作曲実技のレッスンでは、すべての指導教員が「学生それぞれの個性の伸長」を最も重要なモットーとしています。学生ひとりひとりの目指すものにどのようにして少しでも近づくことができるかを共に考え、議論し、それが遥かに遠いところにあっても、共有することができたら良いと考えます。作家としての成長は必ずしもコンスタントに進まないことがしばしばあります。でも私たち教員が若い時に同じように悩み苦しんだり、または幸せを感じたり、壁にぶち当たったりしてきた経験を学生にぶつけることで、なんらかの良い助言、または有益な反面教師となる場合もあり、さまざまな創作シーンを学生とともに切り開いていく。それが私たち作曲芸術のすべての基本姿勢と言ってよいと思います。
古典から現代作品に至るまでの室内楽、交響曲、オペラなど多くの作品例を参照しながら、作曲やオーケストレーションのテクニックを実践的に学びます。各楽器の効率的な活用の仕方、良い響きを創り出すための方法論、そしてコンピュータ浄書ソフト使用を含めた楽譜の具体的な書き方など、作曲に必要な基礎知識を幅広く得るための授業です。ただ机上で資料を学ぶだけではなく、実際の音響に触れ、よりリアルな音楽の「現在」へと導くことを目標としています。
吹奏楽の書法を扱う授業です。作曲専攻の学生が卒業後に吹奏楽(多くはアマチュアによって演奏される)と関わる機会は少なくありません。そこでは、プロフェッショナルではなくアマチュアの奏者を想定した作曲法が要求されます。また、音楽的価値観以外の観点も不可欠となります。最終的には吹奏楽のみならず、学生諸氏がそれぞれ「誰のために」「何を」書くのか、という作曲家としての方向を見据えることを目標としています。
現在の音楽にはさまざまな音響テクノロジーは欠かせられないものとなっています。クラシック音楽でも電子音響をとりいれた作品や、楽器の生演奏をリアルタイムで音響加工する作品も多く作曲されていいます。この授業では20世紀なかばから始まった電子音楽の歴史や現在のコンピュータを活用した先端的な音楽作品についての知識を深めるとともに、録音した音素材をコンピュータで編集する音響作品の制作法や、コンピュータ音楽に必要なプログラミング技術を実践的に学んでいきます。