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【第50回東京音楽大学シンフォニック ウインド アンサンブル特別インタビューシリーズ】第2回 津堅直弘教授

津堅直弘教授に訊く

(特別演奏会(7/10)・定期演奏会(7/11) 指揮)

 

NHK交響楽団でトランペット首席奏者を32年間勤めた津堅直弘先生が本学に招聘されたのは、37歳の時でした。弟子が一人、二人へと増えていき、先生指導のもと、トランペット、金管楽器がけん引役となり、東京音楽大学吹奏楽の演奏技術が年々向上しました。2020年3月で定年を迎えられる津堅先生が、今年第50回目となるシンフォニック ウインド アンサンブル定期演奏会で、外囿祥一郎先生のために作曲したユーフォニアム協奏曲「皇帝」を自ら指揮しました。シャイだと自評する先生ですが、学生たちとの演奏会の話となると目を輝かせていました。楽団員が心をひとつにして、一心不乱にいい演奏会にできたのは、津堅先生をはじめ、本学で長年教鞭を執られてきた先生方の弛まぬ熱心な指導の賜物と言っても過言ではないでしょう。

 
去年の5月頃には、指揮したいと考えていましたが、汐澤先生が指揮されると聞いて、巨匠にお任せして僕は出なくていいかなと思いました。そんな汐澤先生から「お願いしますよ」と直々に言われ、お引き受けしました。指揮したのは、外囿先生のために作曲したユーフォニアム協奏曲「皇帝」です。この曲は、外囿先生のために作った2作目です。初めて彼のために作曲したのは「LEGEND」という曲です。沖縄の自然と戦争をテーマにしたもので、大変評判がよかったので、2作目も作ることに。僕はピアノで曲を作るのですが、2オクターブは簡単に弾けます。遊び心で下から上までトントントンと鍵盤を叩いて、今度また上から下まで戻ってきて。こんな音階は、外囿先生だから吹けるんです。天才だと思いますね。

 
僕は小学校5年でシンバル、中学1年でトランペット、ピアノをはじめたのは高校2年生の時でした。バイエルからツェルニー、ソナタ、ショパンまで駆け足で習得していきました。ピアノに向かえる時間が足りなくて、学校の机に鍵盤を描いて授業中に練習しました。授業はまったく頭に入らなくて音楽のことばかり考えていましたね。国立音楽大学に入学して北村源三先生に習いました。当時は「芸大出身でないと人にあらず」のような風潮があって、コンクールを受けるも1次予選で落ちることが続きました。同じ沖縄出身で当時NHK交響楽団トランペット奏者だった祖堅方正さんが、「なぜこんなすごい奴が落ちるかわからない、私が津堅を世に出してやる」と宣言して、東京ブラスアンサンブルを結成しました。NHK交響楽団に入ってからも、ご自身が2番手に下がって、僕を1番手にしてくれました。祖堅さんがいなかったら今の僕はいなかったと思います。本当にたくさん面倒を見ていただきました、あんな人はいないですよ。僕の恩人です。僕は、学生を指導する時にいつも祖堅さんを思い出して、学生たちに同じようにしてあげたいなと思います。

 
僕はN響で一回失敗したことがあって、ドイツ留学から帰ってきた時に、同じ演目をやることと知って、困ったなとはらはらしました。もう練習しかないと思って、一つひとつの音を吹いて、正の字をつけていきました。100回になった時点でなんとかできたような、200回になった時に、ひとつのものができた、何かが降りてきたと確信しました。それで、すべての部分を200回ずつ練習して、最後にトータルでも200回やりました。ひとつの曲を仕上げるのに3か月かかりましたが、そこからですね、難しいパッセージもどんどんクリアできるようになったのは。練習を積み重ねるというのは本当に大事なことだと思います。

 
東京音楽大学管打楽器専攻の学生は、オーケストラを経験して卒業させる、ということを大切にしています。今度から1年生から全員ステージに乗せた方がいいかなと考えています。小編成のアンサンブルから少しずつ大きい編成のアンサンブルへ、そして最後はオーケストラ。大学時代に積み重ねていくこと、できないことを一つひとつクリアしていくことが重要だと思います。今の学生はやらないといけないことが多いのですが、プロになったらもっと大変です。オーケストラに入るのも維持するのも並大抵の努力ではできません。ひとつずつ解決して完璧にしていく、くじけずにやっていく。この大学でぜひ何かを仕上げてほしいと思います。合奏またはアンサンブルは相手を重んじる共同作業ですから、音楽の世界に入らなくても、そういった力は将来かならず役に立つと思います。
 

■ コラム 恩師・祖堅方正氏の目から見た津堅先生
(ケンツビッチ音楽祭プログラム「特別インタビュー 祖堅方正氏」より抜粋)

 
「彼はね、とてもあがり症なんです。それをね、練習でカバーするんですよ。それはもう、半端ないです。目の前が白くなって何も考えなくても吹けるように練習するっていうんですね。しかも200回。これはすごいことです。(東京ブラスアンサンブルでは)いつも一番はやく来て、椅子並べから全部やる。そんな一番プレイヤーはいないですよ。今の若い人は、そういうところを知ってほしいですね。(中略)彼のすごいのは、いばったりは絶対にしない。音楽の自己主張はするけれど、人を大事にしてとても協調性がある。音楽に対する姿勢がとても真摯で、練習でも本番でも正面から音楽に向かってる。学生の育て方の技術と情熱。自腹でコンクールをやって…そんな人はいないですよ」

 

 

▼ 東京音楽大学シンフォニック ウインド アンサンブル第50回定期演奏会のインタビューシリーズを掲載しています。
それぞれの思いや本学の魅力などを語っていただきました。

 

第1回 汐澤安彦名誉教授/指揮

第2回 津堅直弘教授/指揮・ユーフォニアム協奏曲『皇帝』作曲

第3回 外囿祥一郎教授/ユーフォニアムソロ

第4回 髙松真紀さん(クラリネット4年)/コンサートミストレス

第5回 西翔さん(サクソフォーン4年)/インスペクター
 
(広報課)