2021.11.26
(前編)
― 南カリフォルニアマリンバ国際コンクール第1位受賞、おめでとうございます。どんなコンクールでしたか?
南カリフォルニアで行われた2回目のコンクール(1回目は2019年)なのですが、新型コロナウイルスのため、今年はオンラインでの開催となりました。審査はすべてビデオで行われ、1次は全員2曲をビデオで提出し、2次、3次へと進んでいく。半年くらいかけてビデオを送り続けました。 このコンクール自体はまだ新しくあまり有名ではないのですが、ここで結果を出した後、いろんなプロジェクトをいただき有名になっていく人が多いという印象です。
去年、トロンプ国際コンクールで2位を受賞してからいろんなお仕事をいただいているのですが、“今できるうちにたくさんのことに挑戦したい”という思いも込めてチャレンジしました。
― 樋渡さんはこれで3年連続国際コンクールで優秀な成績を残してきました。これまでの道のりを振り返ってみたいと思います。最初に国際コンクールを受けたのはいつですか?
大学4年(2016年)の時ですね。第14回イタリア打楽器コンクールで第2位をいただいたのがはじまりです。演奏した後の歓声と拍手の嵐を浴び、観客がこんなにも盛り上がるんだと感激し、それから国際コンクールを受け続けています。
打楽器の世界では、ミュンヘン国際コンクールとトロンプ国際コンクール、あとジュネーブ国際コンクールが大きなコンクールとして有名です。ドイツに渡った直後、2018年にトロンプ国際コンクールにはじめてチャレンジしたのですが、その時は、テープ審査で落ちてしまいました。すごく悔しくて、通過した人たちと自分は、一体なにが違うのかを知りたくて、オランダまで見に行ったんです。そこでなんとなく理由がわかりました。それで翌年、ジュネーブ国際コンクールとミュンヘン国際コンクールに予備テープを送りました。ミュンヘン国際コンクールを受けに行き、セミファイナルまで残ったものの、審査員から、「男の子にパンチの面で負けてしまう」とコメントをいただいてしまいました。
翌年のトロンプ国際コンクールに備えて体力を調整するために、ジュネーブ国際コンクールへの出場はキャンセルしました。でも、参加者の演奏を直に聴き、自分となにが違うのかをしっかりとこの目で見て学ぼうと現地に行きました。
― 現地調査でなにを突き止めたのでしょう?
いくつかあります。まず、選曲がとても大事だということ。それからテンポの取り方。拍の取り方や、リズム感の取り方がそもそも違うと感じました。打楽器にとってリズム感は絶対的なものなので、ちょっとの隙間もズレも与えさせない工夫が必要だと感じました。
あと、舞台上での立ち振る舞い方の違い。私はそれまでは、きちんとお辞儀をして美しくしなければと思っていました。でも、「美しく」よりも、舞台に出た瞬間から、「自分がどういう人間なのか」を出さなければ個性が死んでしまうんだということをすごく感じました。舞台に出た瞬間から、自分の時間をどうやって観客へ提供するか。(演奏が)上手なのはみんな一緒なんですよ。そこから先の部分でどこが違うのかが大事。たどり着いたのがお辞儀の仕方、歩き方、お客さまへの感謝の仕方、楽器の前での立ち方、マレットをもつまでの瞬間…。隅から隅まで、音が鳴っていない時の動作も一から見直して、舞台上の立ち振る舞い、所作、動作、すべてを変えました。
― すべてを変えたんですか!?
変えました。自分の強みがどこなのかを知らなければ変えられないので、その研究も。それまでは、演奏のできにだけ集中していましたが、ヨーロッパの舞台に立つようになってからは、より演奏していない間の時間も大切にするようになりました。舞台に登場する一歩目から自分の世界の空気感を作り出し、「今からびっくりするような演奏をします!」という表現をします。(曲にもよりますが) 笑顔で登場して、バーンと最初の一発目ではっとさせるんです(笑)
― なるほど。とてもはっきりしていて気持ちがいいですね!
周りがヨーロッパの人ばかりだと、そうせざるを得ないというか(笑)。衣裳、写真、お化粧、日本人っぽくて可愛すぎるとよく言われました。綺麗にすることも大事ですが、その前に、「ヒワタシノゾミ」ってなに?といろんな人に聞かれて、答えられなかったんですね。派手に自分を見せるのではなく、「ヒワタシノゾミ」として音楽を聴いてもらうためにはどうすればいいのか。そう思った時から変わりましたね。話し方も変わりました。遠回しに言うと伝わらないのでストレートに。そうしないとやっていけないと感じました。
― 結果は、2020年トロンプ国際コンクールで第2位を受賞。後編ではトロンプ国際コンクールのお話をじっくりご紹介したいと思います。続く。
(広報課)