検索

よく検索される項目

【在学生インタビューシリーズ】第2回 岡本陸さん

岡本 陸さん

(指揮3年 洛星高等学校卒業)

第56回芸術祭プレミアムオーケストラ指揮

 

第56回芸術祭公式企画のひとつ、伝統の「プレミアムオーケストラ」を指揮したのは、大学3年指揮専攻の岡本陸さん。躍動感あふれる指揮で80名を超えるオーケストラをまとめました。爽やかな風貌ながら真剣なまなざしで取り組むパワフルな行動力。彼を突き動かすものはなにか。話を聞きました。

 
 

■ 広上淳一先生に憧れて「京都市ジュニアオーケストラ」に入団

 

3歳の時に親がヴァイオリンを買い与えてくれて、それからずっとヴァイオリンを弾いています。指揮者になりたいと思ったのは小学校1年の時。通っていた音楽教室の合奏クラスで指揮をしていた先生がかっこよくて、僕もなりたい!と思ったんです。

 

中学2年の時に「京都市ジュニアオーケストラ」に入団しました。京都市交響楽団の先生にヴァイオリンを師事していたので京都市交響楽団の演奏をよく聴いていました。そこで常任指揮者として指揮をされる広上淳一先生に憧れて、「京都市ジュニアオーケストラ」の定期演奏会でも指揮をされる先生の下でぜひ演奏してみたいというのが入団の理由です。はじめて広上先生の指揮で演奏した時に受けた衝撃は今でも覚えています。わかりやすい例えで子どものやる気も曲の雰囲気もがらりと変わっていくのを体験しました。具体的にいうと、曲目は大好きなショコスタコーヴィチの交響曲第5番 第1楽章。クライマックスを迎えたあと、通常はどっしり重たくする箇所があるのですが、先生が「戦車のように突き進みます」とおっしゃると、その一言でそこの4小節が一気呵成に突き進みました。もう、それがもう、本当に…(しばらく悶絶して)。この4小節で、絶対この先生につきたい!と思いました。

 
 

■ トップレベルの複数の先生からのアドヴァイスは貴重

 

広上先生がいらっしゃる東京音楽大学の指揮専攻を目指して、高校2年の時から田代俊文先生に指揮の個人レッスンを受けるようになりました。東京音楽大学は専門の指揮以外にもいろんな楽器の演奏ができるのも魅力でした。僕の場合は、オーケストラの授業でヴァイオリンを弾いたり、副科でホルンやピアノのレッスンも受けています。

 

東京音楽大学の先生方は温かくて、わからないことがあればなんでも聴きにいける雰囲気があります。自分でこれやりたいという気持ちがあればいくらでも学べる環境です。指揮の実技レッスンは、1年次は増井信貴先生、2年次は米津俊広先生、3年次では田代先俊文先生・米津先生・増井先生の3人の先生に師事しています。レッスンの一つひとつが充実していてみっちり指導していただけます。また、「合同レッスン」をはじめオーケストラを指揮する機会にたくさん恵まれています。指揮の先生はもちろん、第一線で活躍する奏者の先生方を前にしての「合同レッスン」は、さまざまな角度でのアドヴァイスをいただくことができます。

 
 

■ 大規模編成の「プレミアムオーケストラ AMERICA」を経験して人間として成長

 

芸術祭「プレミアムオーケストラ」の指揮はコンサート実行委員からのオファーで引き受けました。話が来たのは5、6月頃だったと思います。コンサート実行委員のメンバーとプレミアムオーケストラ企画頭の坂本悠靖くんと話し合ってコンセプトや曲目などを決めました。テーマは「アメリカ」。統一感を持たせたいというのがみんなの中にありました。古典のチャドウィックがあって、一番新しいアダムズ、それからコンチェルトにヨーロッパからアメリカに来たドヴォルザーク。アメリカをいろんな角度から見ることができるバランスの取れたプログラムになったのではないかと思います。本番に近づくにつれ、失敗できないという焦りはありましたが、コンサート部署委員のみなさんがプログラムの作成から広報、楽器借用の申請まで精力的に動いてくれたおかげで、僕たちオーケストラはのびのびと演奏に集中することができました。

 


▲第56回芸術祭プレミアムオーケストラで指揮)

 

これほどの大編成のオーケストラを指揮させていただいたことは、ものすごく勉強になりました。コミュニケーションの取り方をはじめ、指揮者として以上にひとりの人間としてかけがえのない勉強をさせてもらったと思います。共演したイシュトヴァーン コハーン先生からは「自分の音楽を捨てないで大切にしていってほしい」と力強いアドヴァイスをいただきました。
ドヴォルザークの「新世界」は大変有名であるがゆえに難しい曲ですが、メロディラインの美しい曲なので、上手に演奏するよりも一音入魂、一つひとつのキャラクターが生き生きと奏でられるように、躍動感を大切にしました。聴きに来ていただいたお客さまに、少しでも「新世界」の良さが伝わっていればうれしいです。

 
 

■ 自由で明るい校風が背中を押してくれる

 

僕たちの学年は創立から数えて111期生になります。東京音楽大学が創立111周年を迎えて、去年の秋に111(トリプルワン)オーケストラという有志オーケストラを結成しました。仲間がいればもっと可能性が広がると思い、同期に呼びかけたところ、約90人の仲間が集まりました。プログラム作成から広報活動など、5、6人の運営チームが中心となって、やりたいことをみんなの投票で決めています。なにかアイディアが出るとあっという間に更新されたスケジュール表ができてくるんです。今年3月に池袋キャンパスのJ館スタジオで、ラフマニノフとブラームスで初公演を果たしました。来年1月9日には池袋キャンパス100周年記念ホールで、作曲「映画・放送音楽コース」生の新曲を初演することも決まっています。

 

東京音楽大学は学生が主体的にやる、同じ志をもった同志がたくさん集まってくる校風があって、大学側、先生方もそれを応援してくださいます。積極的な仲間に恵まれたのは自分の学年が特別なのではなく、この大学の自由で明るい校風がみんなを行動的にさせてくれているのではないかと思います。横のつながりは大事なので、卒業してからも仲間たちとこのオーケストラを続けていきたいです。

 

3年生の指揮専攻は僕を含めて3名在籍しています。みんな仲良いです。自戒の念もこめてですが、技術的なことばかりに意識を向けることなく、音楽の喜び、演奏会を聴いてくださるお客様を楽しませること、人と人をつなげることをこれからも大切にしていきたいと思います。

 
 

(広報課)