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鈴木啓資さん 国立大学法人奈良教育大学准教授に就任内定 スペシャルインタビューを掲載しました

国立大学法人奈良教育大学准教授に内定

鈴木啓資さん

2021年3月博士(音楽)取得

 
リスト音楽院修士課程首席修了 東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒業 静岡県立藤枝東高等学校卒業

 
― 奈良教育大学准教授に内定おめでとうございます。今の心境を教えてください。
 
ありがとうございます。今回の結果について、とにかく驚いています。この3月に博士後期課程を終えたばかりですし、高校の音楽科でピアノを3年超教えているとはいえ、大学の講師などを経ずして、30歳にしていきなりこのような職に就くというのは、あまりないことなのではないかと思っています。そして、指導教員としてご指導くださった、村上隆先生、ファルカシュ・ガーボル先生、川上昌裕先生、村田千尋先生にあらためて感謝しております。
今回の募集は、専任講師か准教授のどちらかの公募で、個人の業績などによって職位が決まるという内容でした。前段階の職位がある中で、准教授に相応しいと評価していただけたことに大変感謝しています。しかしそれと同時に、ご評価いただいたことに応えてなければならないので、身が引き締まる思いでもあります。
 
― ご自身でどこを評価されたと思いますか?
 
大学の専任教員となると大学運営にもかかわる立場なので、演奏能力に加えて、たとえばどれくらいのコンサートを開催してきたかといった、自ら動き出す企画力や実行、完遂する能力も求められるのだと思います。自分の場合、演奏面では例えば2017年にリスト協会国際ピアノコンクールで優勝したことを挙げられます。企画や実行という面では、大学3年から自主企画のコンサートをはじめ、ピアノ独奏からアンサンブル、オーケストラまで、毎年最低1回は必ず開催するようにしてきました。これらの活動に加えて、研究者としての資質も当然問われます。自分の博士論文は、「ドホナーニのピアノ教育とテクニック-教育作品とピアノ独奏曲をめぐって-」というものですが、教育者としてもすぐれた彼の教育作品をすべて分析し、その教育観と教育作品において重視されたテクニックがピアノ独奏曲全曲において実際にどのように使われたか、という内容のものです。ドホナーニ直系の流れを汲む者として、このような包括的かつ教育面にも踏み込んだ論文を発表できていることをとてもうれしく思います。そもそも私はハンガリー留学中に資料収集や基礎研究などのドホナーニ研究をはじめ、その中で博士後期課程に入学したので、研究しはじめてからもう5年経つことが驚きですが、ドホナーニ直系の流れを汲む者による研究は世界的にも多くないですし、もちろん日本でははじめてのことです。
今回は、どれかひとつの側面ではなく、これまで積み重ねてきた多方面に向けた活動と研究などの実績を総合的に見ていただけたのではないかと感じています。
 
― これからの目標を教えてください。
 
実は高校までは、いずれロボット工学を学びたいと思っていたので、理系のクラスで学んでいました。数学はⅢCまで、そして化学、物理などを中心に徹底的に勉強していた中、高校2年で音楽の道を意識しはじめたのですが、その後、音楽の道を選ぶと決めた際にふたつのことを決心しました。ひとつは、本場のクラシック音楽を学ぶために必ず留学すること。もうひとつは、なにがあっても理系に後戻りせずに必ず音楽の道を突き詰めていくということ。それらが今につながっています。まだまだやりたいことはたくさんありますし、演奏も研究も引き続き自分の中で大切にしていきたいことなので、大学教員という立場は自分に合っているような気がします。これから教員を育成する教育大学において、ピアノ実技を中心に指導にあたることになりますが、私にとって間違いなく新たなステップになるでしょう。そして自分の決心に基づいて、留学や研究など多くの経験をさせていただいてきているので、それらを生かしながら学生たちに還元していきたいと思います。いずれは音楽家は音楽しかできないという一般的なイメージを覆していきたいですね。さまざまな考えがあると思いますが、私は真の音楽家は頭がよくないと務まらないと考えています。
 
― 東京音楽大学の博士後期課程はどんなところですか?
 
自分はリスト音楽院修士課程に留学中に論文を書きたかったのですが、実技に集中してほしいという学校の方針だったので、自主的にドホナーニの研究を行っていました。そんなある時、「演奏も研究ももっと究めたいなら、東京音大の博士後期課程に入ったら?」というご提案を指導教員の村上隆先生にしていただき、帰国後に受験することを決めました。
一般的な博士課程のイメージというと、教員と自分の世界、すなわち個人的な次元に重きが置かれるように思いますが、本学の場合は、「共同研究」と「総合演習」という集団で受けられる授業が大きな特徴です。ひとつのテーマに対して自分の研究分野からアプローチしたり、自分の研究テーマや研究の進行状況をいろいろな分野の先生方、学生たちの前で報告したりするのですが、さまざまな視点から指摘をもらえるので非常に勉強になりますし、新たな気づきも生まれます。また、博士となるためには、実技のみならず知識の面でも、物事を客観的に見る思考回路も必要なのですが、「共同研究」、「総合演習」に加えて、研究と直結する内容の「博士リサイタル」や「学位審査演奏会」があって、さらに論文の個人指導も充実しているので、実技と論文の両方を間違いなく偏りなく学べます。とにかく両方を本気でやりたい人にお勧めです。
博士後期課程では個人の能力、意欲、そして妥協しない覚悟が非常に大切ですし、それらによってその後が決まってくるように思います。博士号を取得することをゴールとするのか、博士号取得をスタートとするのか。私は後者であると考えますが、博士後期課程での学びを生かすも殺すもその人次第です。いずれにせよ学びの環境は整えられていますので、しっかりと力をつけたい方、そして研究者になりたい方はぜひ来ていただきたいと思います。
 
次回もお楽しみください。