2022.11.28
2022年5月に日本フィルハーモニー交響楽団に入団した谷﨑大起さんは、オーケストラでの演奏の初体験は大学入学後。「大学で経験できることに無駄なことはない、と卒業した今でも常々思う」と語ります。
― 今の仕事の内容を教えてください。
2022年5月に日本フィルハーモニー交響楽団に入団し、ヴァイオリン奏者として活動しております。日本フィルは東京・横浜・さいたま・相模大野で定期演奏会を開催し、年間公演数は例年150回前後に及びます。充実した指揮者陣に加え、個性的で魅力的なプログラムの演奏会を行なっています。
― 演奏団体に進んだきっかけを教えてください。
僕は音楽高校出身ではなく、ジュニアオケなどにも所属していなかったため、オーケストラでの演奏の初体験は大学入学後でした。多種多様な楽器が集まってリアルタイムでつくり出される音の変化や、同じ楽器セクションでも一人ひとり役割が変わってくることなど、自分には未知の領域だった世界に大きな刺激を受け、同時に強い魅力を感じました。そして、学年が上がるにつれて、自然とオーケストラへの入団が目標となっていきました。運よく在学中からプロオーケストラのエキストラ奏者の仕事をさせていただき、求められる演奏の質や立ち回りを生の現場で吸収できる貴重な経験を得られました。大学院修了後、オーケストラの入団オーディションに挑戦しはじめ、今に至ります。
- 東京音大での学びが今のお仕事でどのようなところで役に立っていると感じますか?
やはり一番は実技レッスンです。フォーム、弓の持ち方など基礎からあらためることができ、「ここはこう弾きなさい」といった直接的な指導ではなく、「そう表現したいなら、こんなアプローチはどうかな?」とアイデアを与えてくれるような”プロセス”を大事にしたレッスンは、自分の成長に必要不可欠だったと思います。そしてなにより、長所を尊重していただきながら苦手部分のケアもしていただけるレッスンは、自分に合っていたと思います。また、オーケストラ・弦楽合奏の授業では、大人数で演奏する時の極意を経験豊富な先生方から学ぶことができました。そこで掴んだ音量や音色のバランス感覚は、今でも自分の演奏の軸になっています。
― 学校生活のなかで特に印象に残っていることはなんですか?
室内楽をたくさん勉強できたのはとても魅力的でした。弦楽四重奏の授業では、お互いの音を聴くこと、作曲家の意図や時代背景にまで及ぶアナリーゼなど、アンサンブルの基礎を学ぶことができました。管楽器やピアノ入りの室内楽レッスンにも積極的に混ぜてもらい、クラリネット五重奏、オーボエ四重奏、トランペット三重奏、ピアノ三重奏などを勉強できたのも大きな経験になりました。その時に一緒に勉強していたメンバーでTrio Quffo(トリオ・クッフォ)を結成し、現在でも活動を行っています。
― ところで、どうして東京音大への進学に決めたのですか?
音大受験を目指していましたが具体的な受験校を最後まで悩んでいた高校3年生の冬、東京音大の冬期受験講習会で後の恩師である大谷康子先生にはじめてレッスンを受けました。そこで、今の問題点を的確に見抜き、具体的な練習方法までアドヴァイスいただけたことに感銘を受け、先生に付きたいと思い東京音大の受験を決めました。
― 東京音大の魅力はなんだと思いますか?
東京音大ならではだと思うのですが、学生が参加できるオーケストラの機会が多いことは魅力のひとつだと思います。“授業オケ”はもちろん、芸祭の“特別オケ”、指揮科の学生主催の“有志オケ”、作曲科の卒業制作のためのオケなど、僕も在学中にたくさんのオーケストラに参加してきました。本番の時期が重なることもあり、多い時は月に6回演奏会なんてこともありました。今の仕事と同じくらい本番をこなしていることになりますね。そのおかげで、在学中にベートーヴェン、ブラームスの全交響曲を演奏できたり、主要なオーケストラ曲のほとんどを経験できたのはとても大きな財産です。また、その機会のたびに違う楽器の学生や先輩後輩など、横と縦のつながりが深まることも魅力だと思います。
― 最後に、後輩たちへメッセージをお願いします!
大学で経験できることに無駄なことはない、と卒業した今でも常々思います。たとえその時はこんなことをやる必要があるのか、と疑問に思うことも、実は知らないところで自分の成長につながっていることが多々あるからです。そして、すべてに全力で取り組むことで、自信へとつながっていくと思います。音楽もそれ以外のことにも、全力で楽しみながらがんばってほしいです。
(広報課)