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【教員インタビューシリーズ】 第3回 小川典子特任教授

小川典子特任教授

(東京音楽大学付属高校卒業 ジュリアード音楽院卒業 ギルドホール音楽院教授)

 

本学付属高校ピアノ演奏家コースを経てジュリアード音楽院に学び、その後渡英。イギリスと日本を行き来しながらピアニストとして演奏活動や指導者としての教育活動、また音楽をとおした福祉活動も精力的に行っている小川先生。今年2月、本学ACTプロジェクトの学生が企画したコンサート「L’Impressionnisme~ドビュッシーをめぐる人々~東京音楽大学の学生たちと小川典子によるフランス音楽」(2020/2/10)に学生たちと出演。小川先生に学生への思いから、活動の原動力についてお話を伺いました。

 
 

■ 東京音楽大学の学生の印象

 

みんな本当にまじめで、私のレッスンに来てくれる時には曲がかなりでき上がっていることが多いですね。非常に水準が高いと思います。

 

■ 東京音楽大学の校風

 

校風は昔から本当に変わらないですね。私が高校生の時と同じです。東京音楽大学の学生がイギリスのギルドホール音楽院に短期留学するプログラムがあって、毎年3週間ほど勉強に来てもらっているんですけれども、本当に勤勉で、それでいてフレンドリーなので、すぐにイギリスにもなじんで、毎年鼻が高い思いをしています。

 

■ 学生がコンサートを企画・運営することについて

 

立派だと思いますね。社会に出たら、自分でいろいろな人たちと話をしていかなければならないので、学生のうちに会場の人と話をしたり、実際にどういうタイミングで演奏家をステージに送り出すのか、リハーサルはどのくらいでやるのか、そういうものを体験できるのはいいことだと思います。私自身も、学生たちとのコンサートをとても楽しみにしています。

 

■ 今回は学生と連弾も。連弾の魅力とは

 

連弾は実はとても好きで、ピアノにとっては究極の室内楽だと思っているんです。一緒に演奏するからこそわかるお互いの音楽性というのがあるので、ピアノ同士が合わせるというのは実はすごく勉強になると思っています。イギリスでは毎年、二台ピアノおよび連弾のコンサートを企画しています。大学院生を対象にやっているんですけれども、それがとても好評なので、今回は教え子でもある上田晴樹くんとの連弾がとても楽しみです。

 

プログラムに、ドビュッシーとラヴェルとサティが入っていて、この3人は連弾曲を書いています。連弾に必要なピアノは1台なので、すごく手ごろな室内楽の形なんですね。小さい子どもがやるものと思われることが多いんですが、実は非常に駆け引きが大変なので、そういう意味ではペダルの踏み方やタイミングの取り方とかが、思っているよりもずっと難しいんだということを体験してもらいたいと思って。たまたま3人の作曲家が連弾を書いているので、3人の作品を1曲ずつとりあげることができました。

 

▲学生と連弾する小川先生
 

■ 多岐にわたる活躍。原動力は情熱ひとつ

 

普通の演奏活動以外にも、たとえば「ジェイミーのコンサート」*は情熱ひとつでやっているところはありますね。はじめたころは、日本ではいわゆる発達障害などはあまり多くの人に知られていなかっですが、最近はずいぶん知名度が上がって、ジェイミーのコンサート活動も取り上げていただけるようになりました。今年で第18回になるので、本当に長年続いてきたと感じています。

*「ジェイミーのコンサート」は、小川先生が10年以上活動を続けている自閉症児や障害児の母親を支援することを目的に開催しているコンサートです。ホームページはこちら⇒ http://jamiesconcerts.com/

 

■ 音楽を通じたコミュニケーション。ポジティブ思考に

 

器楽の場合、言葉がなくても音楽でなにかとても深いところでコミュニケーションを取ることができると思うんです。例えば「ジェイミーのコンサート」の活動でいうと、日々の厳しい生活のことや辛いことが、音楽を聴いていただくうちにどうしてかわからないけれど飛んで行ってくれるんですよね。音楽を通じたコミュニケーションによって、頭の中のチャンネルが変わってポジティブ思考になってくださる方が多いような気がします。それが私の「ジェイミーのコンサート」の原動力にもなっていて、これはいろいろなコンサートで同じことが言えます。地域活動系の音楽会で特に、そのようなことが際立って感じられます。

 

■ ピアニストを目指す学生たちにアドヴァイス

 

ピアノは非常にレパートリーが広い楽器なので、やはり自分の得意分野を伸ばしていくことを中心に考えるといいと思います。私たち日本人は「苦手な科目を克服しましょう」という風に小さいころから育てられていますよね。もちろん低学年の時にはいろんな曲を勉強していろんな作曲家を勉強して、苦手なテクニックを克服していくことは大切です。しかしだんだん高学年になって、もうすぐ実社会に出ていく、自分が音楽家として独り立ちするんだということを自覚する場面になった時には、自分の苦手なものを克服するよりも、得意なものをどんどん伸ばす方に頭を切り替えることが大切だと思います。

 

たとえばベートーヴェンが得意だったら、ベートーヴェンを伸ばせばよく、ショパンが苦手だったら、ショパンが得意な人に任せて、自分はベートーヴェンを究めていく。バロックが好きだからバロックに集中して、現代音楽は現代音楽が得意な人に弾いてもらうという風に、“分業”するとピアノの場合はいいかなと思います。

 

■ 国際的な視点から学生たちにアドヴァイス

 

西洋音楽なので、西洋に出ていく、外国に出ていくことは大切だと思います。私たち日本人は日本語で育ち日本人と話し、非常に便利なところで生活しています。でも、音楽家の生活というのはけっこう不便なもので、ひとりで荷物をもって飛行機に乗って列車に乗って、ひとりで楽屋に入ってホテルを見つけなければいけない。そういうことを学ぶためには、少し不便な外国に出ていくことは大切だと感じます。

 

それと外国語、特に英語が話せると世界のどこの国に行っても怖くありません。これから日本はどんどんグローバル化が進んで、もっともっと外国の方に来てもらわなければならない、そういう時代になると思うんです。自分が日本から出ていったことがないと、自分が外国人の時の気持ちはなかなか理解できない。だから、自分が外国人になるために外に出ていくのは大切なことだと思います。そうすることによって、人間として音楽家として演奏家として、また演奏家ではなくても社会人として視野が広がるし、活動の幅もずっと広がるんじゃないかと思います。

 

 
 
(広報課)