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【在学生インタビューシリーズ】第8回 太田糸音さん

太田 糸音さん

(ピアノ演奏家コース・エクセレンス3年 東京音楽大学付属高等学校卒業)

飛び級×早期卒業で付属高校から大学卒業まで5年間

 

付属高校を飛び級で大学に進学。大学を3年間で早期卒業。高校入学から大学卒業まで5年間で駆け抜けた。気になることはとことん調べあげ、納得がいかない点ははっきりと先生に自分の意見を言う。「そんなにいい子じゃないんです」と笑いながらあっけらかんと話す太田さんから、底なしの前向きパワーを感じました。

 
 

-早期卒業おめでとうございます。早期卒業を意識しはじめたのはいつですか?

 

入学当初から早期卒業を視野に入れていました。一番の理由は、卒業後に留学をしてもっと勉強したいという目標をもっていたからです。

 

3年次では授業への出席を最優先にしたため、コンサートの本番と授業が重ならないように調整したり、コンクールへの出場を控えたりしました。大学入学後は、やらなければいけないことや、やりたいことがたくさん増えて、いつの間にか1年が終わっていくような3年間でした。高校2年間と同じくらいか、それよりも速く感じるくらい、本当にあっという間でした。卒業する時点でまだ20歳。これからまだまだたくさん勉強できるので、幸運だと思います。

 

高校での飛び級申請は2年生の秋に成績を見て決めましたが、早期卒業への準備はもっとはやく、1年の時の成績を見た時に、GPAで基準をかなり上回っていたので、がんばればいけると思いました。本格的に準備をしはじめたのは2年の終わりごろ。単位数よりもGPAの成績評価が大事なので、成績簿とにらめっこして、「これは大丈夫、これはちょっと危ないから次がんばろう」という感じで科目を手帳に書き出していました。4年分の必要な単位を3年間で取得するのは当然ながら忙しくて、毎日学校に来ていました。

 

早期卒業するためには、3年のリサイタル試験と卒業試験の2つの試験を受ける必要があります。卒業試験(実技)はリサイタル試験に合格してから受けられます。リサイタル試験では全曲ショパン、卒業試験ではベートーヴェンのソナタ11番とバッハのイギリス組曲、最後にチャレンジのつもりであまり弾いたことのなかったスクリャービンのソナタ2曲を弾きました。ベートーヴェンの11番は高校の入学試験でも弾いた曲、当時はとりあえずというレベルでしたので、それを卒業試験という特別な場でもう一度しっかりと弾いてみたいと思いました。

 

高校・大学の5年の年月を経た今、成長を実感しています。バッハの組曲はピ演演奏会(「東京音楽大学ピアノ演奏会~ピアノ演奏家コース成績優秀者による~」)でも弾きましたが、近現代の音楽とは違う構築物のような緻密さが大好きなんです。

 
 

-大学の授業・レッスンはどうでしたか?

 

たとえば、父との会話で「どうして争いはなくならないんだろう」となった時に、日本での戦の起源はいつ頃なんだろうと気になって調べてしまう。もともと調べることや勉強が大好きなんです。音楽史の授業などはバロック時代以前からはじまったりするのですが、それよりさらに前の時代のことを知りたくなったり、気になることはすぐにメモをとって、授業後に先生に聞いたり自分で調べたりします。東京音楽大学には興味深い授業がたくさんあって、個別レッスンとはまた違って、ほかの学生の考え方を知ることができる点もすごく好きです。

 

「室内楽」でイタマール・ゴラン先生の譜めくりをお手伝いしたことがありますが、憧れの先生を至近距離で見られるとあって、うれしさを抑え切れずに食い入るように身を乗り出していました。そんな私を嫌がることなく、時々振り返って、「ここはこう弾くんだよ」とにこにこして指導してくださる先生のお人柄に惹かれました。先生の奏でる音にアイデアがつまっていて、相手によって自由自在にどんどん変わっていく。ピアノの音だけではない、アンサンブルでここまでの音が出てくるのかと感激しっぱなしの、思い出しても幸せな時間でした。それが一番印象に残っている授業です。

 

また、他の楽器と演奏できる機会がたくさんあったのもよかったです。伴奏で伺った声楽の釜洞祐子先生のレッスンは、ひっくり返るほど感動しました。小さい頃にCDで聴いた釜洞先生の声を間近で聴けるだけでも感動しますが、すばらしいレッスンでした。ヴァイオリンやヴィオラのレッスンではいつもエネルギーをもらっています。合唱の授業もおもしろかったです。

 

振り返れば、興味のある授業やレッスンがたくさんありました。教養科目の「教養演習」の授業ではみんなの前でプレゼンテーションをするのですが、相手に伝わるような話し方や目線のことなどを教えていただきました。ちょうど舞台で話すことを悩んでいた時期でしたので、舞台でのマナーや間のあけ方など、すごく勉強になりました。

 
 

-なるほど太田さんは演奏もすばらしいのですが、ステージに出てきた所から、椅子に座るところ、弾いて演奏が終わって退場するところまで、トータルで美しいと感じます。

 

ありがとうございます。本番で髪をまとめあげると気分が上がるんです。

 
 

-ところで、付属高校に入ったのはどうしてですか?

 

小学校3年の時に大阪ではじめて武田真理先生のレッスンを受けました。私のやりたいことをすごく尊重してくださる先生です。私は“いい子”ではないので(笑)、先生に言われたことでも納得いかない場合は、「私はこう思います」とぶつけていきます。

 

レッスンの怖いところは、言われたことだけを直してしまうところだと思っていて、指摘されたことを吸収して、違う場面に生かす方が大事かなと感じています。武田先生はそれをしっかりと受けとめて、「そう思うなら、なんでこうしないの?」と聞いてくださります。それがうれしくて。
武田先生は本当に穏やかな方です。高校を決めるときは、そんな先生がいらっしゃるここの付属高校に迷わず決めました。今も演奏会のプログラムは先生と事前相談しないで、すべて自分で考えて「これを弾きたいです」と話して、ご指導していただいています。

 
 

-本当に興味の幅が広くてパワフルですね。
失礼かもしれませんが、太田さんでもくじけるようなことがあったりしますか?

 

はい、うれしい時ははかどりますが、感情に振り回されて結構悩んだり、「もういいや」となる時もあります。その時は、どうしたらもう一度火がつくかなと考えます。私はフィギュアスケートを見るのが大好きなのですが、まるで自分のことのようにのめり込んで観戦しています。選手たちのがんばりを見て、「よーし、私もがんばって腹筋を鍛えるぞ」と元気になって、YouTubeのヨガチャンネルでストレッチの研究をしたり。

 

また、高校入学から寮に5年間入っていましたが、友人にすごく恵まれました。何かあればすぐに相談できます。いつも応援してくれて、私も友人たちの伴奏をしたりいろいろと助け合ってきました。卒業しても、また演奏会などで共演できるのを楽しみにしています。

 
 

-これからの目標を教えてください。

 

留学に向けての準備をしつつ演奏会をこなしていきたいと思います。やりたい勉強、やりたい曲は無限にあるので、自分のやりたいことをやっていきたい。それだけではなく、今までやったことのないことも興味を感じていて、ピアノ以外にも両親の影響でよくジャズを聴いたり。雅楽にも興味があります。最近やっと日本音楽の拍がわかってきたような気がします。まだ19歳、これからもいっぱい勉強して成長していきたいと思っています。

 
 

-野島稔学長のお言葉を借りれば、「これからも興味の触手をすり減らすことなく」、持ち前の前向きさでどこまでも邁進していってほしいと思います。
ありがとうございました。
 

 

 

(広報課)