばれました。大阪で行われた本選のリハーサルでは、Osaka Shion Wind Orchestraのみなさんが演奏してくださったのですが、自分の作品がプロの楽団によって演奏されたのははじめてのことで、冷静に聴けなかったほど緊張しました。

 
 
― 自作曲がさまざまに解釈され、表現されるのが楽しみ
 
1位受賞の連絡を受けたのはアルバイトに向かうバスの中でした。かなりびっくりしましたね。日に日に感慨深さが増してきています。僕は徳島出身ですが、県吹奏楽連盟によると徳島県出身者の本コンクールの第1位受賞と、課題曲に徳島県出身者が選出されたことははじめてで、飯泉嘉門徳島県知事を表敬訪問させていただきました。
 
1月に楽譜が発表される予定ですが、高校生のみなさん、プロの演奏団体などいろいろなところで演奏されるのを聴くのが本当に楽しみです。作曲コンクールの受賞曲が広く頻繁に演奏されるのは吹奏楽コンクール課題曲くらいといってもいいほど珍しいことです。さまざまに解釈され、表現されることを楽しみにしています。

 
 
― 失敗や挫折をしても、諦めようと考えたことはありません
 
来年は、吹奏楽の現場に直接関わる仕事が増えてくると思います。それまでは、一度吹奏楽から離れて、現代音楽の創作の世界に立ち返りたいと考えています。
僕は高校生の頃から現代音楽に興味をもちはじめました。抽象的な表現ですし材料に限りがないので、思ったことをダイレクトに表現できる現代音楽が好きです。
 
これまで同じことをずっと「しつこい」ほど懲りずにやり続けてきました。よくわからないけどやってみるという「盲信」のような感覚でいつも身分不相応な高いレベルに飛び込んできました。もちろんそこで失敗や挫折もするのですが、諦めようと考えたことがありません。これから作曲を目指すみなさんにも、諦めずに挑戦し続けてほしいと思います。

 

(広報課)