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【在学生インタビューシリーズ】第21回 塚本 禎さん

塚本 禎さん

 

大学院修士課程器楽専攻弦楽器研究領域(ヴァイオリン)2年
東京音楽大学器楽専攻弦楽器 2022年卒業

 
若い音楽家を育成するためのプロジェクト「小澤征爾音楽塾 オペラ・プロジェクト」に3度参加し、学びの機会を積極的に広げているヴァイオリン修士2年の塚本さん。世界で活躍する演奏家の方々から指導を受け、また仲間とオペラを創り上げる経験を通して、演奏をするうえでとても大切なことを学んだそうです。

 
 

― まずは「小澤征爾音楽塾 オペラ・プロジェクト」についてうかがいます。プロジェクトの概要を教えていただけますか。

 

小澤征爾先生が2000年に立ち上げた、オペラを通じて若い音楽家を育成する教育プロジェクトです。毎年、国内外(日本、中国、台湾、韓国)でオーディションが開催されており、そこで選ばれた学生によってオーケストラを結成し、京都のロームシアターを拠点に約1ヶ月間、小澤征爾先生とサイトウ・キネン・オーケストラのメンバーをはじめとするトップ演奏家の方々から指導を受け、世界の歌劇場で活躍する歌手とともにオペラを創り上げていきます。

 


(c)大窪道治/2023 Seiji Ozawa Music Academy
▲ 右からヴァイオリンの豊嶋泰嗣先生、後藤和子先生、フランチェスコ・セネーゼ先生、ホルンの猶井正幸先生、顧問の堀伝先生。いずれの先生もサイトウ・キネン・オーケストラの方々。

 
音楽的な知識や経験について多くを学べる場所ですが、加えて、音楽への向き合い方やひとつの音にかける意識など、演奏するうえでとても大事なことを教えてもらえる場だとも思っています。

 

― 今年のプロジェクトの様子はいかがでしたか?

 

3度目の参加となった今年は、指揮はディエゴ・マテウスさんでプッチーニ「ラ・ボエーム」でした。昨年はコロナ禍での開催だったためオーケストラは全員日本の学生で構成されていましたが、今回は外国人の方も参加ができて非常に勢いのあるオーケストラでしたし、活気のあるリハーサル、そして公演となりました。
カーテンコールには小澤征爾先生も登場され、とてもよい公演になったと思います。

 

(c)大窪道治/2023 Seiji Ozawa Music Academy
▲ 「ラ・ボエーム」本番より、第2幕の様子

 

― 参加する前と後で変化したことはありますか?

 

昨年と今年、コンサートマスター(幕ごとに席順を変えるので一部)を務めましたが、大変だったのは歌手の歌を聴きつつ、指揮も目に入れながら、ほかの楽器の音も頭に入っていないといけないという点です。
特に今年の「ラ・ボエーム」は常時テンポが揺れ動いている作品だったので苦労したのですが、はじめて音楽塾に参加した時に小澤先生が何度も「Listen!!!」と口にされていたのを思い出しました。歌が主役となるオペラで、ただ「聴く」のではなく、“歌手たちのテンポの揺れ方やフレーズ感、言葉の発音やその空気感をもっとよく聴いて”という意味でおっしゃっていたのです。その「Listen」を意識してみると少しだけ解決できた部分がありました。今になってやっと「聴く」ということの本当の意味が少しずつわかってきたような気がしました。
そして、すばらしい環境のもとで同年代の仲間と切磋琢磨した1か月間はとても有意義な期間となりました。

 


(c)大窪道治/2023 Seiji Ozawa Music Academy
▲ 指揮者のディエゴ・マテウス氏と握手

 

― 以前教わったことの本当の意味が今、理解できるようになってきた…大いに成長を実感されたことと思います。世界的な奏者の方からの指導や共演を通して、自身の音楽性が磨かれるすばらしい機会となりましたね。
さて、ここからはご自身についてうかがいます。音楽を習いはじめたのはいつ頃からですか?

 

ヴァイオリンは4歳からはじめ、小学4年の頃から中村静香先生に師事しています。ヴァイオリンをはじめてから、演奏家になりたい、とレッスンに通っていましたが、じつは高校受験のタイミングで一度それは諦めました。高校に入学してからの2年間は部活動のテニスや地元の市民オーケストラに熱中し、ヴァイオリンは趣味として弾いていたのできちんとした練習はほとんどしていませんでした。

 

― いつから音大を目指すように?

 

大学受験を考える時期に、演奏家になりたいという気持ちがどんどん強くなっていきました。頻度は少なくなっていましたが中村先生のレッスンには通っていたので、「やはり音楽を真剣にやりたいです」と先生にお話しして決心し、受験勉強に打ち込みました。そして、中村先生が教えていらっしゃる東京音大を目指しました。

 

― 塚本さんは現在修士2年に在籍されています。これまで受けた授業やレッスンを通して、成長を感じる点はありますか?

 

以前の自分とは変わったなと感じる瞬間があり、それは一度勉強したことがある曲を再び勉強し直す時です。授業やレッスンで先生方から教わったことをいろいろな場面で思い出すことがあり、それを新たなアイデアとして演奏に取り入れてみることがよくあるのですが、その時は少し変わったのかな、と感じます。

 

― レッスンで先生がいつも大切にされていることはなんでしょう?

 

中村静香先生のレッスンに加え、第2副科実技でヴィオラを習っていて、店村眞積先生のレッスンにも通っています。副科のレッスン時にヴァイオリンの曲を聴いていただくこともあり、師匠おふたりには技術的なこともたくさん教えていただきましたが、とにかく音色にこだわって研究、追求しなさいと何度も言われました。いまだに音色を探すことには、とても苦労しています。

 

― 音色の追求。とりわけ弦楽器奏者にとっては永遠のテーマかもしれませんね。大きく印象に残っている授業はありますか?

 

学部1~2年次に選択授業として、合唱の授業を履修しました。合唱の授業内には学外での本番もあります。毎年年末にはプロオーケストラとの第九演奏会があり、合唱で何度か出演したことがあります。入学時には第九の合唱を歌うとは想像もしませんでしたが、いざ勉強してみるといつもとは違った視点から音楽を見ることで、沢山の新しい発見がありました。
専攻とは別の授業でもその分野の先生方から、自らの勉強に繋がるヒントを与えていただけることは、大きな魅力だと感じています。

 

― 最後に東京音大の後輩たちへメッセージをお願いします!

 

大事なのは自分の目標を見失わないことだと思います。目標を達成するというのは簡単ではないですし、中途半端ではおそらく難しいです。うまくいかない時期や困難に直面することもあると思います。しかし、目標に向けて今の自分になにが必要なのかを見極めながら、一歩ずつでも前進していくことが大事なのかなと思っています。
僕自身もまだなにも成し遂げていませんし、これからまだまだ努力をしなくてはいけませんが、大きな目標に向かって一緒にがんばっていきましょう。

 

(c)大窪道治/2023 Seiji Ozawa Music Academy
▲ 小澤征爾音楽塾 オペラ・プロジェクト「ラ・ボエーム」の出演者集合写真。最前列中央に小澤征爾先生。

 
 
 

(広報課)